Fabrication

2013.02.15

Generation 3D(3Dの世代):PrintrbotのBrook Drummが語る子どもと3Dプリント

Text by kanai

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Printrbotの創設者、Brook Drummは、初めて買った3Dプリンターキット(MakerBot Cupcake)の組み立てに、2人の娘と1人の息子を無理矢理引きずり込んだ。子どもたちは3Dプリンターを、普通に家にある道具として使いながら育っている。彼はここで、どのようにして3Dプリンターが子どもの新しい可能性の世界を開くのか、なぜ学校に3Dプリンターを採り入れることが重要なのか、について語っている。─ Goli Mohammadi

3Dの世代 – Brook Drumm

私が子どものころ、よく父親についてまわっては、「どうして?」「なんのために?」「なぜ?」「それなに?」「どうやるの?」「なんで?」と聞きまくったものだ。家の裏手に父のオフィスがあり、そこには夢のようなガジェットがたくさんあって、機械を分解してその仕組みを知りたい欲する私の背中を、父は押してくれた。父はいつでも、エレクトロニクスや機械の知識を私に分け与えてくれた。子どもの私にとって、それは完全に魔法の話だった。そんななかで、私はいつかハンダごてを手に入れて、そいつに惚れ込んだ。聞いたり、試したり、いじったり、壊したり、さらに失敗までもが、私をMakerへと育ててくれたのだ。

質問や、私がたんまりと溜め込んでいる電子機器やガジェットをいじくることを奨励するという我が家の伝統を私も引き継いでいる。3人の子どもたちはそれぞれ、私と1対1でプロジェクトに挑戦してきたが、2011年1月、初めての3Dプリンター作りでは、全員が集結した。私は、Bre Pettisを特集したMAKE(MakerBotが表紙になっている号[英語版vol.21、日本語版vol.10])に触発された、何ヶ月もお金を貯めて Cupcake 3Dプリンターを購入したのだ。

娘たちは、いろいろなパーツの組み立てを手伝ってくれた。6歳の息子Leviには、電子部分の仕上げの段階でハンダ付けを教えてやった。それは息子と私の通過儀礼のようなものだった。少し怖がりながらも、ハンダというツールの扱いを任せられたことに興奮していた(しっかりと監視していたが)。始めてすぐのときから私は感じていた。もっと簡単に組み立てられるデザインにするべきだと。しかし、私たちはついにCupcakeを完成させ、プリントができるようになった。家族全員がキッチンのテーブルを囲み、この進歩のデバイスが最初のプラスティックの塊を作り出す様子を見守った。そのとき私は、3Dプリントはファミリー向けの娯楽だと確信した。

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ここから、Drumm家も新しい考え方が芽生えた。妻と子どもたちは、何ができるのかを考え始めた。ホームセンターで何かを見ては「これならプリントできる」と言うようになり、私は、キッチンの棚や、食洗機のツマミや、友人宅の柵や、トイレのハンドルなど、家の周りのものを修理するようになった。2人の娘と私は、指輪やブレスレットや、キーチェーンやブレスレットにぶら下げる小物をプリントした。私は家族に、無料の3Dモデリングプログラム、SketchUpの使い方を教えて、自分でデザインしてプリントできるようにしてやった。

先日、私は、クリスマスのオーナメントを作るために、Printrbot Jr.Printrbot Goを持って帰った。8歳になったLeviは、プリント用の「ダーク・ベイダー」のライトセイバーをすぐに探し出した。男の子は武器が大好きだ。ライトセイバーは難なくプリントでき、彼の野球のトロフィーの隣に誇らしげに飾られた。Leviはもっともとプリントして欲しいとせがむようになった。つい最近の彼の読書感想文には、プリントしたピラミッド、プリントしたスフィンクス、プリントしたロゼッタストーンのレプリカが添付された。息子には、自分が特別なことをしているという意識がない。息子が3Dプリンターとは何か、どういう仕組みなのかについて学校の教室で説明するのを、私も立ち会って聞きたかった。

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今や息子にとって、朝起きたらカウンターの上にプリントされたものが置かれている状況が日常になった。それについて息子はなんの疑問も抱いていない。息子は、車やロボットや機械やオモチャの鉄砲など、プリントしたいもののアイデアをどんどん投げつけてくる。そのアイデアにまったく枠がないところがいい。物理の法則などはほとんどわかっていないが、むしろそのほうがいい。あらゆるものがプリントできると信じたまま大きくなって欲しいと思う。

ある日、私がSketchUpで新しいプリンターの設計をする様子を息子が見ていた。しばらくじっと見入っていたが、やがて息子の中で何かが動き始めたようだった。そこで私は、ドローイングに関していくつか鍵となる質問を投げてみた。すると彼は即座に正しい答を返してきた。私は驚いた。これまで一度も、きちんと教えたことはなかったのに、息子は理解していたのだ。そう言えば、息子がWiiやXboxやiPadでプレイしているゲームは3D空間で展開されている。コンピューターのユーザーインターフェイスも三次元的になりつつある。コモドール64の2Dのスクロールゲームやテキストアドベンチャーで育った私とは違う、別の世界で息子は育っているのだ。

