Electronics

2012.05.30

テスラガン

Text by kanai

ある晩、オールドレイニアブルワリービルにあるUnit 15でRob Flickengerに会った。カンテナ小さな25セント玉アフリカに国連用のワイヤレスネットワークを構築、ワイヤレスネットワークで(文字通り)本を書くなど、彼のプロジェクトにはいつだって驚かされるが、最新のプロジェクトで、彼はさらにマッドサイエンティストな方向へ踏み出した。テスラガンだ。

ご注意:これは大変に危険な実験です。オペレーターはこの装置について熟知して扱ってします。テスラコイルなどの高電圧装置は心臓を停止させる危険性があります。ケースは確実にアースして、電流が人体を通過しないようにしなければなりません。私は十分に説明を聞き、危険度を計算し、その上で、私からこのプロジェクトを紹介します。では、どうぞ。
このプロジェクトを始めた理由は何かと尋ねると、彼は、テスラとトゥエインがエジソンとマルコーニの悪の軍団に対決するという劇画、Five Fists of Science (Steven Sanders、Matt Fraction)のことを教えてくれた。「若きテスラがテスラガンで悪と戦うなんて、最高だと思わないか?」
Robの頭脳には疑う余地はないが、そんな彼でも、これを実際に作るとなると学ぶべきことが山ほどあった。この手のものをプラスティックとダクトテープで簡単に作ろうとすれば、命も落としかねない。本物のテスラガンを作りたければ、たくさんの部品を自分で作る必要がある。だが、ラッキーなことにRobはシアトルに住んでいた。ハッカーのグループやMakerスペースがたくさんあって、才能溢れる大勢の人たちがクレイジーなことをやっている街だ。彼はいろいろな人に話を聞いて歩いた。アルミケースの作り方、3Dプリント、磁器粘土の使い方、機械工学など、どれも未体験のことだった。高圧電気に関しては、さらに詳しい勉強をした。その結果生まれたのが、(しっかりと確実にアースをとっていれば) 手に持って撃てる火花間隔式のテスラガンだ。10万ボルト前後の電圧で約1メートル先の DAGGAR(注)に向けて放電する。

どこでどのように作られたか

ケースは高電圧に耐えるアルミで作る必要があった。しかも格好良くなければならない。RobはHazard FactoryのRustyを訪ね相談したところ、ナーフガンから砂の鋳型を作って鋳造することとなった。
出来上がったケースはHackerbotのフライス盤できれいに磨いて仕上げた。ついで、頑丈で高電圧に耐えられる高密度ポリエチレンで一次側コイル用の支持部品も削り出した。さらに、特別なスイッチも必要だった。
「まともな企業なら、こんなものを一般消費者向けに作ろうなんて絶対に思わないよ」
Metrix Create:Spaceで型を3Dプリントして、磁器用の土を流し込み、窯で焼いた。このオリジナルの磁器とタングステンから作られたスイッチは、2万ボルト、数百アンペアに耐える。
ほとんどの作業はRobの住まいでもあるプライベートなハッカースペース、Unit 15で行われた。ここで彼はHockey Puck of Doom(HPoD)を作った。HPoDとは、Instructablesで紹介されているゼロ電圧検出フライバックドライバで、ドリル用の18ボルトのバッテリを2万ボルトに昇圧するというもの(同様の効果が得られるコイルよりもコンパクトなのでこれを採用した)。彼は#30の銅線を1100回手で巻いてコイルを作り、よりマッドサイエンティストな雰囲気を出すためにレーザーで手の込んだ模様を刻み込んだ。私が個人的に気に入ったのは、古いテレビから取り出したトランスだ。私が考えつく限りにおいて、昔のテレビの部品の再利用法として、これは最高だ。
最後に、彼はAda’s Technical BooksJigsaw Renaissanceでこれを発表した。Ada’s Technical Booksでのトークは、ここで見られる。

「テスラコイルは、科学と魔法の交差点にあるものです。この100年前のテクノロジーで作られた装置から二次電極へ光を発しながら放電するときの感覚は、言葉では言い表せません。部屋の中に雷の臭いがたちこめます」

最後に彼は私に、感電したときの面白い話をしてくれた。ある夜、Hackerbotで同じ時間に3台のテスラコイルを起動させたとき、彼は自分の装置のスイッチを切ったのだが、電気が通っていないにも関わらず、それは自己共振を起こして二次電極に放電をし続けたという。残りの2台と同期しているように見えた。放出されている電流は小さいはずだから、自分の指へも放電できるのではないかと考えた。ビックリしたことには、1メートル20センチものスパークが飛んだのだ。他の2台のうちの2台からも、別の角度からスパークが飛んだ。
「ものすごかったよ。だけど、これはお勧めできないすごさだ。高圧電気に関するプロジェクトは、しっかりと管理されたものでないとね」
彼のブログ、Hacker Friendlyに詳しい話が出ています。テスラガンは、Seattle Mini Maker Faireに出展される予定です。
注:DAGGARは、シアトルの高電圧プロジェクトのシンボル的存在。装飾用の安物の短剣で、スパークを受け止めるためだけのもの。
写真は私と Rob Flickenger が撮影した。
– Willow Brugh
原文