Fabrication

2013.10.08

プロトタイプからプロへの道(Hardware Innovation Workshopから)

Text by kanai

Plethora helps makers go pro

Makerのプロ化を支援するPlethora。

希望に溢れるハードウェア系起業家をこのイベントに呼び込むことが大切だ。どうしたら、Makerたちに本当の起業への一歩を踏み出させることができるか。

その解決策のひとつに、プロトタイプの周期を速くする能力がある。「これは製造革命と言うより、プロトタイプ革命です」とDale Doughertyは言う。


Ben Einstein:Bolt 共同創設者、常務

話はそれだけなのか? 次の3つのセッションでは、何人かのプロたちが、プロトタイプから製品へつなげた経験と、そのためのアドバイスを話してくれる。

初期段階のロードマップ

ボストンに本社を置くBoltの共同創設者で常務のBen Einsteinはこう尋ねる。「なぜハードウェアがホットなのか?」

契約製造がビジネスの景色を一変させてしまった。これから起業しようという人には投資が必要だが、投資家は何を求めているのだろう。

  1. ワールドクラスのチーム
  2. 大きな問題を解決できる製品またはサービス
  3. 市場の興味を惹きつける能力
  4. 大胆なビジョンを持つ企業


Scott Miller:Dragon Innovation共同創設者、CEO

Dragon Innovationは、ハードウェア系新興企業を支援するクラウドファンド・プラットフォームだ。彼らの顧客リストには、Sifteo、Romotive、Pintofeed、Pebble、そしてもちろん、Makerbotが名を連ねる。彼らは製造業界で長年の経験を持つ。「製造に関する情報はGoogle(検索)では出てきません」とScott Millerは言う。

できることは、支援者の声を聞くことだ。製品を支えるコミュニティができれば、資金が得られる。市場の大きさがわかる。「クラウドファンドは市場の検証にもってこいです」とScottt。

「ハードウェアとソフトウェアの違いは、感触です」と語るのは、Rob Coneybeer(@robconeybeer)。お客さんにとって、製品を手に取って触れることが、本質的に重要な点だ。強力なプロダクトデザインが必要だ。ブランディングもプロダクトデザインには欠かせない。


Robert Coneybeer:Shasta Ventures常務

「レゴはハードウェアのブランディングのお手本です」とRobは言う。「会社の名前がすべての製品に刻まれている製品が、どれだけあるだろうか。レゴは製品開発に時間をかけている。ブリックをパチンとはめたときの気持ちのいい感触は、安物のコピー商品では味わえない」

シンプルであることが大切だ。名前は短く、しかし独創的であること。口コミの力をあなどってはいけない。

  1. 製品を愛してくれる人たちに、気軽に支持してもらえるように、名前は短く、書きやすく、言いやすいものにする。
  2. ソーシャルメディア。どんな色や形がよいのだろう? 写真での見栄えはどうだろう?
  3. 一度になんでもやろうとしてはいけない。インターネットに接続して使う製品を作るのなら、よりよい機能性を押し出せる。アップデートはブランドへの忠誠心を高める助けになる。

Robはまた、好きな検索エンジンで「ブランド構築の法則」を探すことを助言している。トップに表示されるものを読んで採り入れる。これはいいアドバイスだ。

作らせる

Bunnie Huang, Co-Founder of Chumby
Bunnie Huang:Chumby共同創設者

Bunnie Huang(@bunniestudios)は、ひとつ作る場合と数千個作る場合とのギャップを指摘する。最初の射出成型には費用がかかるが、継続して製造すれば、コストは3Dプリンターよりも桁違いに安くなる。

Makerはこう自問する必要がある。「いつ、このギャップを跳び越えるべきか」

よい製造業者なら、その時期を適切に判断してくれる。下請け業者を抱えているパートナーと組むのがよい。彼らは、エコシステムの中からもっとも適した製造業者を選んでくれる。何がなんでも自社の工場で作ろうとするパートナーでは融通が利かない。

