Fabrication

2014.08.20

政府が3Dデータを公開するThingiverse.govの時代がついに始まった!

Text by kanai

image: thingiverse user approx
画像:approx(thingiverseユーザー)

ホワイトハウスが政府機関に所有する3Dデータをどんどん一般公開せよとお触れを出したという記事を3月に書いた。そのときは、スミソニアンのX 3Dプラットフォームぐらいしか例がなかったのだけど、あれから国立衛生研究所が行動を起こして3D Print Exchangeをオープンした。そしてNASAも3D Resources pageの公開に踏み切った。この政府主催の3Dファイル普及レースで勝利するのは誰か?

とは言え、これはレースとは違う。さまざまな施設が3Dファイルを一般公開する方法を探っているのだ。こうした施設が先駆者となり、跡を追う政府機関のための道しるべを作ってくれるとよいと願う。

目標はどこに?

スミソニアン、米国立衛生研究所(NIH)、NASAは、みなオブジェクトファイルを簡単に公開できる方法を研究しているが、その目標はきわめて抽象的だ。彼らはどこを目指しているのだろうか?

大量のモノ

Pod 4 (Oversize Storage) at the Smithsonian's Museum Support Center (MSC)
膨大なスミソニアンのコレクションのひとつが3Dスキャンされるのを待っている。写真:Chip Clark(スミソニアン研究所)

どの3Dファイルも、その価値は、直接一対一で対応していないまでも、対象となるものとの関連性にあることは明白だ。これらのサイトでは、利用者が簡単に目的のファイルを探し出せる工夫が必要だ。探しているものが明確でない場合でも、適切なファイルが見つかるようにすることも大切だろう。スミソニアン、NIH、NASAは、どれもすでに非常に多くのファイルを公開できる状態にあるからだ。

制限を最小に

Works produced by the government are automatically in the public domain.
政府によって作られる作品は、自動的にパブリックドメインに指定される。

3Dスキャンデータそのものには個別の著作権がないが、ウェブサイト上の3Dファイルに関する多くのものに著作権が発生する可能性がある。著作権で守られるオブジェクトやファイルの場合、これらの著作権は人々がそれらをできる限り自由に利用できるよう、自由にライセンスできるようにしておかなければならない。著作権で守られないオブジェクトやファイルの場合は(これにはアメリカ政府が作成するすべてのものが含まれる)、サイトでは、それらがパブリックドメインであり、適正な利用を奨励するように示しておくことが大切だ。

さらにそれらのサイトでは、アクセスに条件を付けるような使用規約などという言葉は使うべきではない。使用規約は、本来オープンなはずのファイルへのアクセスを規制するズルイやり方だ。素晴らしい公共リソースになりたいのなら、そんな態度は避けるべきだ。Open Government Dataの最良実施例で、情報をできるだけオープンにするためのガイドが示されている。

オープンでスケーラブルに

This baby firefox loves open standards and so should you.  Image courtesy Mozilla.
このファイヤーフォックスの赤ちゃんもオープン規格が大好き。みんなもそうなろう。画像提供:Mozilla

外から口を挟むのは難しいが、アメリカ政府にはそうした精神が生きているし、そうした文化がある。プロジェクトやイニシアティブには牽引力があり、すぐに政府の他の部分が集まって仲間に加わろうとする。だから、こうしたサイトが模範となることが大切であり、他の政府機関が簡単に真似できるような形にするべきなのだ。

ある意味これは、最良の実施例を作ることでもある(たとえば制限が最小に抑えられているといった)。またこれは、オープン規格と、そのハードルを下げるための導入方法を追求することも意味する。そして、誰にでも簡単にデータにアクセスできるよう、また可能ならばそこへ貢献できるよう、使う人の身になった形のサイトを構築することも意味する。

簡単に使えること

flickr user Kevan
画像:Kevan(flickrユーザー)

もちろん、サイトが使いづらいようでは、すべてが台無しだ。ただ「機能している」だけでは、多くの人を呼び込んで素晴らしいコンテンツを自由に使ってもらおうというウェブサイトとしては失格だ。目的が定まっているなら、実際の使い勝手に気を遣うべきだ。

スミソニアンの取り組み

The Smithsonian has an interactive model viewer integrated into the site.
スミソニアンのサイトには、インタラクティブなモデルビューワーが組み込まれている。

スミソニアンのサイトは、今回の動きの中で一番乗りであり、スミソニアンの膨大な所蔵コレクションにアクセスできる可能性を示した。ほとんどのオブジェクトは展示ができずに倉庫に保管されたまま、一般人の目には触れないものだ。だから、それらをスキャンしてインターネットで誰にでも見られるようになることには、大きな公的意味がある。

現在のサイトでは、たとえばWoolly Mammoth の骨格Amelia Earhartのフライトスーツエイブラハム・リンカーンの顔などが驚くほど高画質で見ることができる。ただし、まだ20モデルほどしかないのが欠点だ。スタートとしては上出来だ。このまま頑張ってくれることを願う。

