Crafts

2016.11.22

[MAKE: PROJECTS] 蜂蜜を発酵させてミード酒を作ろう

Text by James Austin
Translated by kanai

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ミードは蜂蜜を発酵させて作る古代の酒だ。とくにスカンジナビアの上流階級で大変に珍重されていたが、ヨーロッパ、アフリカ、アジアへと広く行き渡った。今日それが、カクテルの技術として復活しようとしている。そこで今回は、ちょっと甘くておいしいミードの作り方を紹介しよう。キッチンで作れる。

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1. 蜂蜜を温める

蜂蜜を入れた容器を暖かい場所に置く。ヒーターの近くや風呂のお湯につけるなどして、蜂蜜を38℃にまで加熱して、柔らかくする。温めすぎないように気をつけよう。

2. 器具を洗浄する

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腐敗による失敗をできるだけ少なくするために、器具をきれいに洗っておくことが大切だ。まずは、4ガロン(約15リットル)ほどのミードを保存する容器だ。そしてミードが接触する器具のすべてを、匂いのない洗剤か過炭酸ナトリウムで、ブラシを使ってよく洗う(写真A)。そして、水でよく洗い流す(写真B)。カルボイ(carboy、発酵させるビン)を、長いカルボイ用のブラシでよく洗う。以前にそれで発酵させていた場合は、お湯と洗剤を使って、残っているイーストを徹底的に洗い流す。すべての器具を洗浄したことを確かめて、清潔な場所に置いておく。

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3. 発酵器を消毒する

材料を入れて密封するカルボイを始めとする器具は、余計な細菌や野生のイースト菌によって発酵を乗っ取られないように、よく消毒しておく必要がある。

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8リットル入りのバケツに6リットルの湯を入れ、消毒液の「Star San」(酸性の界面活性剤と食用洗剤を混合した液体)をテーブルスプーンに2杯混ぜる。これで、薄い泡状の液体が作れる。器具の表面にいる無用な細菌やイーストを一発で排除してくれる。そのうち450グラムほどをスプレーボトルに入れて(これはスポット的に消毒するためのもので、これがあると大変に便利なのだ)、残りの半分をジョウゴを使ってカルボイに入れる。

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カルボイをゆっくり回して、中のStar San溶液を全体に行き渡らせる。その後、Star San溶液はまた使えるのでバケツに戻す。アルミホイルをStar San液で洗い、それでカルボイの口をふさいで雑菌が入らないようにしておく。10分ほどしたら底に溜まったStar San液を外に出す。これを2回ほど繰り返す。乾燥したカルボイの内側には、水跡が残るが、これはまったく無害なので心配しなくてよい。美しきStar Sanの跡だ。

4. 蜂蜜、水、栄養素を混ぜる

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天然水7.14キログラムを量り、保存ポットに入れて、ヒーターの上で49℃まで温める(写真C)。その間、温めた蜂蜜を3.2キログラム、ボウルに移す(写真D)。

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ヒーターを止めて、湯に蜂蜜を流し込む(図E)。ボウルに蜂蜜が残らないように、ボウルを湯につけてよくゆすぐ(写真F)。必要ならば弱い熱にかけながら、蜂蜜をよく溶かす。

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蜂蜜溶液に8グラムのAcid Blend、7グラムのYeast Nutrient、5グラムのDAP(写真G)を混ぜてよく溶かす(写真H)。

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比重は1.100から1.105になっているはずだ。比重計を使って確認してもよい。(写真I)。

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このときの比重、全体の量、温度などを細かく記録しておけば、今後の役に立つ。ミード作りの名人になれる。

5. カルボイに移す

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カルボイを床に置き、口とキャップをStar San溶液で消毒する。ジョウゴについた水をよく切ってカルボイの口に入れ、消毒したカップなどで蜂蜜溶液をカルボイに移す(写真J)。ここで、2 1/2錠のCampdenタブレットを入れて消毒する。(写真K)

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カルボイのキャップの水をよく切り、カルボイに蓋をする(写真L)。ペーパータオルでカルボイの外側をよく拭き、暗くて涼しい場所に保管する。気温が15〜18℃に保たれるところが望ましい。ここに24時間置いて、中身を冷まし、Camden錠に含まれる亜硫酸塩がよく拡散するようにする(ここで急ぐとイースト菌を殺してしまうことになる)。

