Electronics

2013.05.01

Game on ─ 3D技術でオリジナルのサッカーテーブルを作る

Text by kanai

新しい3Dスキャンと3Dプリントの技術が、古い制限を取っ払ってくれる。それは破壊的発明、見たこともない生産方法、劇的な製品を生み出そうとしている。

3Dは楽しさに溢れるものでもある。サッカーテーブルはどうだ。サッカーテーブルは楽しい。PingFu_Badge

さて、サッカーテーブルに並ぶ選手たちの日常は、実家に手紙で知らせるほど楽しくはない。考えてみてほしい。足はパドルだ。一日中、遊園地の乗り物みたいにくるくる回ることを余儀なくされる。吐き気と目眩が残る。自由時間には同僚と話をする。しかし、みな彼とまったく同一の人物だ。自分自身に話しかけているのと同じ。1週間に大勢の人がサッカーテーブルで遊ぶが、くるくる回るだけで退屈そのものだ。

そこで、我々Makerは、彼らの人生を多少なりとも楽しくするために、我々が毎日使ってる3D Systems Geomagicで何かできるはずだ。顔を正確にスキャンするのだ。これでサッカーテーブルに変化が起きて、退屈が紛らわされる。そうして我々は、サッカーテーブルの人形を、自分たち、つまりGeomagicの従業員の顔で作る作業に入った。

(余談ながら、サッカーテーブルを作ったのはずっと昔の人。Lucien Rosengart[1880-1976]が発明者とされている。彼はそれを「ベイビーフット」と呼んでいた。彼はむしろ、Roesngart自動車や、鉄道や自転車の特許を多く持っていたことで知られている)

我々は、オフィスにいる全員の顔のスキャンを開始した。今や、スキャン技術はコストが低くなって使いやすくなった。どのくらいかって? そうね、このプロジェクトではMicrosoft Kinectを使ったのだけど、無料のツールキットを利用して、立派な入門レベルの一式が約250ドルだった。Geomagic SparkとGeomagicのKinectプラグイン、Fuseを使って、社内のエンジニアがKinectで生成されたデータからポリゴンメッシュを作ることができる。このサッカーテーブルプロジェクトの最初の犠牲者名誉を得る者は、我らのITの師、Duncanに決まった。長い顎髭と剃り上げた頭が特徴だ。

私はこれを、Geomagicのプロダクトマネージャー、Kevin Scofieldに引き継ぎ、この先どうしたかを報告してもらう予定だ。

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画像:スキャンしたDuncanの頭をユニフットに取り付けたところ。隣は3Dプリントしたもの)

Duncanのポリゴンメッシュができたところで、私はデジタル版の胴体「ユニフット」(テーブルサッカーの正式な用語だ)を作った。これは、スキャンして精査したユニフットのデータを集めて、ひとつのポリゴンメッシュに合体させるという作業だ。Geomagic Studioで、私は基本的な形状を抽出したが、CADモデリングソフトのSpaceClaim(下の画像を参照)を使って完全なCADモデルに仕上げた。そのユニフットのデータを、3Dプリンターやコンピューター支援製造で広く使われているSTL形式で保存して、再びGeomagic Studioに読み込んだ。最後のステップは、スキャンしたDuncanの頭を、私が作ったユニフットに載せること。メッシュのあちこちを引っ張ったり押したりして、これで、DuncanはITマスターからサッカーテーブルの伝説へと変身した。

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画像:SpaceClaimでのユニフットのデザインと、Geomagic Studio での完成モデル)

モデルをGeomagic Freeformに移して、バーチャルクレイに対応したボクセルに変換することもあった。触感デバイスを使って、手を使ってモデリングをするのだ。言うまでもなく、これはビックリするほど便利なものだ。スキャナーではうまくキャプチャーできない髪の毛などの形を整えるのに役立った。

Duncanの場合、ほかのみんなもそうだったが、最終モデルをSTLファイルにして3Dプリンターに送った。我々の新しいカスタマイズされたサッカーテーブルは、クールなだけじゃない。サッカーテーブル、サッカーテーブルの人形、そして世界中のサッカーテーブルをプレイする人々に新しい希望をもたらすものだ。

Pingに戻そう。

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私はここだ。センターストライカーとして、素晴らしいGeomagicのメンバーと並んでいる。我らのソフトウェアを作り、そのソフトウェアで驚くようなものを作り出す人たちだ。技術研究室のCubeプリンターは、もっとたくさんのメンバーをプリントできる。

おそらく次は、テーブル自体を作ることになるだろう。フィールドをパーソナライズして、自分だけのグリップを作ったり。我々の最先端の技術とリソースを使うことで、まったく新しい可能性が見えてくる。我々に不可能はない。

これこそ、私が思うところの物作りの美学だ。創造力と現実との間にあった固い壁を溶かし、鮮烈な夢とリソースの間の線をなくす。現代のツールを使えば、「クールだろうな」から「できる」へと今すぐ進化できる。

これは新しい可能性だ。我々はみんなで作って、同時に豊かな新しい可能性の畑を発見する。新鮮なリソースとツールは我々を解放し、世界を見渡す新しい視点を与え、それまでは存在しなかった機会をもたらし、分断されていたパーツをつなぎ、「生産中止」「不可能」「標準」「現状」「普通の」「ワンサイズ」といった言葉を振り払う。

以前にも増して、私たちは、自分たちの心の中にある何かを作ることで満足感を得るようになった。自分の手を動かすこと、私たちに制約を与えてきた巨大な工業用マシンをはね除け、コンセプトから組み立てからアクションまでプロジェクトを見渡すことは、直感的で素晴らしい。一般的な製造が堅苦しくロボット的であっても、作るということは人間的な行為だ。人間に生まれてよかったと感じる (機械を作るときでさえだ)。

ではまたお会いするときまで、ハッピーメイキング。

─ 3D錬金術師 Ping Fu(Josh O’Dell と共同執筆)

Ping Fuは2005年のInc. Magazineの「今年の起業家」に選ばれた。
彼女は自分自身をビジネスを表現手段に選んだアーティストであり科学者と称している。1997年、Pingは3D画像ソフトウェアの会社、Geomagicを創設。2013年2月に3D Systemsに買収された。

[原文]