Electronics

2016.01.13

オープンソースハードウェアにクローンが見つかった時

Text by kanai

Bare Conductiveは、同社製のTouch Boardマイクロコントローラーのクローンが出回っていることを知った。その体験をCEOのMatt Johnsonが語る。

TouchBoard_8658_clone

私たちのTouch Boardのクローンが出ていることを知ったとき、私たちは咄嗟に「なんだって!」と口にした。それに続いて口をついたのは「おやまあ……」だった。そして「確かめよう」ということになった。Electric Paintを数年間販売し、Touch Boardは1年ちょっとになるが、私たちは驚かなかった。むしろ興奮し、腹が立ち、興味を持った。みんなは自分の目でクローンとはどんなものかを確かめようと、画面の前に集まった。どこで作られているのか、いい品物なのか。みなさんも興味があるだろう。

そこで、私たちのTouch Boardとその偽物との見分け方をお教えしたいと思う。私たちが企業として偽物をどう考えるかについてお知りになりたい方は、LinkedInに書いた私の意見をご覧いただきたい。そこに私は、ハードウェアはそれほど重要ではない場合と、間違ったコピーをしているクローンについて語っている。結果を早く知りたい方は、“How to spot a clone”PDFガイドへジャンプしていただきたい。すべての話をお知りになりたい方は、ガイドの下の記事を読んでいただきたい。

TouchBoard_CloneSpottingGuide

数ヶ月前、スーパーユーザーで友人のGrumpy Mikeは、Arduino.ccフォーラムで、クローンと思しきものを発見した。彼は正しかった。彼はあるユーザーのプロジェクトを助けていたのだが、ボードが思ったように作動しなかった。ちょっと調べて、ユーザーから送られてきた写真を見て、それがクローンだとわかったのだ。彼は、喜ぶと同時に腹が立った。喜んだのは、コピーが現れるまでに価値ある製品になったからであり、腹が立ったのは、誰かが偽物を作ったからだ。私たちが発見したそのTouch Boardは私たちの製品とそっくりだった。私たちの商標であるロゴを使い、なんと私たちが製造したと謳っていたのだ。これは重大な問題だ。このメーカーは、私たちの許可を得ることなく、私たちの製品を真似している。彼らは私たちのコミュニティに、それが本物であると思い込ませようとしている。

Touch Boardはオープンハードウェア製品だ。オープンハードウェアには、自由にプロトタイプを複製できるという大きな利点があるが、その開発者のクレジットを入れるという約束事がある。私たちのデザインに改良を加えて、特定の目的に即していなければならない。私たちはプリント基板を作るためのファイルを提供している。また必要なコードをすべて私たちのGitHubで公開している。私たちは苦労してこのボードを開発し、その結果をみなさんにも利用できるようにしている。Touch Boardは、Jim Lindblom、Bill Greiman、Bill Porter、Micheal Flagar、Arduino、Atmel、Freescale、そして Kickstarter寄付者の努力によって作られた。彼らなくして、Touch Board は存在し得なかった。

しかし、当然のことながら、オープンハードウェアといえども、それは知的所有権や登録商標などの法的フレームワークを緩和するものではない。この観点から、クローンの製造者は、次の2つの点で違法と言える。私たちのベンダーIDを使っていることと、私たちの商標を使っていることだ。ベンダーIDは、コンピューターに接続したときに、何が接続されたのかを知らせるものであり、その製品の信頼性、安全性、トレーサビリティーを保証するものだ。ベンダーIDは、国際標準に基づいて動作する完全な製品を作るための投資だ。クローンはみなさんに嘘をついている。そしてみなさんのコンピューターに嘘をついている。

私たちのベンダーIDが使われていることには腹が立つが、私たちの名前やロゴが使われることには、もっと腹が立つ。私たちは、絶え間ないコミュニケーション、製品の改良、誠意を持って、ユーザーのコミュニティを育てあげてきた。実際にそのクローンを手にしてみたとき、ボードには私たちのロゴを少し変更したものが印刷されていた。私たちの名前を使うことは、直接の商標違反となる。これは、この偽物を買った人にとって重要な問題となる。私たちはMakerや顧客を助けたい。しかし、自分たちで作っていない製品のサポートまではできない。

ベンダーIDと商標に関する違反を別とすれば、これは安いTouch Boardなのか。いや、そうじゃない。みなさんは、本当にそう思っただろうか。私たちがクローンを手にしたとき、最初は、よくできていると思った。ハンダマスクは非常いにくっきりしているし、白い部分は白く、黒い部分は黒く、やり直したり、製造上の失敗の跡などはひとつもない。金のプレーティングは危険はほど薄いが、ボードはそれなりの設備を持つプロの環境で作られた水準の高いものだ。だが、ひとつだけ重要な欠点がある。せっかくこれだけ精巧にできているのに、このボードは作動しないのだ。ブートローダーがない。MIDIのリンクが間違っている。部品も怪しい。なのでこのボードは、絶対に作動しないのだ(具体的な欠陥についてはガイドを見てほしい)。

