Crafts

2011.10.28

Zero to Maker:物作りの入口……スケッチ

Text by kanai


ちょっとヤル気のなかったMaker、 David LangがMakerカルチャーに身を沈め、我らの仲間、TechShopの寛大なるご協力のもと、できる限りのDIYスキルを習得していく様子をレポートします。彼は、何を学んだか、誰に会ったか、どんなハードルをクリアしたか(またはしなかったか)など、奮闘努力の過程を定期的に報告します。きっと面白いものになるよ。 – Gareth
Zero to Makerのコラムは、単に学ぶことの素晴らしさを伝える記事というだけでなく、会話を始めるのにちょうどいい話題にもなっていた。おかげで、「で、何をなさっているんですか?」という平凡な質問に対してユニークな返答ができるようになり、さらに、気になるMakerに正面から近づいて、アドバイスをもらうということも可能にしてくれた。電子メールでもSkypeでも、直接会って話すときでも、私はかならず、駆け出しMakerへのアドバイスをいただくことにしている。その答えの大半は、とにかく作り始めること、という意味のバリエーションだ。まずは失敗すること、道具を使ってみること、自分の手を動かすこと。すべて正しい。しかし、私ならもうひとつのことをアドバイスしたい。絵に描いてみることだ。

今や、初心者Makerでも簡単に使えるソフトがたくさんあるので、昔ながらの紙と鉛筆を使った設計技術は忘れられがちだ。いきなりコンピュータで設計を行うのには、それなりのメリットがある。たとえばレーザーカットを注文するためには、コンピュータでアウトラインデータを作らなければならないし、CNCマシンを使うときは、CADで設計をしなければならないからだ。そのためのソフトは山ほど合って、どんどん便利になっている(価格も下がっているし、MakerBotのような製品や、TechShopのような場所もある)。いきなりコンピュータで設計を開始しようと考えるのは無理もない話だ。だけど、アナログのスケッチは、設計過程において非常に重要な部分を占めていると思う。設計を1と0に変換する前段階として重要であるばかりか、視覚的に物を考える訓練にもなるし、想像力の壁を打ち壊す助けにもなる。それに、なんと言っても楽しい!
私が話したことのある、ほとんどすべての Maker たちは、絵を描くことはとても重要なプロセスだと言っていた。彼らの多くが、愛用のペンや鉛筆をいつも携帯している。そしてほぼ全員が、アイデアを描き記すためのスケッチブックを持ち歩いている。これは、そうすべきだという助言ではない。そのことをアドバイスしてくれた人もいない。しかし、会話の中にかならず出てくる。昔ながらの金工職人、Kent “The Tin Man” Whiteと会ったとき、スケッチブックを持ち歩くことの大切さを聞かされた。AnnMarie Thomasと、彼女が行ったMaker Faireでのプレゼンテーション、Making Tomorrow’s Makers(明日のMakerを育てる)について話していたときも、彼女のクラスの1年生には、かならずスケッチブックを用意させると言っていた。Matthew Crawfordは、著書『Shop Class as Soulcraft』のなかで、彼はもうひとつの趣味として絵を描くことの楽しさを語っている(彼の手描きの絵も掲載されている)。これほど多くの人からその大切さを聞かされていなかったら、彼の物作りに関する深い考察と絵との重要な関連性を見逃していただろう。
もし、今年の初めにコミュニティカレッジでのスケッチ教室を受講していなかったら、こうしたMakerたちの絵の中に共通して流れているものに気がつかなかったかもしれない。何かを作りたいと思うようになる前、私は苦手な絵を克服したいと考えていた。手にペンを握り、まっさらな紙に向かうと、私の背筋には悪寒が走った。何かを描こうとすると、それが道順の地図であれ、仕事の図表であれ、イタズラ描きであれ、ペンを走らせた途端に、己の創造的才能の乏しさに心が固まってしまうのだ。簡単な線画ですら、私を震え上がらせた。
あのスケッチ教室は天の恵みだった。毎週土曜日、私はノートパソコンにしがみつく日課から逃れて、パサデナ・シティカレッジのサンクチュアリに向かう。そこでは、講師が用意してくれた創造性の壁をぶち壊すための活動が待っている。楽しかった。それはよくある絵画教室とは違い、スケッチに特化していた。デザインやアイデアを、素早く、美しく、正しく表現するための技術だ。まさに、私が求めていたところから始まった。ペンを怖いと思わなくなる訓練からだ。そして、線を引く、影を付ける、輪郭を捕らえるという順番で習っていった。初心者が得な点は、ほんのちょっとしたことで大きな進歩が得られることだ。
あの教室で使っていた教科書『Rapid Viz』は、今でもときどき開いては、週のうち数時間は絵を描くようにしている。私が会ったMakerたちにRapid Vizのことを話すと、多くの人がうんうんとうなづき、同じようにこの本で学んだことがあると答えてくれた。デザインの世界では、この本を崇拝している人たちがいる。アマゾンで安く買える。新しいバージョンが出ていると聞いたことがあるが、古いバージョンを好む人が多い(下の写真)。

もしあなたが私と同じMakerの初心者で、今回の話が役に立てばうれしい。熟練のMakerなら、このほかに絵がうまくなるコツを教えてほしい。また、絵を描くこと以外に、プロジェクトの最初にしておくべきことがあったら教えてほしい。
これまでの話はこちら:Zero to Makerの旅
– David Lang
原文]]