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2015.08.05

MFT2015レポート ― DIY農業(2)IoT、ロボット、オフグリッドを農業に活用

Text by Noriko Matsushita

身近なガーデニングや家庭菜園に役立つユニークな作品だけでなく、本格的な農業に役立つ作品もMakerたちは作り上げている。こちらはIoTだけでなく、ロボット技術あり、オフグリッド指向あり。どれも、実用化を目指す本格ものぞろい!

株式会社セラクの「みどりクラウド」は、温度(2系統)・湿度・照度・気圧・二酸化炭素濃度、土壌水分量の7種類のセンサーで計測したデータとウェブカメラの映像を、クラウドに送信する温室内環境モニタリングシステムだ。定期的に計測と撮影を行い、スマホやタブレット、PCから写真とグラフ表示で圃場環境の確認が可能。また、温度や湿度が正常値範囲外になると、メールやスマホのプッシュ通知でお知らせしてくれる。現在、農家を対象に無料モニターを募集中だ。

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7種類のセンサーがセットになった「みどりボックス」本体、クラウドサービス「みどりクラウド」、モニタリング用のアプリで構成

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アプリはPC、iOS、Androidに対応。写真と環境データの変化をグラフで表示する

稲作で手間がかかるのが除草作業。除草剤は使いたくないが、手取りでの除草は、時間も人手も足りない。ファブラボ浜松テイクスペースさんの「オープン合鴨ロボットプロジェクト」では、合鴨農法のように、除草剤を使わずに除草してくれるロボットをオープンソースで開発中。合鴨は田んぼの雑草を食べるが、合鴨ロボットは、田んぼの中をかき回して除草をする。現在はプロトタイプだが、実用化を目指して開発を進めているという。

Kamo
合鴨ロボットなら世話いらず。病気にもならず、衛生的

センサーやウェブカメラを設置するには電源が必要だが、多くの田んぼや畑は電気を引いていない。そこで活躍するのが、オフグリッドの太陽光発電装置だ。
SYNTONYの「SYNTONY III」は、持ち運びできる太陽光発電モジュールセット。災害時の家庭用蓄電池として開発されており、太陽光パネルは100W、頑丈なバケツのようなケースに入ったバッテリーは105Ahの大容量で、十分な出力を確保できる。モニタリングシステムへの給電、育苗の加温、自動給水装置などにも使える。

SYNTONY
太陽光パネルとバッテリーのセットで約10万円。車載もできるのでキャンプに便利

電力を使わない農業機器も、エコファーマーに需要がある。はらっぱ研究所は、知り合いの農家に依頼を受けて「横田式手動大豆選別機」を製作。これは埼玉県の横田農場の横田茂氏が考案した手動式大豆選別機で、ハンドルを回すと、大豆が転がり、大/中/小粒、くず豆やごみに自動で選別される。市販の選別機は約50万円するが、この選別機はローラーにビニールシートを流用するなど工夫したことで、材料費が約5万円におさまったそうだ。

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手作業では手間のかかる大豆の選別を自動化。回転に歯車を使っていないため、軽く回せる

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絶妙に調整された角度と、シートの摩擦で軽い豆やゴミだけが取り除かれる

この分野のMake熱は、これからますます高まっていきそう。次回のMaker Faireも楽しみにしたい。

― 松下 典子