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2014.01.29

インターンは楽しい

Text by kanai

ボクはLogan。カリフォルニア州レイクタホに住む14歳のスキー選手です。ボクは普通の学校には通っていません。特定のカリキュラムや、特定の方法での教育を受けていません。これは学習のリミックス、またはマッシュアップだと思っています。名付けて、「ハックスクーリング」です。ハックスクーリングでいちばん好きなのが、インターンシップで実技を習う時間です。ボクは、Moment Skisbigtruck brandでインターンをしています。1週間のなかで、インターンに行く日が最高に楽しみです。

毎回、たくさんのことが学べるインターンの時間は、ボクの教育のなかでもいちばん好きな部分です。ボクに教えてくれる人たちは、みな自分の仕事が大好きでたまらない人たちです。ほかの子どもたちにも、小さいうちにこんなクールな体験をしておくべきだと気づいて欲しい。

ボクがTEDxで行った「Hackschooling Makes Me Happy」(ハックスクーリングで幸せ)というスピーチを聞かれた方は、ボクが実際に何をしているのか、どうやって学んでいるのかを知りたいのではないかと思います。ボクは、身近にあるいろいろなものを利用しています(MAKE英語版 Volume 38のボクのコラムを読んでください)。もちろん、インターンシップがボクの教育のすべてではありませんが、ここでは、Momentとbigtruckでの1日の様子と、いっしょに働いている人たちのこと、そして、インターンシップでボクが何を感じたかをお伝えしたいと思います。

ボクはビデオ編集が好きなので、ボクがインターンをしている場所の様子をビデオにまとめてお見せしましょう。

ネバダ州リノにあるMoment Skisは、手作りスキー板を作っている、とても珍しいスキーショップです。将来、ボクはここで、自分自身と他の人たちがスキー場で使えるスキー板の作り方を学ぶ予定です。Momentは、スキー業界で唯一、先が四角いスキー板を作っているので、とても目立っています。また、たくさんのものが描き込まれたグラフィックもよく目立ちます。怖かったり気持ち悪い絵もありますが、たいていはカラフルでランダムな感じです。とにかく、とってもクリエイティブなところです。

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工房に入ると、大きなディスプレイがあって、スキーやウェアがたくさん飾ってあります。左側にオフィスがあり、いつもはそこで、スキーヤーたちに送る手紙を封筒に入れたり、書類の整理をしたりといった仕事から始めます。Momentの創設者、Casey Hakanssonは、1日にやるべき仕事の長いリストをくれます。楽しい仕事ばかりではありません。ホントです。しかし、他に忍耐を学ばせてくれる場所があるでしょうか。忍耐がなくて注意力が散漫だったら、工房全体にいろいろな形で迷惑をかけます。手紙の封筒詰めは好きな仕事じゃありませんが、スキー板作りを学ぶといったクールな仕事をさせてもらえるようになるには、こうした仕事をすることが必要なんです。

2003年、Caseyは自宅のガレージでスキー板を作りました。作れるから作ったんです。そしてもうひとつ。そして、友だちから作って欲しいと頼まれました。やがて彼らは、Caseyに代金を払うようになりました。それからちょうど10年、今では何千本ものスキー板を作って、全世界に出荷しています。

インターンとして、こうのすべてのプロセスに関われることは、本当にすごいことだと思っています。スキーの箱の整理から、スキー作りから、トイレの掃除まで、ボクはいろいろなことができるようになりました。このすべてのプロセスに加わることで、ボクはここの仕事に、社会に、そして業界全体に貢献しているのだと実感できます。これは、カリキュラムには絶対に含まれません。でも、とっても勉強になります。

ハックスクーリングでは“現実”に何が学べるのかと聞かれれば、いつまでも、どこまでも細かいことを書き続けてしまうと思いますが、時間にはかぎりがあります。なので、ボクが学んだうちのいくつかを紹介します。スキー作りの長くて、しかしクールなプロセスです。

まず、いろいろなタイプの木材から始まります。ボクはそれらを積層して、自動カンナ盤に通し、CNCソーで切り出します。

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ここでサイドウォールを接着し、いろいろなタイプのファイバーグラスとカーボンファイバーを重ねます。

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それと同時に、スキー板のグラフィックをプリントします。プリントする下地や質感はいろいろです。それは、スキー板の目的によって変わります。ツーリング用のスキーなら、滑っている間にスキー板に雪がくっつかない下地にします。雪が剥がれるので軽くなります。