6. 発酵を開始させる

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Lalvin D47イーストを2袋、冷蔵庫から取り出し、室温に戻しておく(写真M)。カルボイのキャップを取り、Star San溶液に入れる。イーストの袋を破って、中身をゆっくりとカルボイに入れる。数時間で溶けるはずだ(写真N)。

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カルボイのキャップを元に戻す。殺菌したエアロックに、半分程度、Star Sanが溜まるようにする(写真O)。24〜48時間で泡が立ち始める。これが発酵が始まった合図だ(写真P)。この第1発酵は約1ヶ月続き、やがてイーストの活動は落ち着いてくる。

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警告:液体を入れたカルボイはとても重い。表面にStar Sanが残っていると手が滑って危険だ。移動するときは、カルボイ表面と自分の手をよく吹いて乾かしておこう。コンクリートの床の上の置くときは、かならずカーペットや段ボールなどクッションになるものを敷くこと。

7. イーストを攪拌する

ミードの発酵はゆっくり進むため、イーストのほとんどが底に溜まる。溜まったイーストは栄養分と接触しにくいため、1〜2日に1回、かき混ぜてやる。カルボイの底の近くを両手で持ち上げ、ゆっくりと液体をかき混ぜてやる。20秒ほどでいいだろう。

二酸化炭素が発生して、エアロックを通じて出てくる。そのとき、Star Sanも一緒に吹き出てしまうことがあるので、カルボイをよく拭き、エアロックに半分ぐらいStar Sanを補充する。そしてまた冷暗所に保管すれば、再び発酵が起きる。

注意:エアロックはよく乾いてしまうので、かならず新しいStar Sanを補充すること。

8. 2次発酵

4週間後、ミードとイーストの「おり」を分離するために、新しいカルボイに中身をラック(移動)するとよい。それを行うことで、長期間、ミードの風味を保つことができる。イーストにはまだ、あと2ヶ月ほど発酵を進めさせる力が残っている。

1センチ径のビニールホースを約180センチ用意し、サイフォンの原理でミードを移し替える。ミードが入ったカルボイを丈夫なテーブルなどの上に置き、消毒した新しいカルボイを床に置く。ミードを吸い出すときに口の雑菌が入らないように注意すること。新しいカルボイに消毒したキャップをして、エアロックをセットし、また涼しくて暗い場所に保管する。これで2次発酵が始まる。

9. ビン詰め

14週間ほどでミードの2次発酵が終わり、イーストが沈んで全体に透き通ってくる(あくまで私の体験上)。透明にする媒体を入れて2日ほど待ってもよい(詳しくはホームブリューの専門店に問い合わせるか、Ken Schrammの著書『The Compleat Meadmaker』を参照してほしい)。軽い味わいのデリケートな風味を出すには、この透明感が欠かせない。

清潔な道具を使って、よく洗って消毒した前のカルボイにミードを再びラックし、ビン詰に備える。ここで2 1/2錠のCampdenを入れてイースト菌を殺す。カルボイを持ち上げてゆっくりとかき回し、Campdenをよく溶かす。すぐにサイフォンを使ってビールビンか、キャップができるアメリカン・シャンペンボトルに移してキャップをする(写真Q)。

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さあ、これで友人や家族を美味しいユニークな飲み物でびっくりさせることができる。

謝辞:ミード作りを教えてくれたカリフォルニア州バークレイのOak Barrel Winecraftのみなさん。サンフランシスコの巣箱から蜂蜜を提供してくれたTrina Lopezに感謝します。

先々を考え

記録をつけること。手順を細かく記録しておこう(材料、分量、温度、発酵前と後の比重、エアロックの状態、pH、仕上がりの品質など)。こうすることでテクニックを磨き、よりよいミードが作れるようになる。最初の1回目も記録しておくことが大切だ。

混ぜてみる。ミードの変形として、蜂蜜に果物の果汁や、潰したぶどうや、モルトを混ぜるといった手法もある(それぞれに名前が付いている)。どれも長い歴史があり、自分であれこれ試してみるのも楽しい。透明で冷えたミードにミントの葉と、ちょっとの炭酸を入れたものは最高に美味しい。ショウガも合う。これは私の秘伝だ。

(日本語版編注:ミードのもっと簡単な作り方や他の発酵食品に興味のある方はMake:シリーズの書籍『発酵の技法』をご覧ください。また、ウェブ上には日本語のレシピも多数公開されています。最後に、発酵によって作った飲料のアルコール度数が1度を超えると酒税法違反になりますので、ご注意ください)

原文