Bunnieはまた、デザイナーと製造業者が対立しないようにするべきだと言っている。「工場といっしょにデザインするのです」とBunnie。

自分に合ったサイズのパートナーを選ぶこと。大きければいいというものではない。「工場のCEOと食事ができないようなら、あなたは重要視されていないことを意味します」とBunnie。パートナーとは、各部品のコストを含む部品表を共有できなければならない。「光がいちばんの殺菌剤」と彼は冗談めかして言う。

Dorian Ferlauto, Founder and CEO, ELIHUU
Dorian Ferlauto:ELIHUU創設者、CEO

ELIHUUのDorian Ferlautoは、Rob Coneybeerの前述のルールには従わないと冗談っぽく言い切る。

彼女によると、ELIHUUはデザイナーと製造業者を結びつけるところだという。ハードウェア系の起業家は製造パートナーを探している。製造業者は仕事を探している。有能なプロダクトデザイナーと組んで仕事をしたいと考えている。

ELIHUUは、信頼できる有能なデザイナーと製造業者のネットワークを構築している。

Nick Pinkston and Jeremy Herrman, Founders of Plethora
Nick PinkstonとJeremy Herrman:Plethora創設者

アメリカや中国の生産設備を使うのは難しいが、PlethoraのNick Pinkston(@nickpinkston)には妙案がある。

「製造業は100年間ほとんど変化していません。T型フォードを作っていた工場と、現代のF150を作っている工場とでは、あまり差がありません」と彼は言う。ソフトウェアを使えば、製造は簡単になるとNickは考えている。

激しく修正を繰り返すソフトウェア開発の手法を、ハードウェアに採り入れたらどうだろう。Plethoraでは、特別製のCADシステムを通して製造プロセスにアクセスできる。顧客はそのCADを使ってパーツをデザインするのだ。

システムがエラーを検知すると赤(製造不能)、問題を検知するとオレンジ(修正には費用がかかる)、失敗の可能性を感知すると黄色を示す。さらに、これらの問題点を事前に修正すると、デザインのコストがその場で自動的に調整される。

市場へ投入

Zach Kaplan, CEO of Inventables
Zach Kaplan:Inventables CEO

Zach Kaplan(@zkaplan)は、新しいルネッサンスの時代に世界が突入すると見ている。製品を製造するのが大企業の特権だった時代は終わる。個人や小さな企業が市場の成長分野を担うようになるというのだ。

Inventablesは、自身を「デザイナーのハードウェアストア」と呼んでいる。企業に、パーツや素材を小口販売している。これにより、製品を少量生産したいときに直面する問題が解決できるのだ。

Brady Forrest, Vice President of Highway1
Brady Forrest:Highway1副社長

Brady Forrest(@brady)は、複数の技術系企業のアドバイザーを経て、現在は技術者を育てるHighway 1の副社長を務めている。

彼は、ハードウェアのラピッドプロトタイピングが発達し、製造パートナーのエコシステムが拡大しても、まだ足りないものがあると言う。

会社を立ち上げて製品を市場に送り込むまでに多額の資金を必要とする部分は、今も変わっていない。そこで必要になるのは、ハードウェア版のAmazon Web Servicesのようなものだと彼は言う。

それまでは、ハードウェアを対象とするインキュベーターやアクセラレーターが引き続き新興企業を手助けすることになる。

Emile Petrone, Founder of Tindie
Emile Petrone:Tindie 創設者

TindieのEmile Petrone(@emilepetrone)は、ハードウェアスタートアップ向けの市場を作ろうとしている。「ハードウェア版のEtsyです」と彼は言う。

Emileによると、製造する前に、ハードウェアのアイデアを支持してくれるコミュニティを作ることが重要だと言う。また、どんな製品を市場に送り込もうとしているのか、自分でよくわかっていなければならないという。完成品なのか、コンポーネント式なのか、キットなのか。製品化の前に決めておかなければならない。

また、注文を取る前に、売り上げの予測も掴んでおくことが大切だ。

クラウドファンドを利用したプロジェクトの場合、「失敗に関してもオープンで透明にしておくこと。それを率直に話せば、支持者は理解してくれる」とEmileは助言している。

– Andrew Terranova

原文