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2018.10.15

メイキングを通じて現実社会の問題を解決するYoung Makerたちがどんどん増えている

Text by Connie Liu
Translated by kanai


Stria開発チームの生徒たち。視覚障害者のための技術を一生懸命に開発して楽しんだ

昨年の秋、Project Inventは、ある高校生のグループを、最近になって失明し、道を歩くのに苦労しているという29歳のJimmyと引き合わせた。この高校生たちは、横断歩道を渡っているときに道をそれてしまう危険がある視覚障害者の問題を解決するという挑戦を引き受けた。彼らには、何を作れとは言わなかった。彼ら自身で取り組みたい問題を探し出し、その最良の解決策を考え出すことになっていた。

この高校生たちに限らず、Project Inventに所属する多くの人たちは、これまでに、社会的不安、性的暴力、PTSDなどに対処する革新的な技術を数々生み出してきた。そうした発明の背後には、それぞれに彼らが属する社会で暮らす生身の人間の事情がある。

Project Inventで、私たちは、若い人たちにインパクトを引き起こす力を与えている。誰もが世の中を変えられるだけのアイデアを持っているが、それを実現させるだけの力を与えられてこなかった。

私もそうだった。大学に入りたてのころ、クリエイティブなアイデアは、一握りの天性を持つ人が思いつくもので、自分はそうした人間ではないと思い込んでいた。それから数カ月後、私は、FingerReaderの研究を行っていた。カメラを搭載し、文章の音声変換を使って、目の見えない人たちのために文章を読み上げる指輪だ。


指に装着して本の文章を読み取り、その場で音声で読み上げるFingerReader

私は決して頭が良かったのではない。重要な問題に取り組む特別な機会を与えられただけだ。

しかし、今の若い人たちが現実世界にインパクトを与えられる機会は、とても少ない。高校のメイカースペースで指導をするようになったとき、以前の私の敗北者的な考えは、私だけのものではなかったことに気がついた。非常に多くの生徒たちが、自分たちはクリエイターではなく消費者だと思い込んでいた。目に見えている世界の問題を解決することなど、自分には不可能だと信じていた。それ以来、私は、生徒たちに自分たちが望む世界を活発に築いてゆくための自信とスキルと持たせて、力を与えることが自分の使命だと考えるようになった。そして、次の世代がよりよい未来を作るための触媒になるために、Project Inventを設立した。その手段は作ること、メイキングだ。

メイキングによって、生徒たちは自分のアイデアを現実のものにできる。文字通り、自分のアイデアを自分の手の上で感じることができるのだ。自分を奮い立たせる力となるものは、それ以外にはそう多くない。メイキングを通して、生徒たちは、自分はなんでも作れるのだという自信がつく。そして、それが社会的なインパクトをもたらすこと、自分たちが作ったもので世界が変えられるということに気がつく。

手を振ると照明が灯るようなものを生徒が作れたとしたら、それは魔法のような感覚だろう。しかし、もしそれを、お年寄りが暗い階段で、手を振ると明るくなって安全に下りられる装置だと考えたならどうだろう? 現実世界の人や問題にメイキングを結びつけることで、メイキングがなぜ重要なのか、生徒たちはその新しい意味を知ることになる。

さらに、インパクトのあるものを作ることは、それはメイカースペースへの扉を開くことにもなる。最初はメイキングに消極的だった生徒が、本当にインパクトのあるものを作ろうと思うようになるのだ。Polinaという生徒がいた。3年生のときに初めてメイカースペースにやってきた。彼女は自分をMakerだとは思ってはおらず、ロボティクスや3Dプリンターなどのメイカースペースによくあるものには興味を示さなかった。しかし、もうすぐ大学に進学する彼女は、大学での性的暴力を減らすことに情熱を抱いていた。そして彼女は、身に危険が迫ったときにすぐに友人や警察が呼べるスマートウォッチの開発をProject Inventで行うことで、その不安を克服した。自分を過小評価しがちだったPolinaだが、「Project Inventで、自分は学べるのだということ、そして、心を決めればなんでもできるのだということを知りました」と話していた。彼女は現在、ボストン大学に通い、起業家センターで製品の開発を続けている。

視覚障害者が横断歩道からそれてしまう問題に取り組んでいた高校生たちは、とうとうStriaと出会った。目の不自由な人たちが横断歩道から危険な車道にそれてしまうことを防ぐウエストバンドだ。それから1年もしないうちに、彼ら若きMakerチームはいくつもの賞を受賞し、3,000ドル以上の賞金を手に入れ、その作品とともに数多くのメディアに取り上げられた。

現在彼らは、特許の申請を行い、会社を立ち上げる準備をしている。


スタンフォード大学d-schoolで毎年開かれる展示会、Deno DayのためにUnwindのデバッギングをするMorgan(左)とEmma(右)。

メイキングを通して生徒たちが現実の問題を解決したとき、彼らは作るためのスキルだけでなく、他人に共感する力、チームワーク、効率的なコミュニケーション、謙虚さなど数多くのことを同時に学ぶ。ある生徒は「Project Inventのメンバーになったことで、教室では教えてくれない方法で成長できました。チームで、マーケティングやビジネスや法律といった現実社会の制度の中を動き回って、プロとして仕事をする方法も学びました」と話してくれた。現実の問題をメイキングで解決できると、Makerにも社会にも恩恵がもたらされる。私たちは、生徒たちに社会を変えるよう奨励し、社会は自分たちのためのデザインで元気をもらう。よりよい世界をデザインするよう若者たちに刺激を与えることを目的とする私たちは、よりよい、より安全な、より公平な未来を作るための能力と責任の両方が彼らにあることを教えなければならない。Project Inventを通じて私たちは、メイカースペースこそが学びの場であることを知った。生徒たちに、世界は変えられるという力と希望を抱かせることができる場所は、アイデアを実物にするためのメイキング専用のこのスペースをおいて他にはない。

生徒にメイキングを教えて社会にインパクトを与える人間に育てたいと思われた先生は、私たちの最新のカリキュラムをご利用ください。ウェブサイトから無料ダウンロードできます。デザイン思考、エンジニアリング、起業など、7つの授業計画と30以上のツールが揃っています。この授業を通して、今すぐにでも、生徒たちは自分たちの社会が直面している現実の問題の解決に乗り出すことができます。

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