Science

2009.11.10

ハダカデバネズミががんにならない理由

Text by kanai

naked_mole_rats.jpg
現在、科学の分野でも詐欺事件がバカみたいに多い。なかでも、がん研究というおいしい分野では、とくに被害が多いようだ。今これを書いている間も、私は、「サメはがんにならない」という言葉が気になっている。藁をもすがりたい人たちに対して、サメの軟骨を原料にしたインチキ薬の無責任な宣伝文句だ。あくまで私の意見だが。
聞くところによると、ハダカデバネズミのがん性腫瘍の発生率がきわめて低いそうだ。これは「ハダカデバネズミは絶対に癌にならない」と誤解される恐れがある。誰がハダカデバネズミのがん性腫瘍の調査をしたのか、調査期間はどれくらいか、この調査にはどれだけ力を入れているのか、誰が何の目的で資金を出しているのか、といった説明が必要だ。それでも、下の一文には興味を惹かれる。

本日発表された全米科学アカデミー会報によれば、ハダカデバネズミの細胞にはp16という遺伝子が発現し、これが細胞を「閉所恐怖症」にすることで、この細胞が密集した場合に増殖を止め、膨張を事前に防ぐことがわかった。p16の効果は顕著であり。研究室において腫瘍を誘発するよう細胞を変異させたところ、一般のマウスの細胞は完全にがん化したのに対し、ハダカデバネズミの細胞の成長にはほとんど変化がなかった。

もちろん、これはあくまでハダカデバネズミの細胞で起きることであり、そのまま人間に応用できるものではない。とは言え、細胞を「閉所恐怖症」にすることで腫瘍を抑制するというメカニズムはシンプルで魅力的だ。全米科学アカデミー会報オリジナルの抜粋はこちら
– Sean Michael Ragan
原文