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2014.04.11

Knowable:ハードウェアエンジニアのための協力サイト

Text by kanai

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人はどうしたら、協同してハードウェア製品を作れるだろう? Simon Höherと彼の仲間たちは、その疑問に答えようと、新しいオンラインプラットフォーム、Knowable.orgを開設した。

Knowableはウェブサイトだ。一見すると、よくある普通のプロジェクト共有サイトのようだ。自分で作ったプロジェクトを発表して、他の人がそれを見つけて、それからいろいろ学んで、コメントを書いたりシェアしたりする。そこで私は、Knowableのビジョン、何を目指しているのか、さらに、よりよいハードウェアを作る人たちが、もっと協力しやすい環境について、Simonに聞いてみた。

今のところ、Knowableはハードウェアプロジェクトの発表の場となっている。ユーザーはデザインファイルやビデオや写真をアップし、どのようにして作ったかを語る。また、他のクラウドファンディングや販売をのためのプラットフォームを補間するものとしても利用できる。

他のプロジェクト共有サイトでは、それを作るための手順を解説したり、回路を作ったり、パーツをプリントしたり切削するのに必要なファイルを提供できる。協力して何かを作ることもできる。Instructablesでは、わかりづらい点を作者に質問したり、改良を提案したりできる。Thingiverseでは、改造によるリミックスという考え方が通用している。これらのサイトでは、ユーザー同士のコラボレーションが、複製の変異という進化的な形で促されている。だが、Knowableのアプローチは違うとSimonは言う。

ここに、製品かアイデアかコンセプトがあったとします。それを複製する方法を教えるのではなく、ここにスケッチや設計図や部品やインターフェイスパーツがありますと伝えるのです。するとあなたはそこに加わって、こう言います。ここを変えたほうがいい、とかね。なので、それはリニアな複製プロセスではないのです。

LUUV - The first plug & play camera stabilizer

Knowableで公開されているカメラスタビライザー ‘LUUV’

ハードウェアスタートアップのためのコラボ

ハードウェア系のスタートアップが直面している問題は、ソフトウェアのスタートアップが抱える問題とは異なる。少なくとも規模の差がある。従来型の製造業とも違う。ソフトウェアとハードウェアの垣根を越えて、専門家のチームをいかにして結成するか。チームのメンバーが世界中に散らばっている場合に、実体のあるプロジェクトにどう取り組めばいいか。だから面白いのだとSimonは話す。

Knowableの2つめの部分は、プロジェクトについて学んだ後のステップですが、実際にいろいろな人たちがチームを組んで、インターネット上でハードウェアをデザインし、イテレーションを行います。

参加者たちは、スケッチやデザインファイルを共有するだけでなく、ワークフローや作業の管理、ロードマップの共有、新しい参加者の募集なども行う形を、彼は思い描いている。

それはプロジェクトのプロトタイピングやイテレーションの段階で有効です。オーケー、これが最初のバージョンだ。どこを改良したらいいと思う? 誰かできる人はいる? と聞くわけです。または、こんなプロトタイプがあるんだけど、電子回路の部分が弱いんだ、と積極的に助けを求め、仲間を募る。

もちろん、ソフトウェア開発の世界では、ネット上で共同開発するためのツールはかなり成熟している。Knowableは、そうしたツールを補間するものだとSimonは考えている。

モノのインターネット用のデバイスを作るとしましょう。そうしたデバイスには、ソフトウェアまたはコードが含まれていて、共同開発に最適な場所は、おそらくGithubでしょう。工業デザインやCADファイルの場合は、GrabCADです。Knowableでは、もっとハードウェアプロジェクトの屋台骨となるものを提供したいと考えています。すべてのリソースをつなぎ合わせる場所となって、全体を細かい部分まで見渡せるところです。

Do-It-Yourself Bicycle on Knowable
Knowableで公開されているDo-It-Yourself Bicycle

ソフトウェアからハードウェアへ、そしてまた戻る

ハードウェアのエンジニアは、ソフトウェアのエンジニアを羨ましく思っているだろう。突然の大量発注に追われるソフトウェアエンジニアの怖い話も聞くが、Kickstarterで多額の寄付を獲得して製造が間に合わないといった話はもっと聞く。ハードウェアはまったくの別物だとSimonは言う。

アプリ開発は、最初は大変でしょうが、ひとたび完成してアプリストアで販売を始めて、10万ダウンロードもあればハッピーです。しかしハードウェアの場合は、いいアイデアを思いつき、その途端に10万人の人から欲しいと言われたら、非常に困ることになります。

しかし、ハードウェア系のスタートアップがこれだけ増えた理由には、その2つの世界の融合がある。ソフトウェアのハードウェアへの統合、そう、モノのインターネットだ。そして、ハードウェアのエンジニアは、今また新しい問題に直面している。それは、かつてソフトウェアのエンジニアを悩ませていたものと同じ問題だ。接続されたデバイスにパワーを与えるクラウドサービスの構築と運営だ。そして、どのようにして人に、ハードウェアを伴うインターネットのサービスへ投資したいと思わせるかだ。

Open Mirror, on Knowable
Knowableで公開されているOpen Mirror

ThingsCon

Knowableとその参加者がベルリンで開催されるThingsConで見つけようとしているのは、そんな新しい世界だ。ThingsConは、5月にベルリンで開かれるハードウェアビジネスの未来を考える2日間のカンファレンスだ(私は招待券をもらったので取材にいくつもりだ)。

多くの講演者の中には、インターネットに接続するプリンター、Little Printerのメーカー、Bergcloud(元BERG)のCEO、Matt Webbがいる。彼は、いかにして独自のクラウドサービスを構築し、Little Printerができたときにあってほしかったクラウドサービスにビジネス全体を移行させていったかについて話をする。

オリジナルのIoTインフラプラットフォームとコミュニティーであるPachube(現Xively)の創設者、Usman Haqueもクラウドサービスについて語る。そして、ハードウェア系インキュベーターであり投資プログラムであるHighway1のBrady Forrestがハードウェアの新しい世界についてまとめる予定だ。

その他にも、Alexandra Deschamps-Sonsino(Good Night Lamp)、Bethany Koby(Technology Will Save Us)、Reto Wettach(Fritzing)、Gawin Dapper(Phonebloks)などが講演を行う。また、開催中はワークショップも行われ、ヨーロッパのMakerが集い、学ぶための最高の機会になるだろう。Simonによると、そこではこんなことが話し合われる。

製品のアイデアを思いつき、デザインをして、スケーリングを行い、資金を集め、ハードウェア会社を立ち上げるために必要な条件は何か? 今、私たちの前にある問題は何か? 将来はどんな問題が起きるのか?


Knowableのサイト:knowable.org

ThingsConは2014年5月2〜3日、ベルリンで開催される。チケットと詳細はこちら:thingscon.com/


– Andrew Sleigh

原文