Electronics

2012.07.27

Amp Campの1日

Text by kanai

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数週間前、MAKEのカメラマン、Gregory Hayesと、デザイナーのMichael Silvaと、O’Reillyのウェブプロデューサー、Tony Quartaroloと私は、Amp Campに参加するチャンスを得た。開催場所は、カリフォルニア州セバストポルのO’Reillyのオフィスからちょっと先のところだ。で、Amp Campとはなんだって? よくぞ聞いてくれました。今から数年前、Dana BrockがSpeaker Campというものを開いた。20人ほどの友達が彼の工房に集まって、スピーカーのエンクロージャを作って1日を過ごすというものだ。これが大成功したものだから、彼とNelson Pass はまたやろうと話し合い、日程を決め、このブドウの国のど真ん中で、今度はアンプを作るキャンプを開催することにしたのだ。
Nelsonはキャンプの詳細をここで説明している。

アンプの製作は、一般的にスピーカー製作よりも上の中級クラスの工作だ。使う部品点数も多く、それらの部品の働きも別世界のものに見えるだろう。配線もより複雑になる。
設計を考えるとき、「チップアンプ」が最良かどうかに悩んだ。それなら市販されているICを中心に回路を組むことができる。もっとも複雑な部分はあらかじめチップの中の見えないところに出来上がっていて、これなら簡単に作れそうだが、独立したトランジスタを使って組み立てるという「基礎」の部分が抜け落ちてしまう。このプロジェクトをDIYの難しさの範囲のどこに置くか。難易度範囲の片方の端は、砂からトランジスタを作るところから始めること。反対側の端はBoseのオーディオシステムを店で買ってくることだ。このプロジェクトは、やや前者よりだ。
というか、普通の電子パーツを使って回路を組むのが難しいなんて、誰が言った? チップアンプよりもちょっとだけ手間が増える程度で、ナイスなアンプが作れる。そのちょっとの手間から、より多くを学べて、出来上がったときの満足度はより高い。
そこで、Amp Campのアンプ第一号は標準的な電子パーツを使った回路になった。コストはチップアンプとそう変わらず、組み立て時間もほぼ同じだ。大きさもチップアンプと同じぐらいにコンパクトだが、フィードバックを最小点に抑えたシングルエンドのA級動作アンプとしての音はなかなかのものだし、ハイエンドのオーディオマニアも一目置く代物だ。
これを行うにあたっては、アンプの電源回路に関する安全性を真剣に考えなければいけない。このプロジェクトの参加者のほとんどが、コンセントからの交流電源をアンプに使用するための安全な接続方法を知らないはずだ。
この問題は、ポータブルコンピュータ用として普通に市販されているスイッチング電源アダプターを使うことで解決した。こうした目的のために、文字通り山ほど格安の製品が出回っている。直流19ボルトのアダプターなら、ひとつでアンプ2台ぐらいは動かせるし、電源も壁のコンセントから付属のコードで安全に引っ張ってこられる。感電対策もショート対策もなされている。19ボルトなら人体に及ぼす危害もずっと小さい。
え? オーディオマニア仕様のコンポがACアダプターだって? 気にしない。これでうまくいくんだから。

とにかく、これでうまくいく。当日の雰囲気をわかってもらうために、下の写真のいくつかにコメントを付けた。要は、みんなすごく楽しんでくれたということだ。キャンプにはいろいろな経歴の人たちが集まってくれた。ハンダ付けは初めてという人も多かった。しかし、この日の終わりには、電子工作入門の定番であるLEDの点滅をしのぐ、誰もがその音の良さに振り返る完全なA級アンプを作ることができた。ハイエンド・オーディオ界のゴッドファーザーがこの日のためにやってきて、みんなに線のむき方やら抵抗の脚の曲げ方やら、それらを燃やさない方法などを教えてくれたことは最高だった。会場を提供してくれたBrock一家はとてもフレンドリーで、大勢の人を家の中に招き入れて食事をご馳走してくれるなど、本当に素晴らしい電子工作の1日だった。
というわけで、DanaとNelsonへ:私はSpeaker Campに出られなかったんだけど、ラウンド2をお願いできる?
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工作を始める前にお手本のアンプを調べる参加者たち
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400メートルほどの土の道路の終点に、素朴でのんびりしたAmp Camp会場がある。工房と、ボートとジプシーの馬車を合体させたようなものの間に作業台があり、立派な月桂樹の木にパラシュートをかけて日よけにしていた。
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基板に部品をはめこむ父と娘
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ハンダ付けの前に、基板に部品を差し込んで、目で見てよく確かめるようにと、インストラクターは我々ひとりひとりに言ってまわった。それから一気にハンダ付けだ。
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MichaelはMAKEのシニアデザイナーだ。魔法のマウスを操っていないときは、ハンダごての神となっている。
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参加者はみな2台のアンプを作った。ステレオの右チャンネル用と左チャンネル用だ。アンプを2台作るというのは、オーディオの初心者には奇妙に聞こえるかも知れないが、ハイエンドのオーディオの世界ではごく普通のことだ。通常、ステレオアンプは左右のチャンネル用の2つのアンプがひとつのケースに収められている。モノブロックは、それを個別の(モノ)アンプとして分けたもの。こうすると、チャンネル間のクロストークを少なくすることができる。同じモノアンプを2つ使うことのもうひとつの利点は、電源の高効率化にある。大量の電気を投入するというわけではなく、低音域のノイズをなくすことができる。パワーアンプにとって電源は非常に大切な要素だ。電源こそがスピーカーをドライブするものだからだ。容量が2倍になれば、同じレベルでずっと長く、つまりより大きなパワーを供給できるようになる。
─Jake Spurlock
原文