Science

2017.03.22

[MAKE: PROJECTS]安価にドローンを科学調査に使うためのテクニック

Text by Forrest M. Mims III
Translated by kanai

FEATURED-Mims_Fig_A_MAKE_-56_DSC07170-2
図A:木板で作った軽量な架台をドローンの着陸脚にガムテープで貼り付ける(Photography by Forrest Mims)

小型の無人航空機(UAVまたはドローン)は、私の科学ツールキットの大切な一部となった。航空写真を撮影するだけでなく、気温、相対湿度、露点など、高度によって変化するパラメーターの測定にも使える。こうしたパラメーターの測定は、ドローンのカメラに測定器が写るように取り付けるだけで、じつに簡単に行える。ドローンのコントローラーの画面を見るだけで、それらの変化が読み取れる。Phantomなどの高度なドローンなら、その測定結果を写真に撮って、高度、座標、時刻をいっしょにEXIFファイルに保存できる。

簡単な機材架台

Phantom 3、Phantom 4などのドローンに機材を取り付けるための軽量な架台は、ホビーショップなどで売られている長さ20センチと30センチの木板(3ミリ厚、2.5センチ幅)2本ずつで簡単に作れる。この4枚を長方形になるように組み合わせてガムテープで固定する。そして、30センチのほうの側をドローンの着陸脚にガムテープで貼り付ける。ドローンのコンパスに干渉しないように、金属は使用しない。この架台には、いろいろなものを載せることができる(図A)。

アドバイス:重心が変わってしまったときは、ドローンが適正に飛行できるよう、反対側に重りを載せてバランスをとる。そうすれば、ドローンを安定させるためにモーターが余分に働かなくて済む。

紫外線放射計を飛ばす

1990年から私が太陽光の観測をしている場所は、木々に囲まれている。それは太陽の直接光の測定に影響を及ぼすものではないが、全天放射計で測定される太陽光が枝で遮られ始めている。木によってどれほど空が遮られているのかが、長い間の疑問だったが、Phantom 3がその答を与えてくれた。

私の全天観測でもっとも重要なのは、太陽光の紫外線B波だ。その測定に、私は長年、自作の放射計をいくつか使ってきた。1995年と1997年、私はNASAの依頼で、大量の煤煙プルームが空を覆う季節のブラジルで、オゾン層と紫外線B波の測定を行った。このときは、1994年に作った放射計を使用した。Phantom 3を使って空に飛ばしたいのは、この放射計だ。大切な機材を空に飛ばすのはとてもリスクの高い決断だが、地上1.5メートルと20メートルの上空とで紫外線B波の違いを測定するのは、とても重要なことなのだ。

Mims_Fig_B_MAKE_-56_DSC07173
図B:ドローンの架台にテープで固定したOnsetの16ビットデータロガー

前述の機材架台は、テスト用に使った。Onsetの16ビットデータロガーからは、固定用の磁石を取り外し、代わりにガムテープで固定した(図C)。プロペラの先端と放射計との間隔は1インチより小さいので、放射計と配線をしっかりとテープで貼り付けた。3回のフライトで答が出た。木は紫外線B波を2.5パーセント低下させていた。あと2〜3年の変化を観測すれば、1994年まで遡ってデータを補正するアルゴリズムができるだろう。

Mims_Fig_C_MAKE_-56_DSC07177
図C:ドローンの上にテープで留めた赤外線B波放射計

太陽光測定のための機器はドローンのいちばん高い部分に取り付けるのがよいが、そこにはPhantom 3のGPSシステムもある。幸い、赤外線B波放射計はそれに干渉するようなことがなかった。おそらく、プラスチックのケースに収められていて、金属部品も少ないせいだろう。

警告:ドローンの上面に機器を取り付ける場合は、しっかりと固定して、プロペラに接触しないように注意すること。低い高度でテスト飛行を行い、GPSとコンパスが干渉されずに正しく機能するかを確認しておこう。

自然の熱画像

熱赤外線カメラは、通常の可視光線カメラでは見えない熱の分布を可視化してくれる。たとえば、熱画像では、土場の湿気や成分、地下の様子がわかり、さらには考古学的な調査にも役立つ。熱画像は、昼や夜の人や温血動物の存在も知ることができる。