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子どもたちと活動するなかで、私がいちばん好きなのは、何ができるかを考えるときに、子どもたちは一切制限を設けないということだ。問題があれば、新鮮な視点でそれを見る。それに好奇心を持ち、熱意を持ったなら、時間をかけて問題を解決していく。Caleb Cotterもそんな人だ。Calebは1年半前に、私たちのRepRapミートアップグループに初めて顔を出した。今は15歳と6カ月だが、最初に会ったときは14歳だった。おじいさんに誘われてこの会合にやってきたのだが、私たちがギークなことをしているのを不思議そうな顔で座って見ていた。会合ではCalebが最年少で、彼のお祖父さんが最年長だった。

CalebもCupcakeを持っていた。ちょうど私たちは同じような挑戦や実験をしていたので、すぐに打ち解けた。彼が大変に聡明で、自発的で、はっきりと物が言えて、勉強熱心な少年であることは、すぐにわかった。仲間になってくれたらどんなにいいかと、即座に思ったのを覚えている。結局、彼は私の誘いを受け入れて、週末に参加して、いっしょにやれることになった。あの若さだから、この1年とちょっとの間に、たくさんの珍しい体験ができたと思う。彼は、イスラエルの首相に会って3Dプリンターの説明をするなんてことも経験したのだ。

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誰もが子どもたちとやっていけるわけではない。正直言って、教えようという強い気持ちが必要であり、大変に時間がかかることを覚悟しなければならない。忍耐強く接することで、私はCalebの特別な才能とやる気を発見することができた。Calebは研究とデザインが大好きだ。私は、明解なゴールを丁寧に提示してから、いっしょにデザインを行うようにしている。新鮮な観点を得られるのは、とても貴重なことだ。2人で関わることで、デザインも力強いものになると私は確信している。先週の土曜日、私は彼に「私がいちいちあら探しをして、完璧主義者のように細かい変更を要求するのって、イラつかない?」と聞いてみた。すると彼は「うん、ちょっとね」と答えた。これには爆笑した。しかし、それが彼をよりよいデザイナーに育てるのだということを、彼も承知している。

ときどきPrintrbotを使いにくる学生はCalebだけではない。ミートアップに参加した12歳の少年が、真っ先にこう聞いてきた。「何歳から入れますか?」と。そのとき彼は、バル・ミツバー(ユダヤ教の13歳の成人式)のお祝いにPrintrbotが欲しいと父親にお願いしていた。彼の父は、ハヌカ(ユダヤ教のクリスマス)のサプライズプレゼントとして、彼にPrintrbot Plusを買ってくれた。このような若者が3Dプリンターを最初から学ぶというのは、素晴らしいことだ。私の親友の息子、Jakeもときどき土曜日にやって来るのだが、今ではボットファームの最年少運用者という栄誉を与えられている。Jakeは、大勢の親戚にクリスマスプレゼントをプリントした。これが信じられないほど素晴らしかった。彼は根気強く、ナチュラルホワイトのABSフィラメントをマルチカラーのフェルトペンで着色していったのだ。何時間もかけていた。その結果出来上がったプリントは驚きだった。彼の先生は生徒になった。素晴らしい。

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子どもたちがテクノロジーを嗅ぎつけて使うようになるのを見ることが、私の大きなモチベーションになっている。すべての学校に3Dプリンターが配置される日は近いと私は確信している。私は、地元の学校に3Dプリンターを置くために、2回目のKickstarterキャンペーンを行ったのだが、失敗に終わった。最初のキャンペーンではタイミングが大きく寄与してくれたが、2回目はいろいろな要素が絡み合って悪いタイミングになってしまったのだと思う。端的に言えば今のアメリカ経済状況の影響が大きい。しかし私は、プリンターをすべての学校に、すべての家庭に、というゴールを追い続ける。どうしたら実現するだろうか。自分ができると望む速度よりも、もっとゆっくりやることだ。

アメリカの学校や子どもたちに対して、私は本当に切迫感があるのだが、大人への教育が進まない。そう、大人だ。子どもたちはほぼ瞬間的に3Dプリンターを理解し、欲しがってくれる。しかし、学校や子どもの人生の判断を下す側の人々は、3Dプリンターを学習して買おうと決心するまでが長い。そこでPrintrbotでは、多くのみなさんと一緒に、若い子どもたちと、あまり若くない人たちを教育するための、ゆっくり、しっかりとした行軍を進めています。世界が注目し始めています。

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3Dプリント世界の行軍の順番

1. まず、3Dプリンターを買って学習する。

2. 継続的に見せびらかす。隣人に、子どもの教室で、教師に、図書館の人に、町の行政関係の人に、影響力のあるあらゆる人に。

3. 家族連れで参加できるミートアップやクラブを立ち上げる。早く多くの人に興味を持ってもらいたければ、学校に行っている子どもを招く。

4. プリンターに目的を与える。プリンターを有効に活用するための意味を見つける。学校で何かを修理するとか、チャリティーで配るものをプリントするとか、学校や興味を持った子どもたちにRepRapのパーツを寄付するなど。

5. 地元の学校の3Dプリント大使になる。これには、ある程度の努力と調査が必要だ。まず校長と生徒と話をして、この新しいテクノロジーをどの授業に採り入れるかを決める。時間をかけて、その学校の方針に沿って地道に進めよう。先方のアイデアにはオープンに、できるかぎりの協力をする。最初に興味を示してくれるのは、新世代のMakerたちがすでに力を持ち始めていることを知っている、技術好きの先生だろう。

私たちはここから世界を変える。がんばろう!

– Brook Drumm

[原文]