Electronics

2017.04.11

MakeVR:仮想現実で本物のCADが使える

Text by Keith HammondTranslated by kanai

VRの街に新しい3Dモデラーが登場した。それが大きな流れを変えそうだ。Vive StudiosとSixenseから「MakeVR」が発売された。私たちは、初期バージョンをHTC Viveシステムでテストしたのだが、それは驚くべき体験だった。とても直感的で自然だった。2つのコントローラーを使って、3Dオブジェクトを押したり引いたり延ばしたり大きさを変えたりして、パワフルなCADエンジンを使い、仮想空間でモデリングができる。それは、家やShapewaysで3Dプリント可能なきっちりと閉じた形状としてSTLファイルに変換できる。または、Max、Mayaなどのデザインプログラムに書き出すことができる。

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MakeVRは viveport.comにて19.99ドルで購入できる。時間と金をかけて手に入れる価値はある。本物のCADで、完全に仮想世界に入り込むことができるのだ。MakeVRは、よく知られているSpatial Corporation(Dassault Systems)の3D ACISモデリングカーネルを使用している。業務用のCADシステムにも使われているカーネルだ。私たちは、MakeVRを始めとする仮想モデリングツールの可能性に魅力を感じた。Makerたちはこれをどう使うのだろうか、とても楽しみだ。SixenseとVive Studiosも、そこに大変に期待している。彼らは、今年の後半にMakeVR Proを発表する予定で、Makerたちからの意見を聞いて、より精度の高いツールを加えたいと考えている。だから今が、夢のCADツール作りに貢献できるチャンスだ。

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私たちは、Sixenceが初期のバージョンを発表した2013年から、MakeVRの開発の様子を追いかけてきた。Maker Faire Bay Areaで発表された当時は、Razer HydraコントローラーとOculus Riftヘッドマウントディスプレイを使っていた。HTC Viveシステムが登場すると、両手を使って操作できるルームスケールVRに拡張された。そして、この2つの企業は提携して、ViveのためのMakeVRを開発するようになった。昨年、私たちはサンフランシスコにある彼らの研究所に招かれた(マーケット通りにある、何の印もない建物だ)。そこで最新版を見せたもらったのだが、たちまち魅了されてしまった。彼らは、今年の始めに「Make:」本社を訪れて、3Dプリントとの連携の様子を見せてくれた。私は簡単なオブジェクトを作り、オフィスの3Dプリンターでプリントしてみた。STLファイルはしっかりと閉じていて、エラーもなく、完璧にプリントできた。

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私はHTC ViveとSixenseのチームにMakeVRに関する詳しい話を聞いた。どのように作られたのか。これがMakerにとってどんな意味があるのか、などだ。

Make: Steve Hanstedさん、あなたはSixenseの事業開発担当ですが、どうぞ私に売り込んでください。私は新しい3Dプリンターを買ったばかりで、何かをプリントしたいと思ってます。世の中にはCADや3Dモデリング用ソフトウェアがひしめいていますよね。すごくパワフルなものや、初心者にやさしいものなど。そこで、MakeVRを選ぶ理由を教えてください。他のソフトでは真似できない点はどこですか? これで私の人生はどう変わりますか?

Steve Hansted:いい質問です! 簡単に言えば、MakeVRはその両方を兼ね備えています。ハイパワーで初心者にも使いやすい。業務用のCADエンジンを使用し、非常に自然で直感的な両手操作ができます。市場にはたくさんのCADソフトや3Dモデリング製品がありますが、完全なソリッドモデリングCADエンジンと3Dマルチタッチインターフェイスを備え、誰でも最初の日に、すぐにモデリングができて、そのまま3Dプリントできるという製品はMakeVRだけです。学習曲線が非常に緩やかにできています。

Make:MakeVRの最初のバージョンがMakerやホビイスト向けなのはなぜですか? あなたたちが繋がりたいコミュニティに何を求めていますか? 彼らのアイデアをソフトウェアの改良に活かしますか?

SH:MakeVRの高機能なバージョンを、いち早くMakerとホビイストに届けたかったのです。あなたのように、ピカピカの3Dプリンターを持っているが、プリントするコンテンツを探しているという、このコミュニティの人たちから意見を聞きたいのです。7分間の学習とちょっとの練習で、どんなMakerもホビイストも、新品のプリンターで出力することができます。彼らからのフィードバックは大変に重要です。私たちは、できる限り便利で魅力的なツールを作ろうとしています。

Make:後から出るPro版を待たずに、初期版を買う理由は?

