Electronics

2017.06.19

alt.ctrl.GDC:ゲーム用自作インターフェイスの新しい可能性を探る展示会で披露された奇妙なデバイスたち

Text by Tyler WinegarnerTranslated by kanai

ここはオフィスビルの地下階。停電している。薄明るいランタンの光の輪だけが行く先を照らしている。出口はどこだかわからない。しかも、自分一人ではない。ここには得体の知れない化け物がいるのだ。ランタンの光を案内板に向ける。そこにはSB-132研究室と書かれている。すると、ヘッドセットに通信が入った。「待って。そこで止まって。廊下を右方向に進んで、最後を左よ」廊下を進むが、方向感覚を失ってしまった。彼女は、最初を左と言ったのだったか、最後を左と言ったのだったか、思い出せない。うなり声が近づいてくる。これは「Fear Sphere(恐怖の球体)」というタイトルのゲームだ。光の輪は、ランタンに仕込まれたピコプロジェクターが投影する映像。6軸加速度センサーによって、照らす方向が検知されている。

真っ暗な球体の中で、プレイヤーに見えるのは、その光の輪の中の映像だけ。暗闇を懐中電灯で照らすのと同じ感覚だ。自分の位置は、外にいるパートナーに聞くことができる。パートナーはマップを持っているので、位置を知らせることができるが、すぐにパニックに陥る。

気力を乗り切るモノ

ゲームコントローラーと聞くと、シュッとした形のプラスティックの塊で、両手で握る出っ張りがあって、ジョイスティックが2つあって、あとは詰め込めるだけ詰め込んだボタンが並んでいるものを想像するだろう。砂の山や、ダンボール箱や、ルームランナーの無限に続くカーペットを思い浮かべる人はまずいない。

alt.ctrl.GDCは、毎年開かれるGame Developer’s Conference(GDC:ゲーム開発者会議)での展示会で、ゲームとのインタラクションの新しい形を探っている。もともとは、Independent Games Festival(独立系ゲームフェスティバル)の中のひとつのカテゴリーだったのだが、参加作品が増えるに従い、そうしたユニークなゲームには独立した大会が必要だということになった。John Polsonをまとめ役として、alt.ctrl.GDCは今年で4回目を迎え、ユニークなゲーム感覚を生み出す手作りのハードウェアやソフトウェアの数々が展示された。「ビデオゲームがプレイヤーにどう関わるかということばかり、長年考えられてきましたが、alt.ctrlでは、プレイヤーがゲームにどう関わるかを追求しています」とPolsonは言う。

FearSphere

「Fear Sphere(恐怖の球体)」でプレイヤーが手に持つランタン型プロジェクター。

SandGarden

「Sand Garden(砂の庭)」はXbox Kinectとプロジェクションマッピングと、本物の砂箱を使っている。

ShapeFitter

「Shape Fitter(形合わせ)」は、ジャイロスコープとテンセグリティーセンサーで構成されている。

ClosetheLeaks

「Close the Leaks(漏れを止めろ)」は、ゲームの中の船を、実際の空気の流れを使って制御する4人で遊ぶゲーム。

Cylindrus

「Cylindrus(シリンドラス)」は、「スペース・インベーダー」のようだが、画面の代わりにLEDテープを使っている。

SuperNeonCatHeads

「Super Furry Neon Cat Heads(超ふわふわネオン猫の頭)」は、90年代風の「ダンスダンス・レボリューション」だ。

EmotionalFujitive

「Emotional Fugitive Detector(感情逃亡者発見器)」は、お互いの微妙な表情を読み解く、2人で遊ぶ顔認証ゲーム。

想像力に富んだエンジニアリング

これらのインターフェイスに、Arduinoや、その無数の互換マイクロコントローラーが使われていることは驚くにはあたらない。UnityやUnrealといった数々の市販のゲームエンジンは、Arduinoとエンジンの入出力装置として直接利用できるようにAPIを提供している。ゲーム内のイベントは、インジケーターライトを光らせたり、物理的なゲージを動かしたり、Klaxonホーンを鳴らしたりと、いろいろなことができる。入力は、作者の想像力と技術力があるかぎり、何にでも対応できる。

たとえば、「SpaceBox(スペースボックス)」は、シンプルなダンボール箱に入って遊ぶ、楽しくて子どもっぽい宇宙船シミュレーターだが、体を前後左右に傾けることで宇宙船を操縦する。これを開発したデザイナーのRobin Shaftoは、マンガ「カルビンとホッブス」の世界を再現しようと考えた。そこでは、カルビンの想像上の英雄、Spaceman Spiff(スペースマン・スピフ)になりきることができる。

SpaceBox

箱の底に取り付けられたボタンが、体重の移動を感知する。箱の左右の蓋を持ち上げるとシールドになる。その動きは加速度センサーによって感知される。ブラスターは、リップクリームの缶で作った単純なスイッチで発射される。ヘルメットとしてかぶる水切り用のざるは、ただの飾りに近いものだが、これがあるとないとでは気分がまったく違う。

高度な技術を使ったものばかりではない。「Zombie Crawler(地を這うゾンビ)」は、おいしそうな人間を追いかけて、廊下を這ってゆくというゲームだ。進むためには、ルームランナー式にループ状になったカーペットを手前に引きずる。左右にある緑色のボタンを押すと、障害物を破壊できる。人間にショットガンを向けられたら、全体を左右に揺らして避ける。

ZombieCrawler

カーペットの動きは、マウスの光学センサーによって読み取られている。左右に揺らす動きは、磁石とリードスイッチで感知する。これらの信号は、アーケードゲーム筐体の愛好家の間でよく使われているコンピューターインターフェイスカード、IPACに送られる。この方式なら、Arduinoのコーディングに時間を取られることなく、ハードウェアの製作に没頭できる。

体験を高める

作品には、単に実験目的で作られたものもあれば、スウェーデンのウプサラにあるウプサラ大学で、新しい操作方法を研究するゲームデザイン及びグラフィックス科の学生たちのように、大学からの出展もあった。

alt.ctrlでは毎年、世界11の都市でゲームの展示会を開いている。クリエーターの一人、Gregory Kogos(AdafruitのNeoPixelで作った輪を2つとArduinoを組み合わせたシンプルなインターフェイス、RotoRingの開発者)は、製品化を目指して新しいゲーム用コントローラーを研究している。また、「Objects in Space(宇宙の物体)」は、Arduinoを使ったオープンソースのコントロール・インターフェイスを使った貿易ゲームだ。専用のコントローラーを使わなくてもプレイできるが、トグルスイッチで魚雷を発射する感触は、マウスのクリックとは大違いだ。

ObjectsinSpace

原文