Crafts

2017.06.26

食べられるイノベーション:カカオ豆からチョコレートを作る工場

Text by Chiara Cecchini
Translated by kanai

シンガポールからアメリカ、そしてヨーロッパ全体に向けて、Edible Innovations(食べられるイノベーション)は、生産から流通から販売までのあらゆるステージで世界の食料システムを改善しようと考えるFood Makerたちを紹介しています。私たちといっしょに、この産業の大きな流れを、Makerの視点で探ってみませんか。優れた教育的な核を持ち、未来への偉大なる挑戦のための主要なツールとしてフードイノベーションを推進するFood Innovation ProgramのChiara Cecchiniが、世界のFood Makerたちの顔、話、体験を紹介します。


Todd MasonisとCameron Ringは、2001年に彼ら自身が設立したPlaxoという技術系企業を経営していた。2008年、彼らはその会社をComcastに売却し、2009年に退社した。売却後、彼らは自分たちが好きなものを追いかける好機に恵まれた。Masonisの場合は、それがチョコレートだった。

「私は甘い物が大好きなんです」とMasonis。「チョコレートとその作り方について知りたくて、友人のガレージを占領して小さなチョコレート工場を作ったんです」

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チョコレート・メイカー

これを始めた当初、2人はチョコレート作りを仕事にしようは考えていなかった。細かいビジネスプランも、10年後の財務予測も立てていなかった。ただ、できるのかどうかを確かめたくて、チョコレートを作っていた。

そして間もなく、彼らは、新しいチョコレートのメイカームーブメントに参加していることに気づいた。昔ながらのチョコレート製造方法を再発見し、新しい味を生み出している人たちがたくさんいた。だが、2010年にMasonisとRingが開始したころは、アメリカ産の豆を使ってチョコレートを作る小さな会社がわずかに(200社ほど)あるだけだった。

その後、MasonisとRingのような人たちが次々とスタートアップを立ち上げるようになった。「私たちは、チョコレートの世界で起きているムーブメントと変革に参加していることを誇らしく思いました」とMasonisは言う。そして2人は、チョコレート作りを仕事にすることを決め、Dandelion Chocolate(ダンディライオンチョコレート:@DandelionChoco)を設立した。

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シンプルだけどおいしい

彼らのチョコレート作りの工程はきわめてシンプルだが、味はいい。まず、オーブンかコーヒーロースターでカカオ豆を煎る。豆1キログラムあたり、摂氏112.8度で15〜20分ほど時間がかかる。その後、豆は火から離して冷ます。そして、親指と人差し指で捻るようにして豆の殻を外す。中から出てくるのが、カカオニブと呼ばれるものだ。

ここで、小型のメランジャーが必要になる。一度に少しずつカカオニブを入れて、砂糖を混ぜ込む。70パーセントバッチにしたければ、カカオニブ70パーセント、砂糖30パーセントにする。カカオニブと砂糖が滑らかになるまでには、数時間かかる。出来上がったら、製氷皿かシリコンの型に流し込み、冷蔵庫で30分以上冷やし、固まったら型から外して完成だ。

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チョコレート愛

その後、RingはHonor社を立ち上げるためにDandelionを去ったが、Masonisはチョコレート作りを止めなかった。彼を突き動かしているものは、チョコレートが人々を幸せにするという自覚だ。多くの人がチョコレート工場を訪れては、彼らの製品をどれだけ愛しているかを伝えてくれるのだと、Msonisは話していた。技術業界では、ユーザーがわざわざ立ち寄って、製品愛を語ってくれることなど極めて希だ。しかしチョコレート業界では、非常に多くの人が、おいしかったと直に伝えに来てくれるのだ。

Dandelionはもうガレージにはないが、人々はまだ、チョコレート愛を伝えるために立ち寄ってくれる。工場内には笑顔が溢れている。笑顔を見せるのはお客さんだけではない。原料となるカカオ豆の生産農家の人たちも同じように笑っている。

正しいインパクト

Masonisは「正しいことをする」ことの大切さを指摘している。とくに、農家を尊敬することだ。フェアトレードのような第三者による認証がなくても、彼は個人的に契約農家を訪れ、各農場の情報とともに原料調達レポートを毎年発行している。各チョコレートのパッケージの裏には、カカオ豆の生産者の名前が記されている。

サンフランシスコにあるDandelionのショップにぜひ立ち寄ってほしい。もし、出張中でなければ、Dandelionの原料調達係のGreg D’Alesandreから原料に関する詳しい話が聞ける。

Dandelion Chocolateでは、人々にチョコレートの原料がどこから来るのか、どうやって作られているのかを知ってもらいたいと考えている。彼らが経営するカフェの裏はすぐに工場につながっていて、原料の豆からチョコレート製品になるまでを見学できる。カフェの上階は、公開キッチンになっていて、カカオ豆を見たり、試食したり、チョコレート教室に参加したりできる。また、会社の業務についてもわかる。

訳者から:日本に支店が3店あります。Dandelion Chocolateのサイトで確認してください。

原文