Electronics

2017.10.06

オンデマンドで雷を作る男

Text by Goli MohammadiTranslated by kanai

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電気技師のGreg Leyhは、高圧電気の達人だ。彼は電気を招き、計測し、支配する。2007年、ベイエリアで開かれた最初のMaker Faireに、彼は高さ3メートルのテスラコイルを出展した。また彼は、「Make:」英語版vol.11でも紹介されている。しかし、そのテスラコイルは、彼がそれ以前に作ったものとは比較にならない。どう軽く見積もっても、彼は生涯をかけた熱狂者であり、高圧電気の研究者であり、雷の化身だ。彼がその前に作った2つのテスラコイルは、当時は世界最大の規模を誇っていた。2つは 4万ワットのコイルで、7.5メートルのアークを飛ばすというもの。Survival Research Labsと協同で、リサイクル品から作り上げた。もう1つは 13万ワットのコイルで、アーティストのEric Orrの依頼で製作したものだ。こちらは高さがビルの4階に相当し、15メートルのアークを飛ばす。

Leyhの最新の活動は、雷がどのような役に立つかを調べる装置を作ることだ(信じられないかもしれないが、まだよくわかっていないのだ)。古くからある理論では、雷雲の中の電界は非常に弱く、溜まった電気を放電できないことになっている。では、母なる自然はどんな魔法を使っているのだろうか? 複雑な理論はいろいろあるが、雷のとらえどころのない性質(そして危険性)のために、どれも実証が困難な状態だ。だからLeyhは、雷の第一段階となる決定的なきっかけを再現するための理想的な装置を作ろうとしている。それは、およそ90メートルの間を開けて建てられる高さ36メートルのタワーだ。それを使って、雷雲に似た電界を作り出す。だがその前に、3分の1スケールの高さ12メートルのタワーで概念実証を行う準備を、5年かけて重ねてきた。

ところが、あと少しでタワーが完成するという段になって、彼が8年間利用してきたイーストベイの有名な工業系ワークスペース、American Steelにハシゴを外されてしまった。建物はニューヨークの投資家に売却されてしまったのだ。彼の科学研究は、新しいスペースの方針にそぐわなかったようだ。Leyhはどうしたかって? 移動式にしたのだ。詳しいことを本人に話してもらった。

雷に惹かれたのはなぜですか?

巨大スケールの電気物理学の研究は、私の趣味です。知れば知るほど驚きがあり、永遠に魅力が尽きません。なんと、従来の電気理論では、雷は起こり得ないことになっているんです。21世紀の世の中では信じられないことですが、雷雲がなぜ雷を発生させるのかは、まだわかっていません。

雷の研究に興味を持ったのはいつですか?

ずーっと前からです。私はテキサスで育ったので、いつも屋根に上って南から迫ってくる雷雲を眺めていました。90年代の後半に、雷雲の中にガンマ線を探すという研究が始まったのですが、そのとき私は、もっと直接的な方法で雷の謎を解明したいと考えたのです。

最初にテスラコイルを作ったのはいつですか?

大学1年のときでした。私はそもそも、機械式共鳴器を使ったテスラの悪巧みについて研究していました。テスラの共鳴コイルを作る前に、手始めとして機械式共鳴器を作ったのです。

2007年に高さ3メートルのテスラコイルをMaker Faire Bay Areaで展示したとき、どんな反響がありましたか?

2つのタワーという概念に好奇心を抱いた人が大勢いましたが、ワイヤレスで電気を送って車を動かす実験にも人気がありました。その車は、コイルの周囲に発生させた電界の力だけで走行するというものでした。テスラの「無線電信」のコンセプトに基づいています。

Survival Research Labsと作ったコイルで、もっとも勉強になったことは?

拾ってきた、または寄付された材料からでも最新技術が作り出せるということを学びました。シリコンバレーには、最終的にゴミ箱行きとなる最新技術が山ほどあるんです。

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Eric Orrのキネティック・アートとして作ったコイルでは、何を学びましたか?

