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2011.10.07

Zero to Maker(ゼロからのMaker):溶接を習う

Text by kanai


これから1カ月ちょっとの間、ちょっとヤル気のなかったMaker、 David LangがMakerカルチャーに身を沈め、我らの仲間、TechShopの寛大なるご協力のもと、できる限りのDIYスキルを習得していく様子をレポートします。彼は、何を学んだか、誰に会ったか、どんなハードルをクリアしたか(またはしなかったか)など、奮闘努力の過程を定期的に報告します。きっと面白いものになるよ。 – Gareth
先週末、私は知人の結婚式に出席し、久しぶりに会う気の知れた旧友たちとテーブルを囲んだ。私たちは順番に近況報告をすることとなり、私の番がまわってきた。そこで私は、また自分の手で物を作り始めたこと、そして溶接の方法を習ったことを話した。すると友人のひとりの目が輝いた。彼は数年前から溶接を習いたいと思っていたのだそうだ。頭に思い描いている理想の焚き火用グリルを自作するためだ。彼のガールフレンドも、残りの連中も、イケアかコストコかアマゾンで買えば早いと口を揃えて言ったが、みんなは彼の気持ちがわかっていなかった。数ヶ月前までなら、より経済的なガールフレンドの案に賛成していただろうが、今は違う。私は彼のプランを聞き、なんと驚くべきことに、ちょっとしたアドバイスまでしてやった。
David(右)とTechShopのインストラクタ、Gregg Gemin(写真提供:Andrew Taylor, TechShop)
2つの金属片を結合させる作業には何かがある。人はそれに興奮して興味を抱く。溶接マスクやトーチや火花といった外見上のかっこ良さを別にして、私は溶接の何に惹かれたのか、自分でもわからない。何回か講習を受けた現在、私は溶接の種類とその用途を理解し、実践を重ねることで、溶接技術もなんとか様になってきた。TechShopの溶接インストラクタ、Gregg Geminが言うには、溶接は1マイルほどやらないと上達しないとのことだ。私の場合、あと5275フィートやらないとダメだということになる。だから早く始めるに越したことはない。溶接のタイプの違いを説明できるまでになった私は、友人に溶接の手ほどきをしてやることができた。私が学んだことは、次のとおりだ。
ミグ溶接
私の初めての溶接体験は、TechShopでのミグ溶接講座でのことだった。そのときはまだ、溶接にはいくつかの種類があることは知っていたが、詳しいことは知らなかった。ミグ溶接は、長い溶接ワイヤ(2つの金属の充填剤となる)を電極に使い、不活性ガス(アルゴンや二酸化炭素など)で溶接箇所の酸化を防ぎながら行う溶接技術だ。何はともあれ、ミグ溶接は、自動的に溶接ワイヤを繰り出す機構もあり、いちばん習得が早い。
Greggは、安全対策と準備に長い時間をかけていた。どちらも溶接にとって重要なことだ。私の他にも数名の受講者がいたが、そのあたりの意識には、多少の温度差があったようだ。Gregの準備が完了すると、我々はひとりずつアークを飛ばすことができた。正直言って、最初の私の挑戦はボロボロだった。暗いマスクのガラスと手袋をとおして伝わるトーチの感触に慣れるまで、鉄板の上をあちこち跳び回って、なかなか接合部分に狙いが定まらなかった。
ティグ溶接
ミグ溶接は自動的に溶接ワイヤが出てくる仕掛けになっていたので、溶接作業に集中でき(それでもボロボロだったが)、速度と角度で溶接具合が違ってくる。それに対してティグ溶接は、方式が少し異なっている。タングステンの電極と溶接する材料との間のアークを調整して材料を熱しながら溶加棒を押し当てなければならない。ちょっと複雑な作業になるが、ミグ溶接をすでに経験していたおかげで、溶接マスクを通して見ることに慣れてきたということを差し引いても、私のティグ溶接は驚くほどうまくいった。Greggの話によると、ティグ溶接は、ミグ溶接に比べて時間もコストもかかるが、精度の高い溶接が可能なのだそうだ。
ガス溶接
最初のZero to Makerの記事を書いたあと、MauiJimがTM Technologiesと彼らが主催する金属加工講座を受けてほしいとコメントをくれた。それを受けて調べてみると、ネバダシティで、Kent “The Tin Man” Whiteによる週末の金属加工の基礎教室と、4日間の金属加工集中教室が開かれていることがわかった。サンフランシスコから北西へ3時間の距離だ。幸いにも、その数週間後の週末に、ガールフレンドの両親に会うため、ネバダシティを訪れる計画を立てていた。ところが不幸なことに、その週末は教室が開かれないことを知った。そこで私は、ダメ元でTin Manに連絡をとり、彼の工房を見せてくれないかと頼んでみることにした。私は、自分の身元とZero to Makerの目的を伝え、Makeのためのインタビューをしたいと電子メールで申し込んだ。数日後、彼からこんな返事が来た。

