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2015.07.27

MFT2015出展者紹介 ─ 都会の小さな実験室で、自給自足の自動化システムに挑戦する「ナマケモノラボ」

Text by Noriko Matsushita

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ナマケモノラボは、自給自足システムを作るための実験室だ。ムラサキさんと山下大二さんは、当初、「手軽に野菜の自給自足ができないか」と、ベランダの家庭菜園からこのプロジェクトをスタートさせたという。

ただし、都心の住宅環境では、スペースや日照条件などが限られる。個人レベルで野菜の自給(あるいは半自給)を実現するには、いかに省スペース・低コストで、収穫量の増加と栽培期間を短縮するかが課題となる。また、平日は会社員として働いているため、農家のようにこまめに世話をすることができない。

そこで、LED照明やセンサー、循環型栽培などを駆使して、栽培を自動化し、センサーとカメラで環境と育成状況のデータを収集、管理するシステムを構築した。

現在は、ベランダの土耕栽培と室内の水耕栽培、菌床の3種類に挑戦しているそう。ベランダの土壌栽培では、 1人が必要な野菜の3分の2量の収穫を目指して作付計画している。この夏は、コンパニオンプランツ(共存作物)や好光性も考慮し、トマトやキュウリ、ナス、シソ、オクラ、バジルなどを栽培。水やりは、Arduinoや照度・温度・湿度センサーを用いた自作の自動水やり器で必要量を滴下する仕組みだ。

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日照や温度、湿度、品種に合わせて、適量の水を滴下する自動水やり器

さらに、ソーラーパネルを設置して、センサーの動力や、栽培状況をカメラで監視するための、スマホの充電に利用している。

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ソーラーパネルでスマホを充電しながら映像を配信

室内では、アクアポニックス(再循環型システム)で、ルッコラの水耕栽培とエビを飼育。水量の調整には、土壌栽培と同様の自動水やり器を応用している。水槽から3つの水耕栽培トレーにホースがつながれており、底面給水でルッコラやレタスを栽培。もちろん、エビも食用だ。

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底面給水装置は、発泡スチロールにプラコップを差し込んで作ったもの。写真右下の木箱では、キノコも栽培。中に菌床が入っており、レーザーカッターでカットした穴からキノコが生える

水耕栽培トレーの上部には、光量不足を補うため、アルミのフードに赤色LEDを設置。室内育成ながらも徒長(茎の伸びすぎ)することなく、青々と育っていた。

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本格的な植物育成灯は何万円もするが、LEDパーツだけなら2000円程度で手に入る

キノコの種菌の培養には、自作の簡易無菌室装置を使用。培養の初期は雑菌に弱いため、ある程度の大きさまで無菌状態で成長させることで成功率があがるという。

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プラケースに塩ビ管や空気清浄器を取り付けた簡易無菌室装置

当初は野菜工場のようなものを目指したが、人間の生命維持に十分な栄養素を得るには、バイオの知識が不可欠と判断。そこで最近は、遺伝子やたんぱく質培養の研究も始めているとか。

ナマケモノルームには、自作の遺伝子検査装置や、3Dプリンターで作った遠心分離機などがあり、工夫がいっぱいだ。

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簡易遺伝子検査装置。ケースの中に試料とゲルを入れて電流を流して観察する

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簡易遠心分離機用のドリルビットパーツを3Dプリンターで製作

また、アクアポニックスでより多種栽培を可能にするための、菱形十二面体によるドーム型のアクアポニックスシステムも作成中。将来的には、植物と魚だけではなく、虫の飼育も組み込む計画だ。また、隣接するブロックで育てられる植物の組み合わせをシミュレーションするプログラムも開発している。

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製作中の菱型十二面体ブロック。アクリル板と合板を組み合わせたものになる予定

MFT2015の会場では、このアクアポニックスシステムとシミュレーションプログラム、無菌室、遺伝子検査装置などを展示する予定。いずれも、100円ショップやホームセンターで手に入るものをうまく利用しており、すぐに真似できそうなものばかり。ナマケモノラボの実験室は、見学や参加も可能だ。詳しくは、ぜひ会場でふたりに聞いてみよう(宇宙・航空・サイエンスエリア E-03-03)。

─ 松下 典子

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