Fabrication

2017.02.01

カメラを内蔵した画期的なレーザーカッター、Glowforgeが間もなく出荷。待った甲斐はあった

Text by Matt Stultz
Translated by kanai

2015年5月、MakerCon Bay Areaの壇上にて、Dan Shapiroはボードゲームのデザインについて、そしてクラウドファンディングキャンペーンの成功について講演を行った。しかし、聴講者の中には、彼がここで爆弾を落とすことを期待していた。彼は、画期的なレーザーカッター、Glowforgeの製造会社を立ち上げようとしていたのだ。

Shapiroによると、ボードゲームのプロトタイプを作るためにレーザーカッターを買って使ってみたが、いろいろな欠点に気づき(ソフトウェアの悪さ、貧弱なデザイン、登録の問題など)、それがオーナーを何年間も悩ませているという。高くて使いづらいために、新規購入を渋らせる結果となっている。そこで、簡単に使えて数千ドル単位で価格も安いレーザーカッターを自分で開発しようと考えた。それだけでも夢のような話なのに、彼はさらに腕によりをかけた。Glowforgeにはカメラも内蔵されているのだ。

カメラのアイデアは斬新だ。切断中の材料を目で確認したり、デザインと素材をきっちり合わせたりできるだけでなく、マシン自体がオブジェクトを認識して、素材に合わせたセッティングをしてくれるのだ。さらに、ほとんどギミックな機能だが、素材上のスケッチをスキャンして、それに合わせて切断や彫刻もできるようになっている。ユーザーの手を煩わせることがほとんどない。

この発表は、インターネット上を野火のように広がった。そして戦略的なマーケティングが功を奏し、発表から30日間で、予約が2,800万ドル分も入った。9月に開かれたWorld Maker Faireの彼らのブースには、最初のプロトタイプを見ようと大勢の人が詰めかけた。

そこから遅延が始まった。もともと、2016年の前期に出荷されるはずだったものが、すぐに6月に変更され、4月には12月に、現在は2017年の3月から7月の間となっている。辛抱強く待ってくれている人たちに、彼らは素敵な見返りを与えたのだが、それでも文句は収まらなかった。数カ月前、私はShapiroに会って話を聞いた。もうすぐ出荷できることは確かで、私にレビュー用の1台を送ってくれると約束してくれた。数週間後、それが届いた。たしかに、これは待つ甲斐がある!

AngleClean

梱包を解くのは簡単だった。それほど重くはないが、大きいので、誰かに手伝ってもらうと楽だ。説明書に従ってコンセントを差し込み、セットアップを行い、最初の切断ができたのはたったの10分後だった。最初に起動すると、Glowforgeは独自のアクセスポイントを生成する。そこに接続すると、無線ネットワークの認証が簡単に行われる。ソフトウェアをインストールする必要はない。Glowforgeのウェブサイトにあるウェブアプリを使ってマシンをコントロールするようになっているのだ。だからソフトウェアは常に最新版ということになる。

Camera

BedTube

レーザーカッターの設定に慣れている人なら、Glowforgeでびっくりすることがあるだろう。レーザー管の冷却システムも、排気ブロワーも本体に内蔵されていて、電源も一緒になっているのだ。つまり、1本の電源コードと排気管だけで済むというわけ。

Chiller

ソフトウェアを起動すると、すぐにカットできる10種類(今後もっと増えるだろう)のデザインにアクセスできるようになる。説明書では、それを使ったウォークスルーがあり、シンプルで便利な定規が作れる。

FirstCut

ソフトウェアは、彫刻用にはいくつかのファイル形式に対応しているが、ほとんどのレーザーカッターと同様、メインはベクター画像だ。Glowforgeの場合はSVGとなる。私は、Inkscapeのファンなのだが、SVGにうまく対応しないシステムが多い中、これはきちんと対応してくれる(プロのコツ:SVGファイルで部分ごとにカラーコードを使って指定すれば、彫刻やカットが一度に行える)。

私の初めてのカットは簡単できれいに仕上がった。Glowforgeは、私の予想通りの働きをしてくれた。そしてレーザーカッターに望まれる仕事をきちんとこなしてくれる。輸送中に壊れたとか、初期不良でないかぎり、レーザーカッターはこうあるべきだ。これの本当の実力は、いかに簡単に使えるかにある。内蔵カメラとソフトウェアの組み合わせによって、Glowforgeは、私が使ったなかで、もっとも簡単なデジタルファブリケーションマシンになっている。

MDS9278

もちろん、このマシンはまだベータ版なので、まだいくつか問題がある。Glowforgeのすべてのモード(彫刻3レベル、切断2レベル)を簡単にテストできるデザインを作って試してみた。彫刻では、正しいスタート地点から始まらなかった。パスのタイミングが取れていないのだ。切断ラインには、両端にドットができる。これもタイミングの問題だ。デザインに対するレーザーの解釈が完全に一致していない。魚眼レンズのカメラからのマッピングなので、起こりそうなことだ。しかし、これらはすべてソフトウェアの問題なので、実際の製品が出荷されるころには修正されているはずだ。

TestTileClean

木材を使った最初のテストを終えた私は、調子に乗って、自分のデザインで試そうと考えた。ShapiroがMakerConとローンチビデオで披露していたプロジェクトに革のブリーフケースがあったが、最初からそこまで立派なものに挑戦しようとは思わなかった。代わりに、ズボンのベルトループがしょっちゅう切れるのを防ぐために、ベルトに鍵をぶら下げる革のループを作ろうと考えた。私は6オンス(3ミリ厚)の革と真鍮の輪をアマゾンで購入し、Onshapeを使って革の部分をデザインした。Inkscapeを使ってもよかったのだが、本物のCADのほうが簡単だし、正確に作れる。また、Onshapeの数値を使ったデザインなら、後で調整するのも楽だ。ただ、Onshapeでは2DのデザインはDXFかDWGでしか出力できない。GlowforgeはSVGにのみ対応しているので、これをいったんInkscapeに読み込ませて、切断部分をカラーマッピングした。

Interface

カットにかかった時間は46秒だった。これに真鍮の輪を入れ込み、ポリエステルの糸で3カ所縫い合わせた。この初めての革のプロジェクトに私は大満足だ。もうズボンのベルトループを切らずに済む。同じものが作りたい方のために、Onshapeのモデルをここで公開しておいた。

BeltLoopClean

Glowforgeの出荷を心配している人やコミュニティは多いと思うが、もう少し我慢してほしい。もうすぐだ。もうすぐこの素晴らしいマシンが届く。

原文