Crafts

2012.07.04

ベスト・オブ・Maker Faire Bay Area分野別あれこれ:自転車、ロボット、アウトドア、アート

Text by kanai

Maker Faire Bay Area 2012
Maker Faire Bay Area 2012からもう1カ月も経つなんて、ぜんぜん実感がわかない。インスピレーションが竜巻のように吹き抜けた地球で最高の発表会だ。信じられないほどクリエイティブなアイデアやプロジェクトや、物作りを支持する大勢の素晴らしい人々との出会いは、今でも目眩を覚えるほど強烈だった。そこで取り戻した人間性を大切に、9月に開かれるMaker Faire New Yorkを楽しみにしよう。
今回のMaker Faireには700人を越えるMakerが出展した。そのすべてを紹介するのは不可能なので、今年は、編集スタッフが各自ひとつだけ気に入った分野のものを紹介することにする。まずはパート1。8人のうち4人の編集者がベストと思ったものを選んだ。パート2は来週お届けする。紹介する分野はArduinoとマイクロコントローラ、Young Maker、3Dプリンタ、クラフトだ。

Nick Normal:自転車とペダル式乗り物編

FBUC
Fun Bike Unicorn Club
総合優勝はFBUC(エフバックと読む)だ。Maker Faire開催中はずっと子供たちに大受けだったが、とくにEducation Dayでの人気がすごかった。Todd Barricklowの司会も素晴らしく、来場者の間に入っては魔法を見せて歩いた。Maker Faire開催中、私はDeath Defyingトラックに一度立ち寄っただけだが、GIFアニメーション(上の画像)をどうしても作りたかった。FBUCは一般客もレースに体験できるようにしていたところがエライ。

“Blackbird”スーパークルーザー
乗り物に絞った紹介記事を作るうえで、ひとつ勉強になったことがある。乗り物が少ない! だけど、ひとつの場所でずーっと待っていると、いつか目の前を通り過ぎる。こうして私は、CatのBlackbirdスーパークルーザーと出会うことができたのだ。彼が目の前をクルーズしていったとき、私はゾーン6のブース(写真の背景)に陣取っていた。私は、彼が近所を走り回っている間に捕まえて、10分間ほどあれこれ聞きまくった。写真を撮ろうとしたのだが、明るすぎてカメラの液晶画面が見えなかった。なので、バイクはきれいに写っていたが、彼の顔が大きなミラーの影になってしまった。Faireに来るまで、彼は私のブログ記事を読んでいなかったそうだが、これから読むと言ってくれた。これは彼の通勤と地域に適合したユニークなプロジェクトだ。しかも、この乗り物すべてが道路交通法に適合しているのだから素晴らしい。

Rock the Bikeのペダル式ステージ
Rock the Bikeの紹介は不要だろう。他の人はどうか知らないが、小学5年生が歌うニルヴァーナは最高だった。ペダルを漕いでアンプを鳴らすプロジェクトは、今ではMakerマインドを大切にするイベントではスタンダードになっているけど、そのアプローチの方法はみなそれぞれユニークで、じつに楽しい。このプロジェクトは3年間連続出展だけど、毎回変化して、拡張して、進化している。

Gareth Branwyn:ロボット編


Microsoft Robotics
Microsoft RoboticsはMake: Live フィッシュボールの真向かいに陣取っていたので、Kinectを搭載したディスクプラットフォームベースのロボットが大勢の人たちと関わり合う様子をたくさん見ることができた。なかでも印象的だったのが、Greg Shirakyan製作のRoborazziだった。これは、KinectとRobotics Development Studio 4に組み込まれたスケルタルトラッキングソフトウェアで人を探して歩き撮影するカメラロボットだ。こいつに追いかけ回されて、困ったり、怒ったり、怖がったりする人の様子がおもしろかった。上の写真は、それが2人のHALO Master Chiefを撮影しようとしたときのものだ。使っているプラットフォームはMS Roboticsもハードウェア開発に使っているParallax のキットだ。

