Electronics

2016.05.13

Raspberry Piに欠けていた暖かな真空管のサウンド

Text by kanai

Raspberry Piの人気のある使い方のひとつが、メディアプレイヤーにすること。いろいろなOSや、XMBCやKodiといったスキンによって、比較的簡単に音楽や映画を再生できる。Volumioのような音楽プレイヤー専用のバリエーションや、HiFiBerryのPiベースのボードのようなアドオンもいろいろ出てきている。そしてあるグループは、それをもう一歩進めて、ハイブリッド真空管アンプのアドオンで、暖かみのあるヴィンテージでアナログな音質をRaspberry Piに与えている。

このプロジェクトは503HTAと呼ばれ、12AU7または6922真空管1本と、ソリッドステートのIRL510 Mosfet回路でハイブリッドアンプを構成している。Raspberry Piの40ピンにマウントされる。Pi2、Pi3にも対応する。これには、24ビット DAC、ゲイン選択スイッチ、3.5mmヘッドホンジャックも装備されている。出力は500mWで、32〜300オームのヘッドホンをドライブするように作られている。または、プリアンプとしてステレオにつないでスピーカーを鳴らすことも可能だ。その場合は、ゲインスイッチを最低レベルにしておくことが必要だ。さもなければアンプが燃えてしまう。

503HTA-rev2

503HTA(Kickstarterでローンチされた)の開発者、Michael Kellyは、ロードアイランドのPi 2 Designにオーナーであり主任デザイナーだ。彼らは、たまたま見つけた文献からこのプロジェクトに着手しようと決めた。「ひとりのエンジニアが私の本棚で何かを探していたとき、1973 RCA Receiving Tube Manualを見つけたのです。そして彼が、私に真空管に関する知識を尋ねたものだから、60年代と70年代の子どものころに、真空管の設計をあれこれやっていたことを、たっぷり1時間話してやったのです。その数日後彼は、『うちではステレオDACとサラウンドサウンド出力ハットを作ったのだから、真空管アンプも作れるのでは?』と聞いてきました。最初は、また真空管を使うなんて考えには乗り気ではなかったのですが、その後調べてみると、彼らが気に入りそうな低電圧真空管のデザインがいくつか見つかりました。Bravo V2などは、実装が簡単そうで、コミュニティのフォーラムで話されているアイデアで改良もできそうでした。そうして、503HTAが生まれたのです」と彼は話している。

これは、私たちが初めて見た真空管拡張ボードだが、最初のPiベースの真空管アンププロジェクトというわけではない。ドイツのサイト、doc-diy.netに載っているTube Net Radioは、Raspberry Piとヴィンテージの真空管ラジオとの合体作品としてとくに面白い。オリジナルの回路を通して、インターネットのストリーミング放送が聴けるのだ。

503HTAのサウンドについて、Kellyはこう話している。「驚くほどいい音がします。驚くほど、というのは、私はとくに真空管サウンドのファンではなかったからです。(真空管が)こんな低電圧で駆動するなんて思ってもみませんでした。しかし、いろいろな種類の音楽を、とても簡単に、問題なく聞くことができます。これが、クラシックな『真空管サウンド』の特徴なんでしょう」

503HTAのKickstarterキャンペーンは、6月6日まで行われている。109ドルの早期オプションは残りわずか。その後は、149ドルになる。バッカーには、今年の7月から8月の間に出荷される予定だ。

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