サイトは魅力的で使いやすいものでもある。しかし、専用システムで作られているようだ。悪いことではないが、拡張性や将来性の障害になりかねない。他の政府機関が導入したいと思っても、簡単にはいかない。

結論として、スミソニアンのサイトは、3Dオブジェクトをインターネットで共有する未来の姿として食指が動く。早く作業を進めて、フルバージョンを見せてほしい。

NIHの取り組み

This is a Aryl hydrocarbon receptor nuclear translocator-like protein.  But you already knew that.
これはアリール炭化水素受容体核内輸送体様タンパク質。すでにおわかりのとおり。

NIHの3D Print Exchangeは、スミソニアンのものよりもオープンなフレームワークで作られていて、いくつもの提供者から寄せられた多くのオブジェクトが揃っている。NIHは医療研究所であるため、結核菌タンパク脱臼した肩NIHが正確であると認めた正確な医療モデルが揃っているのは当然だが、驚くべきことには、ユーザーから提供された漫画化された結核菌や自作研究装置(NIH公認の3Dプリント可能な脳スライス器だって? こちらを見て欲しい)

これらのモデルは、手術計画、教育、研究の役に立つ。プラットフォームそのものはユーザー同士の共有、コメント、リミックス、モデルの投稿ができるようにデザインされている。こうした機能によってサイトを中心にコミュニティが発達し、サイト自身も成長することが期待される。なかには、生の研究データから医療用モデルを作って、より大きなコミュニティで公開しているユーザーもいる。

3D Print Exchangeはオープンフレームワークで作られているため、他の政府機関がこれを応用して彼らの3Dデータを共有するためのサイトが簡単に作ることができる。またオープンであることで、サイトを改良したり機能を追加するといったことも簡単だ。Print Exchangeは、政府が彼らの3Dデータを使った強力なコミュニティを作ろうとしたらどうなるかを教えてくれるものとなっている。

NASA の取り組み

NASA's 3D scan of the asteroid Eros is pre-split to make home 3D printing easier.
NASAの小惑星エロスの3Dスキャン画像。家庭用プリンターでプリントできるよう、あらかじめ二分割されている。

NASAの3D Resourcesサイトは、スミソニアンとNIHの中間型と言える。限られてはいるが(非常にクールな)オブジェクトの数はスミソニアンよりも少し多い。なぜなら、スミソニアンでは実際の物を3Dスキャンしなければならないのに対して、NASAのオブジェクトはすでにコンピューターのレンダリング画像かスキャンデータとして存在しているからだ。

宇宙船の部品小惑星だけでなく、火星のクレーターのスキャンデータなどもある。残念なのは、アポロ計画で月面に残した靴跡の写真はあるものの、少なくとも今のところは、プリント可能な3Dデータにはなっていないことだ。NASAのサイトは基本的には一方向にデータの提供を行うが、ごく一部の投稿者にはオープンになっている。

政府が所有するデータのオープン化を期待する人にとって、NASAのサイトのトップに書かれている文章は鳥肌ものだ。

「このリソースは、すべて自由にダウンロードしてご利用いただけます」

政府が作成した作品は、著作権による保護にはそぐわないが、政府系ウェブサイトでは、なんらかの使用上の制限をかけることが珍しくないオープンガバメントのデータの原則ではそれを戒めているのだが)。NASAは、そこを最初にクリアにしたと言える。そのサイトで提供されているデータは誰でも無料で自由に使うことができると、わかりやすい言葉で書かれているからだ。より高画質な写真のガイドラインでは、言い訳のためのあれやこれやが多少はあると思うが、こうした包括的なメッセージは、他の政府機関の手本になるだろう。

成長の余地は十分にある

これら3つのプラットフォームは、より多くの政府所有の3Dオブジェクトデータを一般公開するための取り組みにとって、大きな第一歩となった。これらがそのまま成長して、改良され、コンテンツが増えることを願うばかりだ。

そのほかに言っておきたいのは、それぞれのプラットフォームのアーキテクチャにAPIを組み込んで欲しいということだ。サイトが発展すれば、より多くのデータが、より多くの人々によって、さまざまな使われ方をするようになる。そこにあるすべてのデータを確認できるようにするにはサイトのナビゲーション方法を洗練させることが大切だが、データに自動的にアクセスできる手段を持たせることで、サイトはよりパワフルになる。

政府の3Dデータを使いたいと思っている人たちにとって、当面、もっとも重要なこととはなんだろう? それは、サービスを使い始めることだ。それらは大きな政府機関のなかの小さなチームで運営されている。市民がそれを支援すれば、彼らにも励みになり、予算も多く付くようになるだろう。それはさらなる内容の充実とサイトの発展につながるのだ。

さあ、みんなでどんどん使おう!

– Michael Weinberg

原文