Crafts

2012.05.15

BotSpot ─ オープンソースのアートロボット

Text by kanai


アートとロボット工学を合体させてオープンソースにしたら何ができる? 技術畑出身の2人のアーティスト、Carter StokumとWayne Campbellは、ずっとその答を探っている。これに情熱を燃やす2人は、現在、Kickstarterキャンペーンで、その答を探るコミュニティ作りのための資金集めを行っている。
2人の出会ったのは、先生と生徒の関係としてだった。TechShopの講師をしていたCarterのもとで、Wayneはいくつもの授業を受けている。やがて2人の付き合いは友人関係に発展し、友だちになってから、共通の興味を持っていることに気がついた。それはロボット工学だ。もともとCarterの得意分野で、それをWayneの得意分野である建築に活かせないかという話で盛り上がった。
建設中の建物の三次元スキャンをロボットにやらせるというアイデアに始まって、次から次へとアイデアが飛び出し、紆余曲折の後、駐車場の線を引かせるロボットのアイデアが生まれた。彼らのアイデアの多くは、すでに日本のロボットが10年以上前に実現してしまっていたが、アメリカには入ってきていなかった。もしかしたら、彼らの挑戦がこのギャップを埋めることになるかもしれないと思ったのだが、行動に移そうとしたとき、突然ひらめいた。建築現場で線を引くロボットができれば、世界をキャンバスにして絵を描かせることだってできるはずだ。
これに気づいた2人は束縛から解放された。もしロボットが、公共の土地に巨大な肖像画を描くことができたらどうだろう。Googleの航空写真から見える巨大な日付を毎日ロボットに描かせてみたらどうだろう。巨大な迷路を描かせたら、どんなに楽しいだろう。だが、あることに気がついた。誰でも考えそうなアイデアだ。まともすぎる。正確に複製を描くぐらいでは、芸術的とは呼べない。

このとき彼らが考えていたのは、ベクター図形を描くことだった。数学的な定義によって描かれる線画で、どんなに縮尺を変えても、正確な相似形が作れるというものだ。しかし、これでは変化が乏しい。ランダムさもない。やっぱり、ビットマップのほうが芸術的な表現に向いている。そして彼らは、アートロボットの可能性をさらに押し広げることにした。
ベクターとラスターの両方の形式のグラフィックを組み合わせて、Twitterのツイートに応じたランダムさを加味することができたらどうだろう。光や気温や湿度といった環境要素に応じてロボットの出力が変化したらどうだろう。ロボットの通り道にランダムな変化を加えて、定期的に線を描き替えていったらどうだろう。

こうした芸術的な思考によって、計画は非常にエキサイティングなものへと変貌していった。コードをオープンにすれば、みんなで改良ができる。ロボットの芸術的表現の方法は無数に作られる。しかもそのほとんどが、WayneとCarterには想像もつかなかったものだ。そして、オープンソフトウェアによって起きるであろう素晴らしいことを考えるうちに、自然にオープンハードウェアも考えるようになった。
彼らはペンキのスプレー缶とチョークを使って描くことを考えてたが、氷の上に描けないかとCarterに持ちかけた人がいた。また、フロスティングを加えたいと言われたこともあった。さらに、フエルトペンで描いてはどうだという人もいた。これらを実現するには、ハードウェアの大幅な改造が必要になる。ハードウェアをオープンにすれば、画材の変更に留まらず、あらゆる角度から新しいものが付け加えらえるようになるはずだ。これは面白くなるぞ!
こうして、彼らの野望が明確な形として見えてきた。世界をキャンバスにして、創造的表現にロボットを使うというものだ。これをどう実現するか。鍵はソフトとハードをオープンにすることだ。そうすればコミュニティが可能性を広げてくれる。しかし、そんなコミュニティはまだどこにもない。このアイデアの潜在的パワーを高めようとするなら、まずコミュニティ作りから始めなければならない。そのためのウェブサイトを立ち上げる資金集めとして、彼らはKickstarterを利用することにした。

2人は、技術とアートのギャップを、世界に絵を描くロボットで埋めることに情熱を傾けている。サイトを立ち上げる資金はうまく集まるだろうか。彼らはそう信じている。しかし、万一集まらなかったとしても、彼らの情熱がしぼんでしまうわけではない。CarterとWayneは、ここまで長い道のりを歩んできたのだ。私たちは、近い将来、彼らの成功の形を見ることになると私は期待している。
– TravisGood
原文