Crafts

2014.01.22

3Dプリント用モデリング術トップ10

Text by kanai

Kacie Hultgren(通称:PrettySmallThings)は、ブロードウェイの舞台デザイナーとして3Dプリンターを利用しているが、「クラッチパース」や「ジップトップバッグ」など、びっくりするようなものも作っている。彼女は『2014 Ultimate Guide to 3D Printing』のテストチームのメンバーでもある。

zipTopBag
ジップトップバッグ(SmallPrettyThingsより)

Kacieのプリント術

45度ルール

45度ルールは覚えておくこと。45度以上のオーバーハングにはサポート材を使うか、特別なデザインテクニックを使って対処しなければならない。使いやすいサポート材やブリッジ材(円錐形など)をデザインして使おう。

サポート材がいらないデザインをする

サポートに関するアルゴリズムは日々進化しているが、サポート材を使うと、モデル表面にかっこ悪い跡が残ってしまう。また、サポート材を切り離す作業も手間がかかる。サポート材を使わずにプリントできるようにデザインすることが大切だ。

ChairMontage
ウィンザーチェア(SmallPrettyThings)

カスタムサポートを加える

コンピューターが自動生成するサポート材を使わなくて済むように、マウスイヤー(ネズミの耳)と呼ばれるヘルパーディスクやコーンをデザインに組み込む。Tony BuserのMouse Eared Rocket FincanやPrettySmallThingsのウィンザーチェアはとても参考になる。ラフトも避けよう。プリント時間が長くなってしまう。ソフトやプリンターの設定によっては、ラフトの切り離しが難しくなったり、プリントの底面の仕上がりが悪くなることがある。

PLAPinConnectors
WHPThomasのPLAピンコネクター。Tony BuserのオリジナルABSセットから派生した。

プリンターの限界を知ろう

モデルの細かさを確かめる。小さな出っ張り(タワー)や細かい起伏など、デスクトップ3Dプリンターのプラスティックで再現できる範囲のものかどうか。とても重要ながら、よく見逃しがちなことに、プリンターが対応するスレッド幅の公差がある。

スレッド幅はプリンターのノズルの直径で決まる。一般的なプリンターでは、0.4ミリまたは0.5ミリのノズルが使われている。0.4ミリノズルで円を描けば、いちばん小さくてもかならず2本のスレッドで描かれるため0.8ミリの直径になる。0.5ミリノズルなら1ミリだ。ビデオのなかでKacieも言っているが、「プリントできるいちばん小さいものは、スレッド幅の2倍の大きさ」という法則が成り立つ。

はめ込みパーツに適切な隙間を設ける

いくつかのパーツをはめ込む場合、「はめ合い公差」が重要になる。適切なはめ合い公差を割り出すのは難しいが、Kacieは簡単な技を教えてくれた。きっちりはめ込むもの(ぎゅっと押し込んで固定するもの)は0.2ミリのオフセット。ゆるくはめ込むもの(ヒンジや箱の蓋など)は0.4ミリのオフセットと覚えておくといい。もちろん、モデルによって違いが出てくるので、かならず自分のモデルでテストすること。

strechlet1_preview_featured
Stretchlet(Emmett)

シェルを正しく使う

細かい部分には余分なシェルを加えないこと。小さな文字をプリントするときなど、シェルが重なると細部がぼやけてしまう。

スレッド幅を最適化する

スレッド幅を上手に使おう。柔らかいモデルは、とても薄いものをプリントしたいとき、モデルの壁を1本のスレッド幅にする。Thingiverseで公開されているHultgrenのFlexible Inspirationのコレクションを参考にしてほしい。この技を使ったサンプルがいろいろ見られる。

解像度を高める方向に決める

解像度を考えてモデルの配置方向を決めること。必要に応じてモデルを輪切りにして、あとで組み合わせることも考えよう。熱融解積層方式のプリンターでは、解像度がコントロールできるのはZ方向のみだ。XとY方向はスレッド幅で決まってしまう。細かい表現が必要な部分があれば、そこを解像度が調整可能な方向に向けることだ。

okapiMontage
SmallPrettyThingsの輪切りにしてプリントしたPlated Okapi。オリジナルはMasayukiのオカピ

力のかかる方向に揃える

力を加えたときにプリントが壊れてしまわないよう、プリントのラインが力の掛かる方向と直角になるようにプリントして、力を分散させることが大切だ。

同じことが、大きなモデルのプリントに使われるABSにも言える。プリント中にプラットフォーム上で冷えてZ軸方向に割れてしまうことがある。

KacieClutch
クラッチパース(SmallPrettyThings)

まるごとプリントは究極のプリント

熱融解積層方式のデスクトッププリンターでは、「Print in Place」は究極の技だ。これに挑戦するときのHultgrenのアドバイスはこうだ。デザイン要素をプラットフォーム上に展開すること。中に入る部品や隙間にはブリッジを使って慎重にプリントすること。

詳しくは上のビデオを見て欲しい。ほかに3Dプリントのコツがあったら教えてね。

訳者から:Print in Placeとは、たとえば蝶番など、丸ごとプリントして、プラットフォームから取り出したらすぐに蝶番として機能するようなプリントのこと。日本語でなんて言うのかわかりませんでした。

– Anna Kaziunas France

原文