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2016.11.16

内なるマクガイバーを発見するための本

Text by Lee D. Zlotoff
Translated by kanai

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英語版編集者より:MacGyver(冒険野郎マクガイバー)シリーズの作家、Lee David Zlotoffは、この「Make:」ブログでMakeShiftというコラム(2006-2011)を書いてくれたが、そのなかでは、身の回りのもので空想上の問題を解決する方法を教えてくれた。Leeの新刊は、Colleen Seifert博士との共著だが、博士は危機的状況をうまく切り抜ける方法を伝授している。今回は『The MacGyver Secret: Connect to Your Inner MacGyver and Solve Anything』の特別プレビューといこう。

マクガイバーは知ってるよね。危機においても冷静な男の代表格。機知と身の回りにあるもので工夫して、障害を乗り越える。絶望的な状況を閃きで打開する典型だ。しかも、楽しそうにそれをやってくれる。

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もちろん、マクガイバーはフィクションだ。しかし、誰だって何かの隙間に落としてしまった鍵をペーパークリップで吊り上げたり、高速道路で突然開いてしまいそうなボロボロの車のドアをテープでとめたりといった「マクガイバー」的経験はあるだろう。

とは言え、そう毎回追い詰められた先で天才的な解決策を思いつくとは限らない。毎回毎回だ。それほど機転の利く人間はどれらいいるだろう。どのくらいの人がマクガイバーになれるのだろう。いやいや待った。それは頭の良いシナリオライターが作り上げた世界だ。違う?

でも、どうだろう?

私の話:マクガイバーの秘密をどうやって発見したか

あれは70年代の後半だった。私はニューヨークで昼メロの会話を書くという、充実しながらも、どこか不満な日々を送っていた。当時妊娠中だった妻に、私は、我々の運命は、そして幸運は、娯楽の都ロサンゼルスにあると言い聞かせていた。二十代半ばの自信満々のときだ。昼メロの脚本で貯め込んだ財産を使って、その向こう見ずな計画を実行しすることにした。ロサンゼルスに知り合いはいない。芸能界にも誰一人頼れる人間はいなかった。それでも、我々は引っ越した。

それから数年、なんとかテレビの脚本の仕事にありつこうと頑張った。そして、そのとき2人の子どもの父親になっていた私の眼の前に、黄金の扉が開いたのだ。私はゴールデンタイムのテレビドラマの脚本スタッフとなった。それはいいニュースだった。

悪いニュースは、会話だけでなく、テレビ制作会社の要求に応えて、ほんの短い期間にストーリー全体やエピソードのアウトラインを考えたりと多くの仕事をこなさなければならなくなったことだ。正直言って、私にはその準備ができていなかった。

大変な重圧の下で新しいアイデアを絞り出す日々のなか、私はあることに気がついた。最高のアイデアを思いつくときは、たいてい、車を運転しているかシャワーを浴びているときだと。みなさんは、どうだろう?

そうした行動が功を奏していたのだが、最初は奇妙な癖だからなるべく慎もうと思っていた。どちらの行動も、生産的だとは言えない。どちらも仕事とは反対の行いだ。私も私が雇っている人間も、仕事というのはコンピューターに向かっていたり、それなりの仕事場でやることだからだ。

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とは言え、フォルクスワーゲンのハッチバックを運転してるときや、朝にシャワーを浴びているときに、決まっていろいろアイデアが涌き出てくる。私はすぐに、締切が迫ると、なんだかんだ言い訳を作ってオフィスを飛び出し、車に飛び乗るか、近くのジムに駆け込んでシャワーを浴びるようになった。そうして新しいストーリーや意外性に満ちたプロットを絞り出した。

当然のことながら、職場からしょっちゅう消えて、意味のない「おつかい」に出かけては、シャワーを浴びてさっぱりして戻ってくる私に関して、オフィスではよからぬ噂が蔓延した。ドラッグをやっているか女遊びに溺れているかと。どちらも、締切までに使える台本さえ書いていれば、ハリウッドでは許されることだった。芸能界とは、いいところだ。

さらに意味のある結果として、私にはひとつの疑問が付きまとうようになった。「運転したりシャワーを浴びている間、いったい何が起きているのだろう」というものだ。許される行動ではないが、そうすることで有効なネタが思い浮かぶ。車に飛び乗ったり、ハリウッド中をシャワーを探して走り回ることをせずに、同じことを起こせないものだろうか?

