Makerムーブメントでもっとも大きな挑戦であり、またチャンスであることに、いかにアフリカ系アメリカ人やラテン系のコミュニティを巻き込むかという問題がある。元建築家、ライター、プロデューザーであり、現在MITメディアラボに所属するColin “Topper” Carewは、Historically Black Colleges and Universities(HBCUs)と協力して、学生たちに作ったり発明したりする機会を作っている。先日、私はCarewにインタビューすることができた。そこで、アフリカ系アメリカ人やラテン系の人々がMakerムーブメントの潜在力に気づくことの重要さについて尋ねてみた。
「Makerムーブメントは、テクノロジーで自由に遊べる世界の敷居を下げてくれる可能性のある、数少ない機会です」とCarew は言う。「アフリカ系アメリカ人、ラテン系アメリカ人をテクノロジーの世界に呼ぶ込むときの最大の障害は、そこに触れる機会がないということです。メイカースペースはそれを提供してくれます。ボストンでは、かなりの数のメイカースペースがあり、多くのアフリカ系アメリカ人がそうした場所を利用するようになっています」
「作ることは、すべての人々に与えられるべき機会です。本当に幼いころから、若者を育て教えなければなりません。いずれ学校も参加することになるでしょう。私たちには学校が必要です。しかし、現在この国では、ほとんどのモデリングが学校以外の場所で実施されています。そういった場所には、幼い子どもたちは入れません」
「子どもたちが遊べて、体験できて、失敗ができる環境、問題解決の方法を学べる場所、アート性を発揮できる場所、絵の具の筆や楽譜と同じようにコードが使える場所、そうしたものが、より力強い、何にでも対応できる人間を育てるのです」とCarewは語る。「それが子どもたちの、自信と好奇心と能力になるのです」
HBCUsに関するCarewの話のポイントのひとつに、アフリカ系アメリカ人がツールにアクセスできたときに起こることがあった。「録音機材の小型化が起きたころを振り返ってみてください。今や、子どもでも録音デバイスが自由に使えます。その昔は1時間400ドルもしたものです。今はみんながそのマシンを持っています。私は、子どもたちが製作手段を手に入れたときから見ていますが、彼らは12の音階を使って発明を行いました。そのひとつがラップであり、またはヒップホップに発展しました。それは今やアメリカの産物になっています。その文化があらゆるものにインパクトを与えています」
去年の秋のWorld Maker Faireで、私はDJでヒップホッププロデューサーのJazzy Jayに会った。彼はDef Jam Redordingsの創設者のひとりだ。National Association of Music Merchantsの口述インタビューに応えて、製作スタジオを「ガレージや廃品の中からガラクタを引っ張り出して」作ったのだと話している。「すべて幼稚なものだった、それがオレにエレクロニクスの扱い方を教えてくれた。店に行って製品を買えるような金はなかったからね」とJazzy Jay。Maker Faireでは、彼はThudRumbleのDJたちと現れた。彼は私にこう言った。「このイベント、気に入ったよ。オレ自身もギークだから、どこを見ても素晴らしいよ」
Carewによれば、メイカースペースも子どもたちに同じ製作用ツールを与えられると言う。「そうしたコミュニティのおかげでツールが使えるようになって、コードを理解できるようになれば、子どもたちは爆発するでしょう。どうなるかわからない。でも、素晴らしいことが起きることは予想できます。それはある日、アメリカ特有のものとして認められるようになるでしょう。そうして、子どもたちを巻き込むムーブメントを推進することの価値が、素晴らしい、長期的な、生産性の高いインパクトをアメリカの文化、生産性、競争力にもたらすようになるのです」
アメリカでは、子どものためのメイカースペースは始まったばかりだ。私が会長を務めるMaker Educationでは、国内の51カ所の参加者の平均が、白人42パーセント、アフリカ系アメリカ人20パーセント、ラテン系18パーセント、アジア系14パーセントとなっている。
「HBCUsに話をしたとき、彼らにビジョンを、何が起きるかを示したんです」とCarew。「スペルマン大学では、若い女性たちが研究室のマイクにマウントできるカメラをデザインしていました。そして、彼女たちがデザインして製作した新しいカメラが850ドルのカメラと置き換えられました。その高いカメラは、今、床に積み上げられています。今では、どの学生も自分のカメラを欲しがっていて、ひとつ20ドルで買えます。だからMakerムーブメントは、長期にわたる生産性と利便性にとって重要なプラットフォームなのです」
アフリカ系、ラテン系アメリカ人の子どもたちのためのプログラムをいくつか紹介しておこう。
»The Parachute Factoryは、ニューメキシコ州ラスベガスのメイカースペース。ヒスパニック系、ネイティブアメリカンの子どもを受け入れている。
»Verizon’s Minority Male Makerプログラムは、マイノリティの男子中学生を対象とした夏のトレーニングプログラム。
»DIY Girlsは、ロサンゼルスのLuz Rivasが設立した、小さな女の子と女性のための、実践的なテクノロジー体験教室。
»The South End Technology Centerは、MITメディアラボのCenter for Bits and Atomsから派生した最初のコミュニティー Fab Lab。ボストンにある。
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