Science

2017.10.02

食べられるイノベーション:ドローンを使ったDIY農場モニタリングシステム

Text by kanai

シンガポールからアメリカ、そしてヨーロッパ全体に向けて、Edible Innovations(食べられるイノベーション)は、生産から流通から販売までのあらゆるステージで世界の食料システムを改善しようと考えるFood Makerたちを紹介しています。私たちといっしょに、この産業の大きな流れを、Makerの視点で探ってみませんか。優れた教育的な核を持ち、未来への偉大なる挑戦のための主要なツールとしてフードイノベーションを推進するFood Innovation ProgramのChiara Cecchiniが、世界のFood Makerたちの顔、話、体験を紹介します。


10-1024x768

今日はネパールのMakerに話を聞いた。ネパールは、経済のほとんどを農業に依存している美しい国だ。しかし、農業がこの国の屋台骨でありながら、穀物の病気を監視する効果的な方法がないために、病気による損害は最大で14パーセントにのぼっている。そこで、Sumanは安価なDIY農場モニタリングシステムを自作しようと思い立った。

Suman Ghimireについて

Suman Ghimireは、若くてエネルギッシュなMakerだ。自分の国をよりよい方向に変化させようと、つねに情熱を燃やしている。彼は、2015年にネパールを襲った地震で被害を受けた何百万人もの若者の代表だ。家は失っても、希望は失わなかった。「私はDIYレベルから再出発することにしました。リスタートしてインパクトのあるものを作る。それは何かを作るときの基本でしょ」と彼は言う。

12-768x1024

どこから始めたの?

まずはカメラから手を付けました。農業用のモニターシステムに適合させるためにハックする必要がありました。最初に行ったのは、モニター方法を考えることです。その前に、植物の基本を説明しましょう。すべての植物は、光合成を行うために、太陽光の中の青と赤のスペクトルを吸収します。そのために、植物は入射した赤外線をすべて反射させます。なので赤外線を使えば、全体的な入射放射エネルギーの情報が得られます。また、青か赤のチャンネルを使えば、光合成のために植物が吸収した放射エネルギーの量がわかります。これらの入射光と反射光を画像処理パイプラインに通すことで、植物の光合成の活動状況を簡単に把握できるようになるのです。これを利用して植物の健康状態を測ります。

それで何をどうしたの?

市販されているデジタルカメラは、近赤外線までは感知できます。しかし、光合成の状態を知るためには、人間の目に似せて赤外線をカットするフィルターをレンズの前に装着した通常のカメラではダメです。そこで私は、一般向けのデジタルカメラを購入し(約50米ドル)、赤外線フィルターを外しました。

15-768x1024

それで成功した?

いえ、最初のプロトタイプでは、すべてのチャンネルに近赤外線スペクトルが混入してしまいました。失敗です。

どう解決したの?

懸命に文献を調べ、パブリックラボのコミュニティフォーラムの協力も得て、赤外線フィルターをデュアルバンドのパスフィルターに交換したのです。それにより、青と緑のスペクトルを遮っていたバンドが分離されて、赤と近赤外線のチャンネルを捕らえられるようになりました。私は畑に行き、ドローンを使ってカメラをテストしました。分光放射計の計測値を使ってホワイトバランスを取り、カメラを補正しました。こうすることで、赤と近赤外線の2つのチャンネルの混入が抑えられます。そして、植生指数を計算できるよう、カメラのデジタル・ナンバー(DN)を反射率に変換しました。これはうまくいきました!

すごい! つまりあなたはカメラをハックして、テストして、いい結果を得たのですね。次は?

これをどう畑で実用化するかを考えているところです。安くて持続性のある方法でカメラを飛ばして適正な画像を撮影するのに、太陽熱気球が使えないかを検討しています。それが次のプロトタイプになります。


Sumanは、すでにある情報を活かすことで社会に前向きなインパクトを与えられることを証明している。それは、周囲の環境が大変な状況にあったとしても可能なのだ。

原文