Fabrication

2013.04.08

3Dプリンターは世界を救うか?

Text by kanai

3D Printed Toilet

3Dプリンターの人気が爆発して、製造業から起業家精神まで根底から変えてしまう勢いだ。3Dプリントを悪く言う人もいる。大騒ぎするほどのものでもないと言う人もいる。しかし私は、ものをデザインしたり作ったりする方法に革命をもたらすという以上のものが3Dプリントにはあると信じている。究極的には、第三世界の人々の力を引き出し、彼らの人生を変えてしまうほどの劇的な力があると思っている。

だから私は、re:3Dに注目している。彼らは、私たちが当然と感じているインフラを持たない発展途上国で使える大型のプリンターを開発している。この企業はチリ政府によるチリ国内での革新的な起業を促すプログラム、Startup Chileに受け入れられている。Kickstarterキャンペーンでは、10万ドルの資金の獲得にも成功している。利益を上げながら善行を行うという彼らの目標は、社会的起業家精神の基礎となる。彼らの使命は、全世界の生産に革命を起こすことだ。

社会的な起業家精神は、長い間、ピラミッドの底辺にフォーカスを当ててきた。つまり、地球上でもっとも多い(そしてもっとも貧しい)人たちだ。彼らは1日2ドル50セントで暮らしている(40億人いる)。発展途上国で靴や洗剤を売る事業もこれに入る。高度なパーソナル製造工場を売ることも、そうだ。

3Dプリントは命を救う

一般向けの3Dプリンターの小さな作業エリアでは、トイレや雨水タンクのような基本的な設備すら持たない人たちが本当に必要とすものをプリントするには十分ではない。そうした品々は、我々には当たり前のものだが、多くの人にとっては夢でしかない。だから、re:3Dは、将来的にはリサイクルしたプラスティックでプリントできる大型のプリンターを作っているのだ。埋め立て地にはプラスティックが溢れている。廃物から便利なオブジェクトを作るようデザインされた「完全なソリューション」を構築することには、3つの恩恵がある。

  1. もっとも重要なことは、我々が当たり前と思っている基本的な日用品を村でプリントできるようになること。これには彼らの生活、健康、健康に対して強大なインパクトがある。
  2. 原料は安く手に入る(無料になることも)。
  3. 環境規制がほとんどない地域での廃棄物を少なくできる。

本当なのか? 3Dプリントしたトイレが世界をどう変えるのだろうか? UNICEFによると、トイレの不足が子供の死亡原因の筆頭だという。「国を開発する」と言うとき、基本的なケーブルがすでにあってWiFiはまだない国のことは対象にしない。対象にするのは、衛生状態がまだ大きな問題となっているような国だ。

地場の経済を向上させる

入手可能な3Dプリンターは、地域内向けにも海外向けにも製品を売る地元に小規模な起業を促す。チリで成長している中流の人たちなら簡単に3Dプリンターが買えるが、1日2ドル50セントで生活している人には無理だ。そこで、小規模融資が重要になる。

この障害を乗り越えるために、その企業は小規模融資で3Dプリンターを購入することを考えている。起業したオーナーは製品をプリントして販売し、購入資金に充てる。発展途上国での小規模融資は、女性の生活水準の向上と社会進出を助けてきた。今日に至るまで、小規模融資のほとんどは、ヤギの畜産や縫製などのビジネスに向けられている。これが、安価な(または無料の)リサイクルプラスティックを使った3Dプリント事業に使えたらどうだろう。

文化の違いが大切

インフラの不足や言葉の壁などの明かな違いを超えたところに、ひとつの大きな(そしてとても重要な)違いがある。文化だ。地元の文化を理解できず、うまくやれなければ失敗する。たとえば、re:3Dを立ち上げたチリでは、人間関係を非常に大切にする。あなたが売るものと同じぐらい、あなたが何者であるかが重視される。チリの人々は時間をかけて互いに知り合い、考えを共有したいと考える。これは、自らが正しい答を持っていると絶対的に思い込んでバリバリとやっていきがちな結果重視のアメリカ人にとっては、大きなカルチャーショックだ。

アメリカのような発展した国家には、たくさんの革新的なアイデアがあり、ピラミッドの底辺の生活を劇的に向上させる製品がある。しかし、その恩恵は、コミュニティがその製品を受け入れなければ得られない。正しい考え方と、その国の文化と社会的規範の中でやっていくという決意を持って市場に入ることで、初めて援助が実を結ぶ。

どう思う?

3Dプリントが世界を救うと思う? それとも単なる誇大妄想だろうか。コメントを聞かせてほしい。

– Stephen Murphey

StephenはMBAを持つロケット科学者。Makerムーブメントがどのように世界に革命をもたらすかを調査している。詳しくはStephen Murpheyのブログをどうぞ。

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