Science

2007.11.13

ファインマンとアリンコ

Text by kanai

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ジェル状のアリ観察キットを販売しているLanBoのサイトに、好奇心旺盛な物理学者として有名なRichard Feynman(リチャード・ファインマン)のDIYアリ観察の体験談が載っている。-

「私は、ほかのアリたちがどれくらいの時間で「船着き場」へ行けというメッセージを受け取るかを確かめたかった。最初はゆっくりだったが、いきなり数が増えて気が狂いそうなほどアリの移動が大変になってしまった」しばらくして、彼は、アリを砂糖の場所ではなく別の場所へ運ぶことにした。すると、砂糖のところへ運んでもらえる地点へは1匹も来なくなった。前のアリの後を追うだけで、砂糖のところへは行かない。
ファインマンはアリを使った別の実験も行っている。そのひとつは、顕微鏡のガラスのスライドを並べて砂糖を置き、アリにスライドの上を行き来させる。その後、スライドの並び順を変えたり、新しいスライドを入れてみたりする。するとアリは混乱して砂糖のところへ行き着けなくなる。「アリがそこに何らかの痕跡を残していることが、ガラスのスライドを並べ替えることで明確にわかる」と彼は結論づけている。
彼は、その痕跡に砂糖の場所を方向を示す要素が含まれているのか、それともただ、そこを歩いたというだけの印なのかを確かめようとした。また、その痕跡はどれくらいで消えるのかも確かめたかった。「アリをある地点から輪を描くように歩かせようとしたかったのだが、私は根負けしてしまった」と彼は述べている。
それから10年以上経過し、マンハッタンプロジェクトなどの数多くの重要な業績を残したあとも、ファインマンはまだアリと戯れていた。彼はイライラしていた。アリの地理的感覚を証明するための実験が思うようにいかなかったからだ。「なぜアリの道筋はこんなにも真っ直ぐで美しいのか?」という疑問を彼は抱き続けていた。そのころ彼はカリフォルニア工科大学で教鞭をとっていた。

Feynman and ants (英語)- Link
– Phillip Torrone
訳者から:1965年にノーベル物理学賞を受賞したファインマンの話。最初に出てきた実験は、窓枠に砂糖をのせたボール紙を吊るし、窓枠に歩いて来たアリを紙で救ってそこに運んでやり、また元に戻すというものだった。だから、紙で救う場所が「船着き場」というわけ。アリンコの研究が彼のファインマンダイヤグラムに共通しているそうで、1ぺージの簡単な文章だけど(英語だけど)、とっても面白い。
[原文]