Electronics

2017.08.25

貢献者のための行動規範をプロジェクトに取り入れよう

Text by Caleb Kraft
Translated by kanai

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Maker、ハッカー、技術系の人々のコミュニティでの開放性と振る舞いに関連する問題は、どう少なく見ても複雑極まりない。職場での差別行為という実社会での問題ばかりではない。こうしたコミュニティのほとんどがデジタル世界の中にあり、ネット上の人格の陰に本当の自分が隠れてしまうという問題もある。それが、粗暴な態度の温床になっている。コミュニティを監視し、何が起きているかを記録する立場にある私は、コミュニティの運営に関して、何度も意見を述べてきた。2010年、Gareth Branwynは、Makezine.comにおいて、コメントに関するポリシーを定めた。同じようなポリシーは、他のサイトでも見たことがあるだろう。

プロジェクトに関してはどうだろう? 貢献したことも、貢献した人も、不快な反応にさらされる危険性は常に存在する。そこで、自分のプロジェクトに関する行動規範を定めておけば、コミュニティをより開放的にするための小さな一歩を踏み出すことができる。私は、AdafruitのCircuitPythonの記事(日本語訳)を読んでいたときに「Contributor Covenant(貢献者協定)」に出会った。プロジェクトに参加しようと決めた場合に、そのプロジェクトの価値を高める方向で振る舞うことに同意するという考え方だ。

ここに、最新版の「Contributor Covenant(貢献者協定)」を示す。これは、みなさんのプロジェクトに適用することができる。


Contributor Covenant Code of Conduct(貢献者協定行動規範)

私たちの誓約

開放的で誰もが歓迎される環境を育てるために、私たち貢献者及び運営者は、私たちのプロジェクト及び私たちのコミュニティを、年齢、体格、障害の有無、民族、性同一性、性的指向、人生経験、国籍、外観、人種、宗教、性別に関わらず、いかなる人に対しても不快を感じさせない場にすることを誓います。

私たちの基準

好意的な環境を築く上で役に立つ振る舞いの例。

・相手を歓迎し受け入れる言葉を使う。
・自分と異なる視点や経験に敬意を払う。
・建設的な批判を感謝して受け入れる。
・コミュニティにとって何がもっとも重要かを常に考える。
・コミュニティの参加者に気持ちを沿わせる。

参加者による好ましくない振る舞いの例。

・性を強調する言葉や表現を使ったり、性的な関心を惹く、性的な誘惑をするなど不適切な話をする。
・挑発的、侮蔑的なコメントを書いたり、個人的、政治的な攻撃をする。
・公的または個人的な嫌がらせをする。
・住所やメールアドレスなど、明確な許可なく他人の個人情報を公開する。
・その他、職場では不適切と考えられる振る舞いをする。

私たちの責任

プロジェクトの運営者は、容認できる振る舞いの基準を明確にし、不適切な振る舞いに対しては、いかなる場合においても適切かつ公正な是正措置を取るよう努めなければなりません。

プロジェクト運営者は、行動規範に反するコメント、関与、コード、Wikiの編集、論争、その他の貢献の削除、編集、排除、さらに、不適切、恫喝的、攻撃的、有害だと判断された振る舞いを行う貢献者を、一時的または永久に追放する権利と責任を有します。

適用範囲

この行動規範は、プロジェクトが行われる場と、プロジェクトまたはコミュニティの代表者として個人が行動する公共の場の両方に適用されます。プロジェクトまたはコミュニティを代表する行動の例として、プロジェクトの公式なメールアドレスを使う、公式ソーシャルメディアのアカウントに投稿する、オンラインおよびオフラインのイベントに代表として参加する場合などが考えられます。プロジェクトの代表者に関して、プロジェクト運営者が、さらに詳細で明確な適用範囲を規定することができます。

対処

侮辱、嫌がらせ、その他の容認できない振る舞いが発見されたときは、プロジェクトチームへ報告してください(ここにメールアドレスを書き込む)。苦情に対しては、すべてを聞き、調査し、その状況に必要または適切と判断される対処を行います。プロジェクトチームは、問題の通報者に関して守秘義務を負います。個別の対処方針の詳細について別記することができます。

行動規範を誠実に守らない、あるいは行動規範に従った対処を行わないプロジェクト運営者に対しては、プロジェクトの他の指導的メンバーが処分を決定し、一時的または永久にこれを与えることができます。

帰属

この行動規範は、Contributor Covenant(貢献者協定)バージョン1.4が土台になっています。http://contributor-covenant.org/version/1/4を参照してください。


もちろん、プロジェクトにこの行動規範の文言を単純に組み入れただけでは、世界の問題や不平等を解決できるわけではないが、これを採用して、これに従って行動することが、よりよい世界への第一歩になる。

見ての通り、書かれている内容はごく当たり前のことだ。ただ、お互いに常識ある人間として気持ちよく接しましょうと言っているだけだ。

プロジェクトに行動規範を加えることは、重要なステップだ。これをそのまま採用するかどうかは自由だが、自分の基礎を築く上で、貢献者たちにどのように振る舞って欲しいかを考えておくことは重要だ。

写真:Sergii / Adobe Stock

原文