高圧ターミナルの内部(直径2メートルあります)に立って、作動中にアークの様子を観察できたのが、もっとも予想外の成果でした。それで判明したのは、アーク放電は、滑らかに成長するのではなく、段階的に小さな幹が増えていくということでした。雷雲から雷がステップ状に幹を伸ばして落ちる状態によく似ています。その実験の宣伝動画がありますから、よかったら見てください。

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American Steelで作業していたころは、どうでしたか? さまざまなアーティストや研究者に囲まれていたわけで、あなたの研究にも影響がありましたか?

American Steelの時代には、素晴らしい出会いや協力がありました。普段なら距離を置くであろう、モヒカン刈りの派手な大男と出会ったことがありますが、実は彼は溶接と組み立ての達人だったのです。結局のところ、12メートルのタワーのほとんどを彼に作ってもらうことになりました。彼の名前はAlex Woodward。American Steelがなくなった今でも定期的に会って、一緒に作業していますよ。

American Steelを買収したニューヨークの投資家をどう思いますか? あの一件はコミュニティにどう影響しましたか?

2016年10月、私たちは買収が目の前に迫っていることを知りました。当初、みんなは買収先に期待していました。「活発でアーティスティックなコミュニティをそこに残す」と言っていたからです。なので、みんなは火気の取り扱いなど、新しいオーナーの基準に合わせるように大変な努力をしました。しかし取り引きが完了するなり、彼らはワークスペースを代表する多くのアーティストを無情にも追い出してしまったのです。そのなかにはKaren Cusolitoもいました。そして他のアーティストたちも居づらい状況となり、多くの人たちが去って行きました。

私も、そこに居続けるための条件を話し合うなんてことは一切なく、追い出されました。単に「合わない」というだけで。私の高圧電気の研究室を見た新しい投資家の一人に、「これは私のDNAに影響しないか?」と聞かれました。そのとき、これは大事だと感じました。そこは彼らの持ち物であり、彼らの好きにしてよい場所ではあるけれど、活発でアーティスティックなコミュニティをそこに残すと言って売り主や市議会のご機嫌を取っていたことを考えると、あまりに不誠実な態度です。

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Lightning on Demand(LOD)を思いついたきっかけは?

巨大スケールでは、電気は普段とは違う挙動を示すという事実は、通常の研究室のスケールでは再現できません。LODは、こう問いかけます。「巨大スケールでの電気の驚くべき効果を再現し、その働きを解明できる技術を、我々は有しているのか?」と。私は、3文字ドメイン名が自由に使えるようになる前に、LODを開始しました。

雷の研究には、どんな恩恵がありますか?

雷雲が、比較的小さな電界で巨大なアークを生み出せる秘密がわかれば、たとえば、世界の電源グリッドを1つにまとめる巨大スケールの電気送信システムが実現します。そうなれば、風力や太陽光で発電された電気を、暗い地域や風のない地域に、競争力の高い価格で販売できるようになります。

作業場を移動式にしたのは、なぜですか?

ベイエリアの住宅難によって、住宅開発業者は、それまで見向きもされなかったAmerican Steelのような区画にも住宅を建てるようになりました。数年前まで重工業用のスペースはいくつかありましたが、American Steelが最後となりました。12メートルのコイルのプロジェクトを続けるためには、急速に高級住宅地化する工業地区の中に生き残れる場所を探さなければなりません。その完璧な答が、移動式研究室でした。それなら、いろいろな場所でコイルシステムを展開して実験し、すぐに片付けて退散できます。もう建物は必要ありません。

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作業場には、どんなツールがありますか? そこのレイアウトを簡単に教えてもらえませんか?

トレーラーの中には、テレスコープ式の12メートルのタワー、制御用の電子機器、電極、計測機器、その他の補助装置と、タワーの組み立てや修理のための工具を積み込む予定です。また、タワーの頂上に電極を取り付けるための、小さなクレーン2台を支える折りたたみ式のレールシステムも搭載します。「本日の特別実験」のための機材も揃っています。すべての機材が準備できています。タワーは95パーセント完成しています。残るはトレーラーだけです。そのために、私たちはクラウドファンディングを計画しています。楽しい特典も準備しています。世界最大のテスラタワーに興味をお持ちの方には、ぜひとも寄付をお願いしたい。寄付が無理なら、話を広めてくれるだけでもかまいません。

原文