Fabrication

2012.10.05

Bre Pettis講演 -「オープンソース消費家電の挑戦」OHSにて

Text by kanai


これは、去る木曜日に、ニューヨークのOpen Hardware SummitにてMakerBotのCEO、Bre Pettis(ブリー・ペティス)が行った講演を書き写したもの。 公式に録画されたセッション3のビデオストリームを元にしている。すべての内容はここで見ることができる。Breが登場するのは1:20:41ごろ。

いやあ、大変な1週間だったよ。

(笑い)

私はMakerbotのBreです。先週、このマシンを発表したことで、ちょっとした騒ぎになりました。

MakerBotの設立当初からの目標は、すべての人に3Dプリンターをというものでした。誰にでも使えて、クリエイティブな人たちが作りたいものを自由に作れるようにすることです。

オープンハードウェアに関わったことのある人ならみんな、またはMakerBotで働いたことのある人、またはMakerBotに貢献された方は、このマシンをオープンハードウェアの勝者だと思うでしょう。私たちの最初の使命は、すべての人の机の上に3Dプリンターを置くことでした。私たちはそれを、オープンに、文字通り、オープンな気持ちで、実現させようとしてきました。それは、みんなと分かち合いたいという欲求から出たものです。

ひとつハッキリさせておきましょう。このマシンは100%オープンではありません。しかし私たちはソフトウェアを発表しました。まったく独自に開発をしているものです。このMakerBot Slicing Engineは、恐らくこれまでに作られたスライシングエンジンのなかでも最高のものです。数時間かかっていた処理を、ほんの数秒でやってのけます。これは完全にオープンです。

私たちは、 MakerBotファームウェアとMakerBotドライバーをオープンにしました。このソフトウェアだけでも、百万ドルもの人件費をかけて開発されています。

ハードウェアの側では、Replicator 2にもReplicator 1と同じMightyBoardを採用しています。多少の改変はしてありますが、機能的はまったく同じです。エクストルーダーもまったく同じエクストルーダーです。「なぜ公表するのか」と聞かれるけど、同じものだから。

私たちはこれらのものを世に送り出すことができて誇りに思っています。私たちはプロトタイプから出発しました。最初はほんとうにラフなものでした。文字通り試作品を作り、「やったー、動いた、出荷しよう」みたいな感じでした。

そして、ご案内のとおり、私たちはある程度進歩しました。より使いやすく、より幅広い人々に使ってもらえるマシンにしようと、進化を続けてきました。最初に私たちの製品を買ってくれた人の半数はプログラマーでした。マシンがそういう性格のものであったのでしょう。その背景にはMakerの倫理もありました。そして、最初のReplicatorであるReplicator 1を発売したときは、「え、もう自分で組み立てなくていいの?」といった人々の反応でした。

「それにはいろいろな理由があるんだ」と私たちは答えていました。完成品で販売することで、組み立てのための8から9時間のカスタマーサポートを削減できるからです。しかし、キット販売をなくしたことで、怒るお客さんも大勢いました。「どつぼにはまることもなく、もっと楽にいろいろなものが作れるようになる」というのが私たちの主張だったので、残念に思いました。売り上げは天井を突き破る勢いで、このとき私たちは初めて、コミュニティの中心が少しだけ動いたように感じました。より大きなコミュニティが開けたのです。

私たちの製品には派生商品がたくさんあります。たとえば、 W.J. Steeleという男性が作っている UltraBotという製品は私たちも大好きです。彼はKickstarterでキャンペーン中です。これはCupcakeの派生品です。彼はCupcakeが大好きで、それを改良しているうちに新しいマシンができあがり、Kickstarterで資金集めを開始しました。とても結構なことだと私たちは思っています。

これはアリババで販売されているMakerBotです。オリジナルのReplicatorが約半額です。これには大変に多くの批判を受けました。オープンソースハードウェアにしたことで、こういうことが合法的に行えるようになった。何を考えているのだと。たしかに、そのとおりです。これが私たちのやってきたことの結果です。だからと言って、私たちはこれを快く思っているわけではありません。