SH:MakeVRの最初のリリースは完全な機能を備えたモデリングツールです。ブーリアンとフリーフォームツールの組み合わせで、実にクールなコンテンツが作れます。後から発売されるPro版には高精度なツールが含まれますが、今すぐにでも想像力を実体化したい人には、最初のバージョンで十分です。何度も言いますが、どんなものでも、そのまま3Dプリンターから出力できるのです。

Make:Chris Chinさん、あなたはHTCのスタッフですが、なぜ、AutoCADやSketchUpではなく、Sixenseを選んだのですか?

Chris Chin:Sixenseは、最初から素晴らしいパートナーだったからです。彼らには、VR業界のパイオニアとしての偉大な実績があり、MakeVRへ強い情熱もあります。Amir(Rubin)とPaul(Mlyniec)とSteveは、もう何十年間もVRの最先端にいて、VRがいかに革新的であるかをよく理解しています。去年、HTC Viveが発表されたとき、すでに、私たちと提携してMakeVRを実現させるという将来像を描いていました。私たちも、MakeVRが業務用レベルのCADエンジンで動くというアイデアを気に入りました。それはMakerに大きな力を与えるものです。これまでキーボードとマウスで行っていた作業が、ViveのルームスケールのVRで、自然に直感的にできるようになるのです。SixenseはすでにMakeVRの開発に何年間もかけてきました。それがViveで使えるようになることを望んでいました。大変に素晴らしいツールで、コンテンツ製作の強い味方です。

断っておきますが、私たちはAutodeskとDassaultとも、企業としていろいろな方面で緊密に協力しています。私たちは、常に複数のパートナーと提携し、オープンな状態を保っています。私たちは、モデリングとデザインのためのツールを、Makerホビイスト、さらにはコンシューマーにも使ってもらいたいと考えています。SixenseとMakeVRの提携に大いに期待しているのは、そうした意味からです。

Make:Chrisさん、あなたは娘さんといっしょに長年「Make:」を読んでくださっていますね。また、教育者としての経歴もお持ちですが、MakeVRは教育に有効でしょうか。他のVR製品よりも、初心者が入りやすいものにしようと、想定されていたのですか。

CC:MakeVRは教育に最適です。10年前、タッチスクリーンのコントロール方法がなかったころを思い出してください。ピンチやズームといった操作は、iPhoneが登場するまではありませんでした。今、それと同じような交差点に差し掛かっています。MakeVRのような創造的なデザインアプリが、Viveの自然で直感的なコントロールと出会い、操作はさらに簡単になりました。新世代のMakerやクリエイターにとって、MakeVRは理想的です。Steveは何百ものデモを行っていますが、子どもがViveの中に入り、ほんの数秒でMakeVRを使い始め、すごいものを作ったという実例があります。これは世の中に変革をもたらすものだと思います。

教育的立場から言うと、学校はMakeVRのようなツールを求めています。彼らはSTEAM教育の立場から、創造性やデザイン性を重視しています。学校、図書館、メイカースペースなど、みな MakeVRに注目しています。これは、想像力と現実との完璧な橋になると考えています。子どもたちはアイデアを思いついたら、Viveに飛び込み、MakeVRを使ってそれを形作り、3Dプリンターでプリントする。そのように、MakeVRが教育の現場で活かされること、そして学校や大学からのフィードバックに期待しています。どんなすごいものが生まれてくるか、楽しみです。

Make:Steveさん、ACISのような強力なCADエンジンをVR環境に移植したときの難しかった点はどこですか。それに関連して、あなた方が解決した問題で、まだライバル企業が解決していないものはありますか。

SH:障害はたくさんありましたが、大きなものは3つです。もっとも難しかったのは、ACISから精密工作機能を取り出して、VR環境で簡単に自然に使えるようにすることです。それは、とても深いところにあって複雑でした。この問題は、私たちだけが取り組んだ難題でした。他社のツールをけなすわけではありませんが、サーフェイスの変形は比較的簡単にできるようになっています。自然な感覚で使えるインターフェイスに精密工作機能を組み込むことは、大変な挑戦でした。

ナビゲーションについて、オブジェクトの製作と空間的な移動は、両手インターフェイスと3Dマルチタッチを使うことで、標準的なインターフェイスよりもずっと高速で簡単になっています。子どもたちがこのインターフェイスを使うところを見ると、引き込まれます。2Dのマルチタッチで育った子どもたちは、すぐに慣れてしまいます。拡大縮小したり動かしたりが、すぐにできるようになるのです。

パフォーマンスについて、VRの中のこの複雑なCAD機能は、すべて毎秒90フレームで表示されます。高速なフレームレートで酔わないようにすることが、苦労したところです。