クローンは、安い価格で同じ機能を有することができるのか。できるだろうが、現実的ではない。Touch Boardが動くのは、私たちが入念に設計し、手抜きをしなかったからだ。Arduino Leonardoのパワーを借りた、安定した静電容量タッチと精度、MP3プレイヤー、MIDI機能、micorSDカードホルダー、LiPo充電器など、Touch Boardは大変に高性能だ。これだけの機能は安くない。部品にコストがかかる。とくに、メーカーが従業員に正当な報酬を払っていればなおさらだ。私たちは、みなさんに素晴らしいものを作ってもらい、互いに刺激し合えればと思っている。助け合いたいと思わない人たちが作った信頼性のないハードウェアのために、みなさんのプロジェクトが頓挫してしまうのを見たくない。

では、どうするか? 結論を言えば、もう手は打った。昔から、製造と販売の性質からして、偽物を抑え込むのは難しい(それには膨大なコストがかかる)。私たちは、弁護士を通じて書簡を送り、法的な対処に出た。しかし、私たちの最大の武器は、なぜ偽物が、企業にとって、ユーザーにとって、製品にとって有害であるかを説明することだ。ここでそれをさせてもらったので、次に進む番だ。私たちの過去をコピーされることを恐れてばかりいないで、未来を作ることに専念したほうがいい。

(日本語版編注:以下は「“How to spot a clone” PDFガイド」の抄訳です)


Touch Boardクローンの見分け方

Touch Boardが真似された! 2015年夏に、別のメーカーからTouch Boardの偽物が、私たちの名前で作られて出回っていることが発覚した。ガッカリした。それよりも腹が立った。Touch Board は誇り高きオープンハードウェアだ。しかし、クローンメーカーはその基準に従っていない。商標まで不法に真似されている。私たちは、Touch Boardが便利で信頼でき、刺激的なボードであるよう、一生懸命に作っている。だがクローンメーカーの製品はその基準に達していない。ここで、Touch Boardの偽物の見分け方をお教えしよう。

1) Touch Boardは32GBのMP3プレイヤーとして使える。microSDカードで音楽データを入れてやれば、それだけで音楽が聴けるのだ。クローンの場合は、そうはいかない。まずmicroSDカードスロットがない。さらに、レベルシフターの性能が低く音が悪い。オーディオコネクターの質も悪いため、すぐにダメになる。

2) これは私たちのロゴではない! Bare Conductiveの国際登録商標は、私たちの許可なくしては使えない。これはひどい。

3) Touch Boardはいくつもの国際標準に準拠している。公式に購入したベンダーIDもそのひとつだ。安くはないが、とても重要なものだ。コンピューターに接続したときに、本物のTouch Boardであると認識してほしいからだ。それによりコンピューターは、これが安全で信頼でき、トレース可能な製品であると判断する。クローンメーカーは私たちのベンダーIDまで盗んでいる。ということは、クローンを買えば、あなた自身もコンピューターも騙されることになる。そうそう、それにクローンのポリヒューズはコンピューターのUSBポートにダメージを与える恐れがある。

4) クローンは本物のTouch Boardよりも安い。なので、部品も作りも安っぽい。信頼できる確かな性能が欲しいなら、それなりの代価を払っていただく必要がある。本当に価値あるものには、値段以上の価値がある。

5) 金色の部分を見てほしい。これは単なる飾りではない。金は、長い間、錆びたり腐食したりしないので、Touch Boardの接点として最適と考えたのだ。導電性ペイントを塗ったり剥がしたりを繰り返しても、接点は保たれる。クローンの接点の金プレーティングは明らかに薄く、耐久性は低い。

6) 穴をよく見て欲しい。ビアがある。Touch Boardのデザインにとって、これは大変に重要な部分だ。ビアはテンティングという方法で保護されているが、クローンはそうなっていない。手間を省いているのだ。

7) Touch Boardの裏面は、そんなに黒くない。クローンメーカーはそこまでコピーする気力がなかったのだろう。見た目に美しい製品はユーザーを刺激し楽しませてくれる。クローンに欠けている部分だ。

8) Touch Boardは簡単にMP3プレイヤーや、USB MIDIコントローラーやMIDI楽器になる。それには、プログラムをして、2つの配線をするだけで済む。クローンはその部分の配線を間違えている。そのため、正常に作動しない。

9) Touch Boardにはオーディオガイドがあらかじめプログラムされている。クローンにはブートローダーですらロードされていない。なので、Arduino IDEからプログラムができないのだ。

10) Touch BoardのUSB入力とLiPoバッテリー充電回路は、どのような配線をしても安全なように、また高価なコンピューターを破壊しないように慎重に設計されている。クローンは安物の部品を使い、保護回路を簡略化してしまっている。何かあっても、彼らは責任を取ってはくれないだろう。

11) Touch Boardの金のプレーティングは、ボードの縁まで全体に施されている。導電性ペイントを使う際の配慮だ。クローンの縁にはプレーティングがないので、導電性ペイントで接続するのが難しい。

12) このマークが意味するのは、文字通り、品質の保証だ。私たちの製品がCEとFCCの検査に通ったことを意味している。Touch Boardは安全に使えるという証なのだ。電気製品にとって、これは大変に重要なもので、設計する段階から電気ノイズの問題を真剣に考えておかなければならない。クローンは安物のコンデンサーや部品を使っているため、電気ノイズが発生しやすい。クローンはCEもFCCもパスしないだろう。そればかりか、他の電気製品に悪影響を与える恐れがある。

原文