Crafts

2014.07.11

クレートスタッキング:びっくりDIYスポーツ

Text by kanai

Photo: John Orbon/Park Day School
写真:John Orbon/Park Day School

Liam McNamaraは、名前からしてクレイジーなDIYスポーツ、クレートスタッキング(箱重ね)の提案者であり推進者。彼は倉庫などでのイベントやEast Bay Maker Faireでこの競技を主催してきた。会場にはロープなどの登山器具が完備され、競技者が何十フィートもの高さに牛乳のケース(クレート)を積み上げながら登っていく間に、巨大なジェンガのようにクレートが崩れても安全なようになっている。MAKEは、このゲームの参加方法や、頂上からの眺めについてMcNamaraに話を聞いた。


MAKE:面白そうだけど、ちょっと怖いですね。上に登ったときの感じはどうですか?

McNamara:とても楽しい気分ですよ。じつに単純な競技ですが、友だちの声援も聞こえなくなり、地面のことも気にしなくなり、他のことは一切考えない集中の極地に到達できます。タワーのほんのかすかな動きにも神経を集中させ、揺らさないように、そして、いつタワーが崩れ落ちてもおかしくないという事実を踏まえつつも、体はリラックスした状態を保つようにしなければなりません。

上に登れば最高に高揚した気分になります。ヨセミテの岩壁を登った勇敢なロッククライマーたちにも挑戦してもらいましたが、その年に登ったなかでいちばん神聖な気持ちになったと言っていました。大変に刺激的な体験だからです。それは、落ちるかどうかという問題ではなく、いつ落ちるかという問題です。みんな落ちます。それも、思わぬときに落ちるのです。風向きがちょっと変わったときとか、タワーが彎曲してしまったとき、突然、爆発的に崩れ落ちます。クレートは四方に飛び散り、気がつくと自分は6メートルの空中にロープで吊り下げられています。最高にスリリングです。

ルールはありますか? 公式でも非公式でも。どうやるのです?

いろんなやり方があります。我々が作ったひとつのルールは、うんと面白くするために考えたのですが、何段重ねたかを数えるために、頂上に立たなければならないというものです。これは、我々のハウスルールで、私たちの倉庫で行うときにはそうしています。これはクレートの積み上げを完了したという合図でもあります。上に立って、また元の位置に戻ってクレートの積み上げを続けられる人は非常に希です。だから、ある時点でもう十分だ、ここで止めておこうと決断して、立ち上がるわけです。

タワーの頂上に登って、両手を放して立ち上がったときは、本当に勝利を実感できる瞬間です。頂上からの素晴らしい写真もいろいろあります。逆立ちをした人もいました。ほんとにすごかった。たいてい、タワーの頂上に立った勝利の瞬間の直後にタワーは崩れます。いつだってそれがエキサイティングな瞬間です。そこからさらにクレートを積み上げるのは至難の業です。

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ヨーロッパでもやっている人がいるとか。他の国でもやっているところはありますか? 流行ってきていますか?

もっと多くの人にやってもらいたくて、cratestacking.comを立ち上げました。とても楽しいゲームだし、コミュニティが育ってほしいからです。国際的に高さを競ってほしいですね。高く積み上げたクレートの上に立った映像や写真を送ってほしいと思ってます。私が友だちとこれを始めた当初は、14段ですごいと思っていたのですが、次にやったときは、20段を積み上げた人が登場しました。私たちが想像していたよりも高いところまで行って、ビックリでした。そして現在、30段に届こうとしています。最高記録は29段です。

私たちはもっとファンを増やしたいと考えています。みんなに実際にやってもらって、うまくなってほしいんです。練習すれば、もっと面白くなるはずです。初めてやる人たちの様子を見るのは、とても面白い。でも、とにかくやってみて、練習を重ねないことには、本当の難しさがわかりません。

実際に行う際に注意すべきことは?

たくさんあります。私はロッククライミングをやっていたので、実際の山を登るときと同等の安全基準を考えています。まずはトップロープの設置が必須です。私は倉庫でやっているので、屋根の梁やクレーンからロープを吊り下げています。どこにでもロープが掛けられるので、うまい具合にできます。

きちんとしたビレイヤーがいる場合は、危険なのは、むしろ崩れてくるクレートのほうです。しかし、ビレイヤーも崩れてくるタワーの真下にいるわけですから、とても危険です。そこにはもう1人、クレートラングラーという、登る人にクレートを渡す役割の人もいます。この2人は、タワーが崩れたときに落ちてくるクレートの直撃を受ける恐れがあります。そのため、ヘルメット着用区域を設け、そこには観客は入れないようにします。クレートが6メートルとか9メートルに達すると思われるときは、半径6メートルから9メートルを立ち入り禁止とします。

テクニックとか戦略とかありますか?

クレートを積み上げるときに、クレートの手で持ところの穴につま先を入れるのがけっこう難しいんです。体の大きい人ほど難しい。子どもは足が小さいので、穴にうまくつま先が入ります。ロッククライミング用のシューズは、つま先が小さくできていて、小さな穴に入れやすく、都合がいいです。それから、クレートはすべて均質にできているわけではありません。穴の大きさも違えば、強度も違います。今では私たちはクレートオタクになってしまいました。できるだけヘビーデューティーなクレートを集めています。足の大きい人でも使いやすいように、頑丈で、穴の大きいやつです。

あとは、クレートを重ねるときの姿勢ですね。背の高い人は、上から二段目に足をかけて立ちます。背の低い人はいちばん上に立ちます。そして、片手でいちばん上のクレートを抱えるようにして体を支え、もう片方の手は、次のクレートを受け取るために空けておきます。ここがいちばん難しいところです。片手で体を支えなければならず、タワーは前後に揺れるからです。上からタワーに沿って真っ直ぐ下を見ると、揺れているのがよくわかります。どれだけタワーが彎曲するか、見ると恐ろしくなります。揺れる方向がわかれば、バランスをとりやすくなります。バランスをとりながら体を支えます。そして次のクレートを受け取り、タワーの頂上に何もない状態にしてクレートを重ね、私の場合はしっかりと上から押さえ付けて、クレート同士を固定します。それからゆっくりと足を新しいクレートに移します。その繰り返しです。

– Nathan Hurst

訳者から:ビレイヤーとは、ロッククライミングで登る人 (クライマー) とペアで行動する、安全確保を担当する人のこと。

原文