ドローン用の熱赤外線カメラは販売されているが、数千ドルと大変に高価だ。その安価な代替品として、スマートフォン用に開発された熱赤外線カメラがある。これなら250ドル以下で手に入る。私は、FLIR One熱カメラをiPhone 5に接続して、Phantom 3から熱画像を撮影している。iPhoneに接続したカメラは、上記の機器架台の前面に取り付けた。

この方法で熱赤外線画像が撮影できることはできるが、完璧ではない。このカメラは、ドローンのカメラのようにジンバルにマウントされているわけではないので、安定しないのだ。なので、風のない日に、ゆっくりと飛ばす。もう1つの欠点は、静止画を撮影するためのシャッターを押す簡単な方法がないため、動画モードで撮影しなければならない点だ。とはいえ、この方法は使える。ジンバルで安定させた何千ドルもする熱カメラに投資することなく、熱赤外線画像の応用法をいろいろと試すことができる便利な方法だ。

Mims_Fig_D_MAKE_-56
図D:沼地の熱赤外線画像

たとえば、私の住む田舎地帯は街に隣接しているが、最近、近くの分譲地に下水道が設置された。下水道の本管は、深い溝に砂利を敷いて、その上に通された。それが地下水の流れを遮り、私の家の玄関前の車道の脇と、家の下の森の中に新しい泉ができてしまった。森の上からPhantom 3で撮影した画像(図D)では、冷たいたまり水(黒と濃い青)、濡れた土と草(明るい青)、温かい木の上面(赤)が写し出されている。

Mims_Fig_E_MAKE_-56_DJI_0008
図E:新しい泉の影響で枯れてしまった木々の空撮写真。10本以上の木々が葉を落としてしまった。

Phantom 4のカメラは、新しい泉による森のダメージを記録するのに理想的な方法を提供してくれた。森の木の上空から撮影した写真を見ると、10本以上の大きな木の葉が落ちている(図E)。注意して木の枝の下を飛ばして撮影すると、沼地になった部分の様子が、地面から撮った写真よりもよくわかった(図F)。

Mims_Fig_F_MAKE_-56_DJI_0018
図F:図Eに見える森の上層部の下に降りてきたドローンで撮影した画像

農地を調査する

Mims_Fig_G_MAKE_-56_DJI_0752
図G:ワタ根腐れ病に感染した綿畑

農家では、近赤外線カメラをドローンに搭載して作物の病気を観察している。あるDIY愛好家が、近赤外線画像を撮影するために、ドローンのカメラを分解して赤外線フィルターを外した。しかし、通常のカメラでも、地上から撮影するよりもずっと明らかに被害の状況を把握することができる。Phantom 4で35ヘクタールの綿畑を観察したところ、収穫中の白い綿花が広がる中に黒い部分が見てとれた(図F)。農家によると、黒い部分はワタ根腐れ病という菌に冒されたところだという。地上からはよくわからないが、上空からなら一目でわかる。

科学機器をモニターする

Mims_Fig_H_MAKE_-56_DSC07192
図H:屋根の上の設備を撮影しているドローン

屋外の環境を観測する科学機器は、手の届きにくい場所に設置されることが多い。たとえば、コロラド州立大学農学部と私が行っている太陽光の観測機器は、テキサス・ルター大学の2階建ての建物の屋根の上にある。3つの機器の回転する影帯の調整を行うために、毎週これを検査しなければならないのだが、それには約4メートルの鉄のハシゴを上って屋上のハッチを開けて出なければならない。これが不可能なときは、ドローンが役に立つ(図H)。ドローンのカメラが、3つの機器の影帯をはっきりと写し出してくれる(図I)。

Mims_Fig_I_MAKE_-56_DJI_0006
図I:ドローンから撮影した3つの機器の影帯

安全のために

ドローンを飛ばす前に、米連邦航空局が定めたルールを確認しておくことだ。それによると、高度は400フィート(120メートル)を超えないこと、人の頭上で飛ばさないこと、日の出30分後から日の入り30分前までに飛行することなどが決められている。近くに空港があるときは、それによる規制もある。ドローンのパイロットは十分注意して飛ばすことを強くお願いする。そして、米連邦航空局のUASルールをウェブサイトでよく確認しておこう。(日本語版編注:日本では、国土交通省の「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」を確認してください)

原文