その時点では、私はこの奇妙で創造的なプロセスを何が引き起こしているのか、本当には理解していなかった。この曖昧で、しかし複雑な疑問は、自分にはまったく手の届かない問題とは言わないまでも、答は見つからないかもしれない。しかし、私は定期的にプロットやキャラクターから複雑なストーリーを練り上げている以上(それはうまく行っていた)、あの奇妙なパターンのことが少しでも解明できるかもしれない。そこで私は、なんとかしてそれを徹底的に調査してみることにした。

それから数年間、私はこの創造的プロセスの探求を始めた。そして、自分の中でいったい何が起きているのかを調べるため、いろいろなテクニックを試してみた。ドライブやシャワーの効果を確かめるために、もっと簡単で効率的な方法はないかを調べた(ガソリンも水も貴重な資源だからね)。

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そして運命の定めか、私はそのとき、“工夫の天才、マクガイバー”の試験シナリオを書いていた。それが私の中の最後のピースとなって、全体の絵が完成することとなり、あの神秘のプロセスの秘密が明かされることとなったのだ。それとともに、ドライブとシャワーによる閃きに代わる、もっとシンプルで有効な方法がわかった。私は即座に、いいアイデアを、どこでもいつでも、実質的に「オンデマンド」で出せるようになった。詳しい話は、またすぐあとで。

だが、もっとも大きな成果は、秘密を解き明かしたことではなかった! 私は内なるマクガイバーを発見したのだ。

今は、正直言って、当時は今ほど重大には考えていなかった。マクガイバーが、こんなに大ヒットするとは思っていなかったし、世界的に人気を集めるとは誰も考えていなかったからだ。まさか、オックスフォード英語辞典に「To MacGyver」(興味のある人は調べてみてほしい)などという動詞が載るとも思ってもみなかった。

また、それが私の創造したもの以上に誰かの役に立つとか、実際にそのネタが使われるなどとも想像できなかった。私など、ただのハリウッドの放送作家だ。知的ブレイクスルーを実現するような人間の集まりではない。しかし、私は秘密を暴いた。いつでも必ず、必要なときに最高にクリエイティブになれるプロセスを、ついに発見したのだ。

そして私は、30年間の作家生活の間にこの秘密に磨きをかけてきた。それは個人的にも仕事の上でも、まさに「転換」であった。

創造と問題解決のストレスは、ほとんど取り除かれた。そして、私は内なるマクガイバーから驚くほどの知恵を得ることで、いかなるプロジェクトや締切も恐れなくなった。

長い間に、私はこの秘密を友人や知人に気軽に教えてきたが、あまりの素晴らしさに、ほとんどの人は真剣にとらえてくれない。私たちが教わってきた問題解決の方法とは、まったく違っているのだ。まったくだ。

だが私の若き友人にして同僚のJaredに話したときは違っていた(本書の別の章で彼は自分自身の話をしてくれている)。Jaredはインターネットの会社を立ち上げるという仕事についている。そこで彼は、連続して起きる仕事上の問題に対処するために、あの秘密を使うことにした。

私と同様の転換的体験をしたJaredは、私のところへやって来て、それが素晴らしく効果的であったと報告してくれた。その秘密は、どんな仕事に対しても、いくらでも対応できると彼は論じた。それを使って私は原稿を書いているのだが、それ以上の力があるというのだ。

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私は心の中のスイスアーミーナイフを解放した。だが、そんなことはあり得るのだろうか。その他の友人や知人とさんざん話し合い、あの秘密の科学的な背景について調べてみた。私はこの秘密を、素晴らしいアイデアを考えないといけない人や大きな問題を解決しなければならない人たちに、広く教えてやるべきだと言われていたのだ。まさに、WWMDだ(What would MacGyver do?[マクガイバーならどうしたか?]という意味)。

「アハ」を導き出す科学

誰でも「真相を見抜く」経験をしたことがあるだろう。困難な問題に直面して、少し経ってから「アハ!」と気づくあれだ。Leeの場合も、仕事中にではなく、シャワーを浴びているときにブレイクスルーが起きるのはなぜかと、みなが思うところだろう。その答は、私たちの日常の「流れの中でリラックスする」ことにある。

問題を解決しているときの脳の活動に関する研究では、休んでいるときの脳の活動が拡散状態(集中の逆)にあることがわかっている。こうしたリラックスした状態では、意識の中で、通常とは違うつながりが築かれやすいようなのだ。この思考の「デフォルト」モード(デフォルト・モード・ネットワーク)が、私たちに努力することなく白昼夢を見させている(そしてしばしば、日中のほぼ50パーセントは、今していることとは関係のないことを考えている)。

真相を見抜く力(インサイト)を持つには、外部環境からの干渉を防ぐことだ。意識を内側に向けることで(目を閉じるか、ぼんやりと目を開いておく)、内なる思考の列車に集中しやすくなる。研究室では、インサイトが起きる直前には、瞬きが増えて遠くを見るような状態になることがわかっている。

面白いことに、心は、その彷徨っている状態をときどきしか気がつかない。脳の画像化の研究では、デフォルトのネットワークと実行管理システムは、「ぼんやり」している状態のほうが活発になっていて、心が彷徨っていることを意識すらしていないということが判明している。

車を運転していたりシャワーを浴びているときの心の「彷徨い」が、Leeの言うとおり、新しいアイデアを思いつくための準備をしてくれているのだろう。
—Colleen Seifert 博士

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『The MacGyver Secret: Connect to Your Inner MacGyver and Solve Anything』より許可を得て抜粋しました。本書の購入はmacgyversecret.comまで。マクガイバーとマクガイバー財団に関する詳細はmacgyverglobal.com まで。

原文