Electronics

2010.08.10

mbedと互換性があるマイコンモジュール

Text by Takumi Funada

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mbedは使いやすくてパワフルなマイコンモジュール。そのコミュニティは着々と成長しているようです。ここでmbedの特徴をおさらいしておきましょう。
・強力な32ビットプロセッサ(ARM Cortex-M3)
・Ethernetをはじめとする充実したインタフェイス
・デバイスドライバ不要(ホストとはUSBメモリとして接続)
・インストール不要なWebベースの開発環境(IDE)
・IDEと連動する高度なコミュニティ機能
標準ハードウエアNXP LPC1768は6000円前後で入手でき、数百円相当の部品を付け加えるだけでLANにも接続できることを考えると、コストパフォーマンスは良好です。
とはいえ、使っていると、不便さを感じる点もいくつか出てきます。コストパフォーマンスはいいのですが、複数のプロジェクトを進めているときや、いくつものマイコンが必要なとき、6000円近くするモジュールを何個も用意するのはちょっと負担です。また、今のところ回路図等の技術情報が完全には公開されておらず、深掘りしようとすると壁にぶつかることもあります。mbedの資源が利用できる、もっとシンプルで廉価なモジュールがあると良さそうです。
で、ここからが本稿の主題。NXPから発売されたLPCXpresso-LPC1768は、mbed NXP LPC1768と同じプロセッサを搭載し、バイナリレベルの互換性を持つマイコンモジュール。価格は22ユーロ(約2480円)とお手頃。mbed環境で作ったものをコストを押さえながら再利用したいときにありがたい存在となりそうです。
回路構成が一部異なるため、完全な互換機ではない点には注意してください。まず、LPCXpressoはUSBメモリとして接続するためのインタフェイスを持っていません。代わりに、専用IDEに付属するツールを使ってDFU経由で書き込みをするのが簡単な方法です(mbed.org Notebook)。また、LANインタフェイス(PHY)が異なるため、Ethernetを使うコードはそのままでは動作しません。IOピンはLPCXpresso-LPC1768のほうが14本多くなっています。ピン配置に互換性があり、mbedと差し替えて使うことも配慮されています。
実際にmbedの簡単なコードをLPCXpresso-LPC1768で動作させてみたところ、戸惑うようなことはありませんでした(ツールチェーンのセットアップをする際、eleki-jack.comで公開されている田中範明さんの記事が参考になりました)。mbed上で開発し、安定したらLPCXpressoへ移植するという方法は現実的に思えます。
追記:LPCXpresso-LPC1768の国内販売は近日中に始まる予定とのことです。