Electronics

2010.10.01

ARMが注目された1週間

Text by kanai

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今週、ニューヨークタイムズに二度もARMの記事が掲載された(どちらも著者は同じAshlee Vance)。
ARM Chips May Spread Into Everyday Items (ARM のチップが日用品に浸透)…

今日販売されているほとんどすべての携帯電話に使われる低電力のチップを開発しているARMは、次の大きな技術革新が起きたときには、主導的な地位を獲得することになるだろう。この技術革新は、”Internet of Things”(モノのインターネット)と呼ばれ、あらゆる種類の日用品に小さなチップが埋め込まれ、情報処理やウェブとの通信が可能になるというものだ。
ハンドヘルド機器や携帯電話の部品として、ARMは厳しい小電力環境での動作を強いられてきた。インテルが大馬力を追求しているのとは対称的にARMはミリワットを追求している。ARMの小電力チップは、そののんびりとした社風の賜物だと言える。Muller氏は、ケンブリッジのパブに初代従業員たちを集めてARMの将来の構想について語り合ったころを振り返る。そこでは従業員たちに、重役になりたい人は手を挙げろと尋ねたという。
「PCなんて関係ない」とFlautner氏は語る。「なくたってぜんぜん構わない。今重要なのは、この得体の知れない市場に深く食い込むことだよ」

“You Too Can Join the Internet Of Things”(誰でも「モノのインターネット」に参加できる)…

それは彼らの研究の努力結晶であるmbedという名のマイクロコントローラ…ひとつのチップに収まった簡単な小電力のコンピューター…だ。エンジニアだろうがホビイストだろうが59ドル前後で購入できる。ARMは、このマイクロコントローラに命を吹き込むソフトウェアツールのセットも提供している。これを使えば、加速度センサー、ジャイロスコープ、カメラ、ディスプレイ、温度計など外部機器をつなげることもできる。
mbedの開発リーダーであるARMの技術者、Simon Fordは、彼が開発したハードウェアとソフトウェアのパッケージによって、チップのプログラミングという頭痛の種が取り除かれ、マイクロコントローラの世界がより多くの人に開放されると語る。
mbedは、直接、コンピューターのUSBポートに接続できる。PCから見ればUSBメモリーのようなものだ。あとはプログラムを書くか、mbedのウェブサイトにあるモジュールをダウンロードすれば、ものの数分で動き出す。

Wiredに掲載された記事の続き “Will the Internet of Things Be Open or Closed?“(モノのインターネットはオープンになるかクローズになるか?):

近い将来、より多くの日用品に小さなチップが埋め込まれ、ネットワークと通信できるようになる。しかし、現在、ネットワークの中立性や、オープンなウェブかクローズなクライアントアプリケーションかといった論議がされているように、モノのインターネットでも、誰が支配権を握るのかをはっきりさせなければならない。
…無料のオープンソースか、箱から出して誰にでもすぐに使える製品か。これまで私たちは幾度となくこの道を歩いてきた。この問題では、明確な勝者も敗者もないだろう。それよりも、今、重要なのは、どれかひとつの方式がデフォルトのオプションとして固定されてしまわないうちに、明確な骨組みや構造を作っておくことだ。

…そんなわけで、Adafruitでは熱い議論が交わされている

mbedにはオンラインコンパイラが必要で、永遠に彼らに依存しなければならない。彼らのサイトを使わなければ、永遠に何もできないわけだ。mbedがこの方針を変更して、オープンソースハードウェアを出してくれることを切に願う(Arduinoシールドは好きみたいなんだから、このコミュニティに参加すればいいのに)。
mbedの中のハードウェアは好きだ。cortexシリーズは素晴らしい(だからウチではARM Cortex M3を扱っている)。でも、mbedに使うARMコンパイラは5000ドルもするから、おそらく永遠にオンラインでしか使えないだろう。その点、私たちが扱っているARMの開発ボードはオープンソースハードウェアだし、ファームウェアのライブラリーはすべてBSDライセンスされているからいい。OSSツールチェーンなどもコンパイルしたプログラムをドラッグ・アンド・ドロップするだけで使える。今は、lpc1768版も販売しようかと考えているところだ(ご要望があれば!)。

– Phillip Torrone
原文