Fabrication

2014.03.14

Protoprintの3Dプリンター用フェアトレードフィラメント

Text by kanai

私は2014年の3D PrintShowでSidhant Paiに出会った。彼はそこで、ゴミとして出されたHDPE(高密度ポリエチレン)から3Dプリンター用のフィラメントを作るProtoprint’sの展示を行っていた。ショーのあと、彼はProtoprintの社会事業、その成り立ち、フェアトレードで3Dプリンター用フィラメントを作るための装置について話してくれた。
– Anna Kaziunas France

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プラスティックを選別するインドのウェイストピッカーたち。

Protoprintとは?

The FlakerBot
FlakerBot

Protoprintは、テクノロジーを利用して都市部のウェイストピッカーに、廃棄されたプラスティックから3Dプリンター用のフィラメントを作るという仕事を提供するインドの社会事業だ。作られたフィラメントは、原材料から作られる製品に対抗する、低価格なフェアトレード製品として全世界で販売され、同時にインド国内では、学生や業者に安価な3Dプリントサービスを提供するための材料に使われる。毎年、インドでは12.5トンのプラスティックが消費され、ほとんどすべての分別作業はゴミ処理場で行われている。そこではウェイストピッカーたちがゴミをより分け、有機物とプラスティックを分別している。そうして集めたプラスティックを仲介業者に売るのだが、受け取れる報酬はその重要な作業に見合うだけの額ではない。一日中ゴミの中を探し回る重労働の末に手にできるのは1ドル以下だ。生活は非常に貧しい。

社会事業の会社を始めようと思ったきっかけは?

プネで育った私は、幸せな子ども時代を過ごしましたが、途上国共通の問題も目にしてきました。MITに入学してから、開発のための低コストの技術の応用に興味を覚え、最初の2年間はタンザニアとニカラグアで働きました(タンザニアでは足こぎ式のバター攪拌機、ニカラグアでは安価な太陽電池式携帯充電器を開発)。

The RefilBot
RefilBot

大学2年の夏、ウェイストピッカーの価値連鎖を高めるための草の根のリサイクル技術を探していました。同時に、私の父が3Dプリンターを生産するアイデアを練っていました。ある日、父と話をしていたとき、FDMプリンター用のフィラメントは、とても簡単に押出成形できることに気がつきました。そこで私たちは、低コストでフィラメントを押出できる機械の開発に取りかかったのです。

会社はどのように設立されたのですか?

翌年の春学期に、私は自分のアイデアをKatie Spies(MITのクラスメート)に話しました。彼女はすぐに興味を示して、仲間になってくれました。そして、MITチーム(私とKatie)とインドチーム(私の両親)で協力して、FlakeBotとRefilBotをデザインし、開発しました。この技術のイテレーションをする間に、私たちはプネのSWaCH(ウェイストピッカーの生協)と仲良くなりました。去年の夏、ゴミ処理場に試験的に Filament Lab を開設し、彼らとともに廃棄されたHDPEの処理を始めまたのです。

廃棄されたHDPEを3Dプリンター用フィラメントに変換する機械について教えてください。

Flakerbotは、5馬力の回転式シュレッダーを使ってHDPEのボトルを粉砕してフレーク状にするコンパクトなマシンです。RefilBotは、コンパクトな押出マシンです。スクリュー式コンベアでフレークを“クッキング”工程に送り込んで溶かし、3ミリ径のフィラメントに押し出します。これらのマシンは、現在のウェイストピッカーのサプライチェーンに簡単に組み込めるよう、低コストで、安全で、簡単な操作で使えるように作られています。

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RefilBotは、より多くの押し出しができるように改良を加えているところです。完成したら、同様のモデルを導入したいと考えている人たちに、この処理方法と設計図を無料で提供しようと思っています。現在は、販売することは考えていませんが、その可能性はゼロではありません。

Protoprintの仕事とウェイストピッカーについて教えてください。

Protoprintの技術は、ウェイストピッカーの人たちが、自分で集めたHDPEを3Dプリンター用のフィラメントに加工できるようにするものです。インドのウェイストピッカーの生活共同組合といっしょに活動することで、Protoprintは、ゴミ処理場にフィラメント加工施設を設け、ウェイストピッカーたちに対して、それを使うための訓練をしています。拾ったゴミから3Dプリンター用フィラメントが作れるようになれば、彼らはマイクロ起業家になるのです。そうなれば、彼らは同じ量のプラスティックから15倍の収入を得ることができ、彼らの生活は、社会的にも経済的にも向上します。

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プネの試験施設でボトルを処理するKomal。

Protoprintは現在、プネ(インド)に、現地のウェイストピッカーの生協、SWaCHと共同で、試験的にFilament Labを開設しました。ウェイストピッカーの家庭に生まれたKomalが、フィラメント加工と、地元のウェイストピッカーのネットワークから集められるHDPEの管理を行っています。

Protoprintの次の目標は?

現在は5つの色のフィラメントを作ってますが、あと半年の試験機関中に、いくつもの市販の3Dプリンターを使ってフィラメントのテストを行う予定です。2014年の中頃には、3ミリと1.75ミリのフィラメントの販売を開始したいと思っています。ゴミから富を、というのが、もう何十年間にもわたってウェイストピッカーの合言葉になってきました。Protoprintは、それに本当の意味を与えることになります。

– Anna Kaziunas France and Sidhant Pai

原文