私たちはいくつか方向転換をしました。それを不満に思う人もいます。Replicator 2の筐体の設計は公開しません。これにはパウダーコートした鉄材が使われており、これはオープンソースのスチールベンダーなどを持たない限り加工できません。家庭では作れない構造だからです。業務用の加工設備がなければ、これを作ることはできません。

また、MakerBot MakerWareのGUIも公開しません。これはひとえに、その「ルックアンドフィール」とユーザーの使い勝手を握っていたいからです。これらのものは、単純なクローン、つまり単なる模造品を作ろうとする人たちにとって、非常に重要な部分になります。それは許すわけにはいきません。それでもハックは可能です。改造は許されます。

これにはたくさんの批判がありました。私は個人的に長時間、インターネットで見続けてきたので、罵倒の言葉や無礼な態度にも慣れました。しかしそれは、ほんの悪い一面に過ぎません。コミュニティからのひとつのチャレンジに過ぎません。トロールが現れて、彼らが注目を集めて、100%オープンソースじゃないから死ね! みたいな。ほんとに大変な1週間でした。

他の企業も、個人も、このプロジェクトに注目している人々も、このコミュニティの醜い部分をたくさん見ました。これは、よりオープンにしようという気持ちを削ぐものです。大切なのは、いかにしてプロジェクトをビジネスに成長させるかを語り合うことです。そして、ビジネスを、いかにして大きく成功させるかを話し合うことです。夜や週末に行っていたオープンソースのプロジェクトを、本業へと発展させることです。

(拍手)

ありがとう。

最後になりますが、これをちょっと見てください。この週末に、MakerBotブログに寄せられたコメントに対する答をいろいろな方向からまとめてみました。詳しく知りたい方は、ブログを見てください。

ここでは、私がわくわくした事柄について話します。中国などでの人件費が上昇しています。過去3年間、給与は3倍になりました。これは、ある面、他の土地に製造のチャンスが回ってきたことを意味します。さらには、製造業者が作るという形も変わるチャンスがあります。今、私たちにはツールがあります。これを使えば、自分のうちに、自宅のガレージに製造所を取り戻すことができるのです。アイデアを実物にして、いざ製品を作るとなると、1万や10万単位で作らなければならないという考えに、今まではとらわれてきました。しかし、今私たちには、3Dプリンターなどのツールを使って、みんなで協力して作ることができます。世界の驚くべき創造性や革新性を強力に後押しできる力があるのです。世界は変化しています。みなさんもその匂いを感じているはずです。この部屋にも、その匂いがぷんぷんしています。

いい匂いです。

これのクールな点は、より多くの人々が……、ここからではよく見えないんだけど、この中に、本業として、オープンソースのインフラ作りをしている人は手を上げてもらえますか? よかったら手を叩いてください。

(拍手)

この質問に対して全員が手を上げられるようになるために、何をすべきか。全員がこの偉大な善行に貢献できるようになるにはどうしたらいいか。

大きな「次に起こること」のための力がここにあります。人は人から刺激を受けます。この部屋にいる人たちが互いに刺激を与え合うことで、「次に起こること」が起きるのです。その行動がそれを起こすのです。

どんな事件でもそうですが、先週は多くの人がステップアップしました。私たちにフィードバックや批判や建設的な意見や支持をくれました。たくさんの人たちが、私にこう言ってくれました。私も会社を経営しています。あなたの立場はよくわかります。本当に大変です。あなたを支持しますと。建設的な批判をしてくれた人たちも、MakerBot のすべての人たちも、みなさんの支持に感謝します。

こんなところです。どうもありがとう。

(拍手)

– Sean Ragan
訳者から:Breらしからぬぴりっとしないスピーチで、文章もしどろもどろでわかりづらい点もあるけど、なぜオープンにしなかったかの理由がわかったし、MakerBotがとっても苦しい立場で悩んで悩んだあげくの結果だったことがBreの態度から伝わってくるね。これからどう展開するかを見守りつつ、応援しよう。
原文