いいともさ。来る前に電話をくれたら、クマどもに餌をやっておくよ。

日曜日の朝、彼の工房へ車を走らせた私は、当然のことながら少々緊張していた。しかし、結果的には、Kentと過ごした時間は、これまでの私の旅のなかで、もっとも啓発的で実りあるものとなった。Kentは私にガス溶接(アセチレン溶接)教室を開いてくれたばかりでなく、Zero to Makerのコンセプトに対する彼の意見も話してくれた。彼は私の考えをよく理解してくれた。世代が変わるごとに金属加工職人が減っていく現状を憂慮している彼は、現在、ガス溶接指導の世界的な第一人者とされている。大変に優秀な技術者であることは間違いないが、他にガス溶接を教える人間がいなくなってしまったからだ。彼は、金属加工を始めるにあたっての、とても貴重なアドバイスをくれた。

これから始めようという人への私のアドバイスは、まず読んで、見て、質問して、それから何を目指すかを決めるということだ。そして、簡単なところから始める。スケッチの描き方、測り方、印の付け方、切断、ヤスリがけ。次に、ドリル、面取り、折り曲げ。さらに、リベット、ボルト、ネジの使い方。金属の性質と応用法を学んで、ある程度の技術が身についたら、ようやく熱いものを学ぶ。未熟なうちに飛びついて髪の毛を燃やすのは愚かなことだ。

私は、アーク溶接ではなくガス溶接を好むのはなぜかと尋ねた。その答えはこうだ。

ガス溶接はシンプルで、持ち運びも楽で、電気を使わない。ミグ溶接やティグ溶接と違って、清潔な環境や無風状態も要求されない。周囲の人がアークの光で目を痛める心配もない。鉄、アルミ、ステンレス、銅など、何種類もの材料の薄板や管にも使える。同じ道具で、ハンダ付け、ろう付け、焼きなまし、熱間加工、着色、それに場合によっては切断もできる。あの変チクリンな電気の機械では、そこまでできないだろう。

Tin ManとTechShopのインストラクタと過ごした時間は、溶接技術習得のこの上ない入口となった。まだまだ先は長い(ほとんど1マイル残ってる)けど、次に何をすればよいかが判断できる程度には知識を得ることができた。「怪我をしない」段階になれたのだ。
参考資料
Make: Projects Welding Primer – 初心者向けの素晴らしいチュートリアル。溶接教室を受講する予定のある人でも、事前にこれを読んでおけば、基礎知識を持って始められる。
TechShopのミグ溶接コース、ティグ溶接コース – TechShop の教室はどれもそうだが、初心者への教え方がうまい。トーチに一度も触ったことがない人でも、2時間の教室(60ドル)の間に、経験豊かなインストラクタの指導のもとで、ある程度の感触が掴める。
TM Technology Workshops – Tin Manとは日曜日の午前中を過ごしただけだが、多くのことを学んだ。時間と予算があれば、ぜひとも4日間の金属加工集中教室に参加したいものだ。
この他に、溶接を学びたい人のための初心者向け教室を知っている人は教えてください。
これまでの話はこちら:Zero to Makerの旅
– David Lang
原文