スキー板はやがてラインアップ室に移され、そこですべてがBOCエポキシで積層されます。

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そしてスキー板をプレスにかけ、40分間、熱硬化させます。

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その後、板を切り出して、ストーングラインダーに何度か通します。そして、セラミックのエッジベベルにハードストーンフィニッシュを施します。出来上がったら、ボクが組み立てた箱に詰めて、みなさんにお届けします。

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インターンシップが楽しいところは、手作業が学べることと、初めての出会いです。初めて会う人、初めてのアイデア、初めての状況、初めての何もかも。インターンシップは100%リアルです。現実世界では、たくさんの初めてのことに遭遇します。いいこともあれば、実際、嫌なこともあります。それが人生です。1日のうち、たいてい1回は、新しいグラフィックや新しいウェアが届きます。そうした新しい物を見るのも、とっても楽しみです。

ときどき、ぜんぜん違うサンプルが届くこともあります。そんなときは、最初からやり直しです。たとえば、新しいスエットシャツを注文したのに、柄の色がぜんぜん違ってたとか。そのとき、ボクたちは、もっと正確に注文すべきだったと反省して、送り返します。

Momentでも、もうひとつのインターンシップ先であるbigtruck brandでも、ボクが好きなのは、どんな日でも、思い通りにいかないという点です。ボクのインターンシップは大混乱です。教科書には混乱がありません。教科書では、混乱した部分や人生の面白い部分をきれいに掃除して、きちんと章立てして、すべてが完璧な順番に並んでいます。ボクのインターンシップは予測の付かない状況と、魅力的で不完全な人たちであふれています。

bigtruckの話が出たところで、リノからカリフォルニア州トラッキーのbigtruck brandへ移動しよう。bigtruckは、小さいながら急成長中の、帽子を作ったりカスタマイズしたりする帽子屋さんです。いろいろな種類のハットやビーニーを作るための生地や糸がたくさんあります。Momentと同じく、bigtruckでも、掃除機をかけたり、片付けをしたり、ハットのはみ出した糸を切ったりといった退屈でハードな仕事に耐えないとなりません。しかし、UPSやFedExのトラックが店の前で停まると、ボクはやっている仕事を置いてドアに駆けつけ、運送屋さんから荷物を受け取り、箱を開けて何が入っているかを確認します。ボクは、bigtruckのCEO、Galen Griffordのために、すべてのペーパーワークを残してあげています。彼はボクのボスであり親友です(そう、33歳のボスが親友だと言ったんです)。Galenはものすごく頭がよくて、でも最高に可笑しい人です。ボクから見ると、彼は、娘と奥さんがいる14歳の大人って感じです。Galenはボクにたくさんのことを教えてくれます。そして、いろいろなところに連れて行ってくれます。ランチを買いに行ったり、銀行に行ったり、スキーショップに行って帽子を売ったり。

bigtruckでは、みんなボクをインターンとしては見ていません。ボクはチームの一員になった気がします。すごく貢献している感じです。ボクは、実際に売り物になるハットのデザインまでできるようになりました。ショップに行って、ハットやビーニーを売れるようにもなりました。ボクの重要な仕事のひとつに、Hat Barの運営があります。お客さんが自分だけのハットをカスタマイズできるところです。ボクはビジネススキルも学んでいます。ボクのInstagramのフィードを見てください。Momentとbigtruckの写真がたくさんあります。ボクはマーケティングの方法を学んでいます。うれしいのは、bigtruckがボクを信用してくれていることです。子どもでいられると同時に、仕事や社会や業界全体に貢献できるというのは、とても気持ちのいいものです。

優秀なデザイナーのなかには、いつかデザインの世界に飛び出して、自分のやりたいことをやろうと夢見ながらも、デザインを任せてもらえない人たちがいます。その点ボクはラッキーだと思ってます。週に何日か行くだけで、本当のデザインをさせてもらっているからです。学校の机の上で教科書から学ぶのではなく、本物の起業家といっしょに、本物の仕事として実地で学んでいます。

最初に言ったように、ボクはインターンをすることで、毎回、とても多くのことを学んでいます。悲しいことに、十代後半にならないとインターンができない子どもがちがいます。しかし、もっと悲しいのは、子どもたち自身に、インターンをやりたいという気持ちや、インターンになれるチャンスがないことです。子どもたちがやりたいことに参加できて、楽しいインターンができるようなプログラムがあったらいいなと思います。すべての公立学校に、そんなプログラムがあればと願っています。

– Logan LaPlante

原文