Make:MakeVRの初期バージョンを使わせてもらったときに、とても気に入りました。自由な感覚がすごかったからです。CADプログラムを使うときにイライラさせられてきたキーボードのコマンドから解放された感覚です。体全体を使ってオブジェクトや空間を操り、あらゆる部分をいろいろなスケールで見ることができる。「これがCADの本当の未来だ」と感じました。VR CADは、キーボードと画面に邪魔されてきたクリエイティブなエネルギーを解放するものだと思います。3Dデザイナーは2世代にわたってキーボードに拘束されてきましたが、完璧に自由な動きを与えられて、モデリングや彫刻が、再び現実に戻ったという感じですね。

SH:まさに、MakeVRはアーティストのアーティスティックな動きを参考に作られています。アーティストの視点から、どう感じられるべきか、ツールはどう働くべきかを考えました。私たちはよくMakeVRを「3Dコンテンツ製作体験」と呼んでいます。旧来のCADを使うときの苦労がありません。

Make:3Dプリントも試してみました。Shapewaysは利用せず(今日作って明日届くというサービスは魅力ですが)、STLファイルで書き出しました。シンプルなオブジェクトでしたが、このファイルはしっかり閉じていて、エラーもなく、きれいにプリントできました。しかし、MakeVRを使わずに、STLファイルでモデルのサイズを変更するときは、一手間かかりました。Pro版には、どんな測定ツールが付属しますか。私はサブミリの精度のスナップするグリッドが欲しいと思いました。それがあれば、既存の基板や留め具やハードウェアなどと最初からぴったり合わせて作ることができます。

SH:ええ、ソリッドモデリングを基本としているので、閉じた形状を直接3Dプリンターに送ることができます。3Dプリント用に精密に拡大縮小ができるよう、測定ツールを搭載する予定です。

しかし、少なくとも次のMakeVRは、Solidworksに置き換わるものではありません。精度と寸法は別物です。形状を正確に配置することはできますが、現在のところはまだ、サブミリの精度での工学的なデザインはできません。

Make:昨年、SixenseのCEO、Amir Rubinが「Make:」にこう話してくれました。「ACISのすべてのツールをMakeVRで使えるようにします。基本的にはHTCのインターフェイスを持ったSolidworksです。私たちは Makerコミュニティと透明でオープンな対話をしたい」と。何度も聞きますが、フルバージョンのMakeVRが発売になったとき、ACIS CADエンジンのどれほどの機能を99ドルで提供するのでしょうか。またMakerは、どのようにしたら将来のバージョンのMakeVRの方向性に影響を与えることができるでしょうか。

SH:私たちには、ACISのすべての機能をMakeVRで使えるようにする技術があります。しかしまずは、正確なオブジェクトの配置のための精密工作ツールです。グリッド、ジグ、位置と回転のスナップなどです。このツールを解放して、Makerやホビイストのコミュニティにできるかぎり貢献できるようにしたいと思っています。同時に、みなさんからの意見を聞きたいと考えています。

Make:単刀直入に聞きます。読者が知りたがると思うので。MakeVRはOculus Mediumとどう違いますか。同僚のCaleb KraftがMediumを愛用しています。彼はVRと3Dモデリングのエキスパートなので、この記事の内容チェックもお願いしようと思ってます。

SH: それらは比較できないものです。WordとExcelの違いのような。それそれに得意な機能があり、一部が重なっています。WordもExcelも、デザイン、機能、目的が異なりますが、それぞれで同じ作業をすることができるのと同じです。

Mediumは、多くツールと同じように、フリーフォームのスカルプトツールです。Mediumでは素晴らしい作品を作ることができますが、結果として作られるのは、粘土彫刻のようなものです。MakeVRにもサーフェイスを変形するツールはありますが、正確な角度のハードなサーフェイスを作ることを主眼としています。MakeVRは、業界標準のソリッドモデリングのCADエンジンで、それに精密工作ツール(Pro版)と共同作業機能が付属したものです。

Make:その他に、お楽しみはありますか?

SH:MakeVRは常に進化し、さらに多くの機能やツールが解放されてゆくということを言っておきましょう。それは、6個や10個のブーリアン機能どころではありません。とにかく楽しんでください。MakeVRはどんどん大きくなり、速くなり、強力になります。

私たちは、Vive、MakeVR、3Dプリントのコミュニティでコンテンツを交換したり購入したりできるMakeVRストアも作る予定です。

また、共同作業の機能ですが、これも間もなく搭載されます。マルチプレイヤー環境を確立して、ひとつのオブジェクトを同僚やクライアントといっしょに作業ができます。これをCADユーザーに話したところ、びっくりしていました。

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