Claire de Launay, Robotics Valley/SRI
私は ClaireにIOIO(ヨーヨーと読む) のブースで出会った。IOIOは、Androidをセンサやアクチュエータとつなげる小さなインターフェースボードだ。Maker Shedでも販売している。Maker Pressから本も出ている。スタンフォードのClaireは、卓上テレプレゼンス装置を開発した。スマートホンを載せると遠隔操作で向きや角度が変えられて、会議や集会に遠隔地から参加できるというもので、今準備中の本 『Make: Robots』 で紹介したいと考えていた私の夢のアイデアそのものだ。上の写真は彼女が作ったテレプレゼンス装置のベース。低解像度の3Dプリンタで作ったというから驚きだ。手で紙ヤスリをかけて滑らかに仕上げたのだそうだ。なんと、アイデアを思いついて、その日のうちにこのプロトタイプを仕上げたという。それは彼女の自慢でもある。すごいね。

Dangerous Prototypes
彼らと少し話をしていたら、彼らのことが大好きになってしまった。彼らはウェブサイトで、毎月、素晴らしいオープンソースプロジェクトを発表している。私は、彼らとブースをシェアしていたSkot9000をMake: Liveスタジオに連れ込んで、彼のDigitGrid プロジェクトを紹介した。

Keith Hammond:アウトドア編


一輪自動バランス電動スケートボード – Kyle Doerksen
クールなDIY作品だ。彼は起業を目指している。なんと言っても形がすごい。ボードの中央に大きなタイヤがひとつだけあるのだ。

Kinetic Steam Works(足こぎボート) – Wilhelmina
彼らの作品はいつでも取材に値する。実際に乗れる蒸気船型のボートだ。

Lit Motors – ジャイロ式自動バランスバイク
CEOのDanny KimはFaireでスピーチを行った。私はCTOのKevin Bretneyと”Chief Radness Officer”(最高過激責任者)Ryan Jamesに会って話を聞いた。実際に走るプロトタイプ(ジャイロはどちらも機能しているが)とゴージャスなボディーワークのコンセプトバイクが出展された。

Goli Mohammadi:アート編

Jeremy Mayer
Applied Kinetic Arts
私はMaker FaireでPuts Up(プッツアップ)と呼ばれる展示物の大ファンだ。今回で6度目の出展となる。方向性の異なるアーティストたちが協力して、互いに知恵を出し合って作るところが素晴らしい。Nemo GouldJeremy Mayer(上の写真のタイプライターの部品だけで作った胸像、Bust Vの作者)には、Make本誌で取材を申し込んで、しばらく経ってからようやく会うことができた。Nemoが自分の作品を展示しなかったのは今回が初めてだ。純粋にお客さんとしてMaker Faireを楽しみたかったからだそうだ。
Shawn Thorsson
Shawn Thorssonのコスチューム
Shawnのアホみたいにクールで巨大なコスチュームにはいつも驚かされる。上の写真は、Warhammer 40K Space Marineコスチュームを身につけたクルーのひとり。MAKEブースを警護している。Shawnは来場者の対応で忙しかったので、私は彼のお姉さんから面白い話を聞くことができた。彼はペタルマ(MAKEのご近所だ)を拠点に活動し、素晴らしい工房を持っているという(当然だろう)。創造的な家で育ったそうだ。彼ら兄弟は伯母の衣装店に入り浸っていたそうだ。ベリーダンサーだった母親は、自分の衣装をすべて自分で作っていた。Makerの生い立ちを聞くのは楽しい。Shawnとは、いずれ工房を取材に行くと約束した(お楽しみに)。
Gon KiRin
Gon KiRin – Ryan C. DoyleとTeddy Lo
全長18メートル、全高7メートル、幅3.6メートルで、轟音をあげて炎を噴き出して、中に乗れるようになっているドラゴンをスゴイと思わない人はないだろう。私はビデオで見て知っていたが、実物を見るのはまた別の話だ。棘のある尻尾をエレガントに揺らす姿や、鼻から炎の塊を吐き出す様子には私は凍り付いた。こうしたものを夢に見ることはあるが、実際に作られたものを見るると、ものすごい刺激を受ける。これはまさに夢の素だ。
– Goli Mohammadi
原文