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2014.06.10

病院でMini Maker Faire

Text by kanai

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健康をメイクしよう! 2014年5月28日水曜日、我々がブルックリンのMaimonides医療センター Mini Maker Faireに到着したとき、そんなバナーが掛けられていた。50年前、この同じ病院で、エイドリアン・カントロウィッツ医師はカナルストリートで買ってきた電子メトロノームを改造して、世界初の埋め込み型ペースメーカーのプロトタイプを開発した。改造したAMトランスミッターで、もっとも低い周波数に合わせてペースメーカーの動作のデバッグを行い、病院の心臓移植手術の先端的な研究を推進させた。

この創設100年になる病院の、健康に関するメイキングを行う精神は今も生きている。病院スタッフは、Nurse Scholarsプログラムのコミュニティのリーダーシップの下で、病院で開かれる初めてのMini Maker Faireを実現させたのだ。病院は、私たちのMIT Little Devices LabMakerNurse programと密接に連絡を取り合いながら準備を重ねた。そして、病院中、さらに地元の健康系Makerたちを集め、医療技術や日常的に利用されているプロジェクトを展示した。

それでは、世界初の病院でのMini Maker Faireがどんな様子だったのかを紹介しよう。

シミュレーションマネキン

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まずは、Center for Clinical Simulationで使われている身長180センチの等身大自動医療シミュレーションマネキンが運び込まれてきたとき、これが普通のMini Maker Faireとは違うということを感じた。これは、「病院のベッドをリメイクする」という展示の一部として持ち込まれたものだ。病院のベッドを、どうしたらもっとよいものになるかを、お客さんにアイデアを出してもらうという催しだ。このシミュレーション環境は、健康の増進にとって非常に重要なものだ。アイデアを生身の患者で試すことはできないからだ。ロボットで試せばいい。このMaimonides病院では、Make精神のある医師や看護師が、実際の患者で試す前に、アイデアの実証や訓練をロボットで行っている。

NYSCIのクイーンズ地区のMakerspaceからはベテランMakerたちが昼の部に我々と合流し、紙の基板作り、大規模プロトタイピング、手縫いの基本講習などを手伝ってくれた。裁縫技術と、外科医の縫合技術との交流が面白かった。

なぜ病院でMini Maker Faireなのか? 健康を取り戻すこと

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DIYAbility、デラウエア大学のGalloway Lab、そして我々MITのチームは、DIYと医療技術がMakerの手に戻りつつあることを訴えた。医療でのイノベーションは、Makerのアイデアから生まれて、少しずつ磨かれ、製品化されるというパターンが多い。なので、Maimonides医療センターの看護師、Kelly Reillyが、我々のMakerNurseプロジェクトを進める医師が5月にMini Maker Faireを開きたいと申し出てきたとき、私たちは興奮した。私たちは病院のスケジューリングについて学ぼうとしていたところなのだ。

Mini Maker Faire:昼勤と夜勤

病院は眠らない。患者が眠っている間も活動している。なので、すべての病院スタッフが参加できるよう、昼の部(午前11時から午後4時)、夜の部(午後8時から深夜まで)の2回のセッションを行うという異例の形になった。これなら、夜の8時半から翌朝の5時半までのシフトのスタッフも参加できる。その日は大量のコーヒーを飲んだ。普段の日の、寝る時間を少し過ぎた子どもたちもやって来た。病院の機器にMakey Makeyを貼り付けたら、みんな大喜びだった。

歴史的なMakerたち

ある展示では、3Dプリンターやレーザーカッターなどの最新のプロトタイピングツールと、昔ながらの市販品のハッキング術を使って1920年代から1950年代にかけて作られて看護用品のリメイクを行った。なかでも面白かったのは、1955年のStatus Updateのような「ナースロケーター」サインだ。

腫瘍病棟のレゴ

Victor Tyは、昼は腫瘍病棟の看護師、1日おきにレゴマスターになる。彼は、放射線治療のためのリニアアクセラレーターの改良で来訪者を驚かせている。重度の小児患者に、この見るからに怖そうな大きな機械での治療の大切さを教えるのが目的だ。この機械の働きと、それが病気をどのように治してくれるかを理解すると、子どもたち、とくに感覚が鋭く好奇心と知識欲が強い子どもたちは、安心して治療を受けられるようになる。

ホットタマリ、ジェリービーン、プラズマ:10歳以下の子どものためのDIY医療シミュレーション

Child Life Servicesのメンバーのひとりは、治療を受けることで体がどう変化するかを説明するための、さまざまなツールをデモンストレーションしていた。コーンシロップ、ホットタマリ(キャンディー)、ジェリービーン、着色料をビンに入れて混ぜ合わせると、感染症にかかった体の血液が病原菌と戦う様子を表現できる。私には軍医療のために高度なシミュレーションシステムを開発している友人がいるが、これは今まで見たなかでも最高の(そして最安の)血液系の視覚化だ。子どもたちが自分で作ることもできる。これこそ、健康メイキングだ。

交換、ブレインストーム、ツール、ティンカリング

Maker Faireは単なる展示発表会ではない。物やアイデアを交換する場所でもある。Maimonides病院は、まさにそんな場所となった。新生児集中治療ユニット、分娩ユニット、緊急治療室、手術室、術後集中治療ユニット、心療部門などなど、病院中と近隣病院のあらゆる部門から介護スタッフが集まり、私たちが健康のメイキングについて語り合うとどのようなことが起きるのかを、私は初めて知ることができた。Raspberry Piのカメラで体の動きをモニターできないか? 加速度センサーは十分に小さいのか? 安いのか? Sugruをあげよう、かわりにサージカルテープをあげよう。持続的陽圧呼吸(CPAP)マシンのこのタイプの留め具は3Dプリンターで作れるのか? 鋳型成型のほうが柔らかくできるか? AppInventor用のアプリを自分で作れないか? それを使って怪我のモニタリングシステムが作れないか? DIYAbilityがアクセス用回路を使ってまたオモチャをハックしているが、その導電性生地をベッドに使えないか? ホールのこの位置にMakerNurse Technology Crash Cartを持ってこられないか?

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最後に、Maker看護師、Maker医師、Maker介護士、Maker患者たちと協力して活動している健康メイキングの研究者である私にとって、この会話は音楽のように心地よかった。そして、この会話の向こうに、このMini Maker Faireを通じて、病院内でこれからも継続的に作られていくプロトタイプやデバイスが見える。それは、私たち自身の手で、治療も装置の開発も行えるのだということを約束してくれる。病院での私たちのチーム、研究室、DIYAbilityやNYSCIの友人たちは、どんどん気分が盛り上がっている。次回の病院でのMini Maker Faireをお楽しみに。それまで、今回の写真をご覧いただきたい

– Jose Gomez-Marquez

原文