Electronics

2009.12.04

LabVIEWを使ってNi-MH充電器を作る – 読者限定キャンペーン(3)

Text by tamura

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日本ナショナルインスツルメンツ社から、Make: Japan読者限定キャンペーンのお知らせです。その内容は同社のNI LabVIEW 2009プロフェッショナル開発システムとNI USB-6008データ集録(12ビット、10kサンプル/秒 アナログ/デジタル入出力)、総額約65万円の電子工作ツールセットを19,800円(税抜)で提供するというもの。組み込みシステムの開発に使われているツールも、アイデアによってはMake読者にも楽しめるような意外なプロジェクトにも使えます。
今回は、Ni-MH充電器の制作記を寄稿してもらいました。
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数年前、電池で動くWalkmanを使っていた。MP3オーディオ? あんな音をヘッドホンで聞くなんてどうかしてる。大量の使い捨て乾電池に胸が痛み、ニッケル水素充電池も買ったのだが、2〜3回使っただけで6本中4本が充電できなくなってしまった。純正の充電器に入れると最初のチェックで異常と判断されてそこから進まないのだ。大ざっぱで微弱な化学反応に敏感過ぎる電気的安全回路は無力だ。あきれてジャンク箱に放り込み、もう充電池など信用しないと心に誓った。
最近までその誓いを守っていたのだが、Wiiリモコンという新たな浪費家が出現したことで、その充電池をジャンク箱から引っ張り出さざるを得なくなった。どうやら自分で充電器を作るしかないようだ。調べて見るとIC&C方式というものがあるらしい。急速充電ができる上、電池寿命も公称回数より延びるとか。すばらしい! 参考にしたのは次のサイトだ。
テクノコアインターナショナル(株)さんの技術資料
きじとらPC工房さんのニッケル水素充電器の製作
技術資料では、約1.8Vで0.1Ωのダンパー抵抗を通して充電。定期的に休止して解放電圧を1.4Vと比較していることがわかる。ただし値は一例だろう。製作記事のほうはかなり具体的だがオペアンプやマイコンを使っていて、実験にしては敷居が高いような気もする。それに、定数を決め打ちするのはまだ早い。
いろいろ条件を変えて実験(シミュレーションではダメ)するには”バーチャルインスツルメンツ”が最適だ。現実世界とのインタフェースはA/DおよびD/Aコンバータ、デジタルI/Oに任せ、機能のほとんどをアプリケーションソフトウェアで実現する。
回路は抵抗とMOSFETだけにして、NIのマルチファンクションDAQでPCから制御する。プログラムはLabVIEWで組んだ。充電電圧が希望の値になるように、MOSFETのゲート電圧をフィードバック制御すると同時に、シーケンスの管理とユーザ操作の処理を行っている。アーキテクチャとしてはキューメッセージハンドラに分類される。解説は長くなるのでやめておくが、これだけでもたいていのシーケンスは組める。LabVIEWは完全な構造化言語だ。
パラメータはすべてフロントパネル上で変更でき、2台の充電器を独立して扱えるようになっている。なぜ4台じゃないのかって? それは今回使ったUSB-6009のアナログ出力が2chしかないから。ちなみにもっと安価なUSB-6008でも代用できる。
結果はほぼ成功と見ていいだろう。純正の充電器では充電できないバッテリでも充電できるし、定抵抗放電させて電流×時間を積算したところ、公称容量の80%近くもあった。トレンドグラフからは、充電中に電流が増えていく期間と減っていく期間があることがわかる。休止期間は2分くらいで解放電圧が落ち着くようだ。電池の個体によって電流の変化パターンが大きく違っているのが、コストの厳しい純正充電器で対応できない理由だろう。電池を手で触ると生暖かい程度で、純正品のときよりもずいぶん温度が低い。つまり80分前後の短時間で充電できる上、電池へのダメージが少ないということだ。
MOSFETの放熱器をその辺に転がっていたアルミ板にしたため、電池の周辺温度が上がってしまう。充電電圧や充電と休止の時間、満充電の判断が最適かどうかまだわからない。余っているアナログ入力チャンネルにサーミスタをつないで、電池の温度を測りながら充電電力を自動調節する仕組みも搭載してみた。
– J.H.Watson

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