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2016.03.15

「WeDo 2.0」体験編:小学校3年生がブロックとプログラミングで「力」を学ぶ

Text by Noriko Matsushita

「WeDo 2.0」紹介編はこちら

筆者の小3の姪は、レゴブロックで建物や乗り物をつくり、ままごと感覚で遊んでいるが、勉強という感覚はまったくない。ロボットを組み立てて動かすことが、どのように理科の知識に結び付くのだろうか。カリキュラムパックを使って、いくつかのプロジェクトを試してみた。

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科学探索機マイロをつくるプロジェクトに挑戦

姪は、もともとレゴ好きのため、食いつきは抜群だ。すぐにケースを開けてパーツを取り出そうとするので、あわてて制止した。WeDo 2.0ではソフトウェアと一緒に使う。いつもの自由なブロック遊びとは異なり、プロジェクトに参加するのだ。

最初に、WeDo 2.0の紹介ビデオを見る。レゴのミニフィグキャラクター、マックスとミアの2人がプロジェクトの進め方をデモンストレーションするアニメーション動画だ。しかし、文字もセリフもないので、彼らの動きからやることを推測するしかない。大人からすると、ざっと文章で説明してくれれば早いのに、と思ってしまうが、子どもは食い入るように見て、もう1回再生してくれという。想像を膨らませることで、より興味をひく効果があるのだろうか。

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はやる気持ちを抑えて、まずはソフトウェアでデモを見よう

カリキュラムの順番どおり、科学探索機マイロをつくる「プロジェクトの入門」から始めることにした。4つのプロジェクトがあり、モーターやセンサーの役割、プロジェクトの進め方をひととおり学習する。

マイロは、スマートハブとモーターが組み込まれた2輪のロボット。長い首の先の目玉が可愛らしい。画面の手順を見ながら、イラストと同じ形のパーツを探し、黙々と組み立てていく。組み立て手順は29ステップと、なかなかの工程数だ。

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手順のイラストを見ながらブロックを組み立てていく

マイロの組み立てが完了したら、デバイスとBluetoothで接続する。ふたたびマックスとミアが登場し、ペアリング手順をビデオで説明してくれる。ちょっとした無線通信のリテラシーも身に付くわけだ。

次は、プログラミング。このプロジェクトでは、前に進む動きをプログラムするのだが、プログラミングが未経験でも大丈夫。サンプルプログラムが表示されるので、同じアイコンのブロックをドラッグ&ドロップして並べさえすればいい。

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サンプルプログラムのとおりにアイコンを並べればOK

プログラムが完成し、マイロが動くと、大人でもちょっと感動する。ここで、モーターとプログラミングブロックの数値の意味を説明すると、モーターのパワーや動作時間の数値、回転方向を変えて動きを試していたので、直感的にモーターとタイヤの回転の仕組みを理解したようだ。その後、前に進み、停止し、鳴き声のような音を発して少し後退し、画面に画像を表示する、といった探索ロボットっぽい動きをするプログラムに作り変えてしばらく楽しんでいた。

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完成したマイロ。続きのプロジェクトではモーションセンサー、チルトセンサーを追加する

このプロジェクトの所要時間は40分が想定されており、組み立ての時間配分は20分。しかし、レゴをもっていない子どもの場合は、もっと時間がかかるかもしれない。実際の授業では、パーツを探す人、組み立てる人、全体を指揮する人、などとグループで役割分担すると効率よく進められそうだ。

また、意外と時間がかかるのが片付け。せっかく組み立てたモデルを解体するのは忍びないが、次のプロジェクトに進むには、すべてのパーツをはずしてしまわなくてはならない。破損や紛失の可能性を考えると、授業の終了後に教員が片付けるほうが無難かもしれない。

ブロックとプログラミングで、さまざまな力の関係が見えてくる

2日目は、基礎プロジェクトの「引く力」をやってみた。テーマは“摩擦”。「摩擦ってわかる?」と訊くと、手をこすって見せたので、言葉の意味はなんとなく知っているようだ。今回はすでに要領がわかっているので、ひとりで説明を読み、組み立て、ペアリング、プログラミングまでスムーズに進んだ。

このプロジェクトでつくるプルロボットは、足をくねらせるようにグニャグニャと不器用に動く。どれも同じようなパーツを使うのに、それぞれモデルによって形と動きに個性があるのだ。デザインのうまさに感心する。

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小さな体のプルロボット。タイヤの回転軸が水平ではないため、ぎこちない動きだ

初期段階のプルロボットには、タイヤがなく、ホイールだけで荷物をひっぱる。最初の実験では、プルロボットが動かなくなる限界まで重りを増やしていく。

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レゴキャラクターが何人乗れるかを実験

次に、タイヤを付けて、動きがどう変わるかを実験する。姪の予想では、「もっとたくさんの荷物が運べる」。ところが実際にやってみると、プルロボットのスピードが速すぎて、あっという間にテーブルの端から落ちてしまった。そこで、プログラムのモーターのパワーの値を小さく変更し、稼働時間も短くして落ちないように調整する。速度と時間と距離の関係がロボットの動きとプログラムの数値から、目に見えてわかるのはおもしろい。

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プルロボットのプログラム。カウントダウンのあと、効果音を再生して動き出す

さらに、手持ちのレゴブロックと組み合わせて、ロボットの引く荷台にタイヤを付けて荷車に改造したり、車高を変えて安定性の違いを試したり、いろいろな実験を楽しんだ。

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荷台にタイヤや飾りを付け、さらに車を連結させ、パレード状態になった

「WeDo 2.0」では、レゴを自分で組み立てるだけでなく、プログラミングすることによって、機構と運動の仕組みがリアルに結びつき、問題解決するための論理的思考も鍛えられるようだ。理科の学習内容とスムーズにリンクするかどうかは、個人差があるだろうが、ぜんまい仕掛けのオモチャの車を使って説明するよりも、はるかに多くのことを学びとれるだろう。おそらく、教師や親、本人が予想する以上のことを体験できる、とても面白い教材だ。カリキュラムのプロジェクトだけでなく、手持ちのレゴブロックと組み合わせて、まったく違うロボットに改造して、いろいろな実験を楽しませてみたい。