Electronics

2012.01.26

新刊『電卓のデザイン』(太田出版)

Text by tamura

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新刊『電卓のデザイン』について、太田出版の村上さんからご案内をいただきました。

この度、編集者としても個人的にも念願だった「電卓の写真集」を刊行することになりました(『電卓のデザイン』、1月26日、太田出版刊)。
電卓は今では100円ショップでも手に入り、携帯電話にもその機能が搭載されている身近なマシンですが、日本最初の電卓(1964年発売)は重さ25キロ、価格が50万円以上したにもかかわらず、四則演算しかできませんでした。本書『電卓のデザイン』は、そんな電卓が世に誕生してから今日までの約半世紀を、新たにビジュアル〜ガジェット視点で眺め直し、オールカラーで紹介するものです。著者は、WEBサイト「電卓博物館」(http://www.dentaku-museum.com/)主宰の大崎眞一郎さん。日本人としてはもちろん、世界でも有数の個人電卓蒐集家です(所蔵電卓数:1000以上!)。
本書ではその膨大なコレクションから約200を厳選、以下の基本ジャンルで構成しました。1)ヴィンテージ・デスクトップ電卓 2)ヴィンテージ・ポケット電卓 3)複合電卓 4)モダンデザイン電卓 5)ノベルティ、キャラクター電卓。
<収録電卓の一例>
ニューヨーク近代美術館収蔵の芸術的電卓「DIVISUMMA18」/世界最初のデスクトップ電卓「ANITA Mk8」/低価格化を一気に実現した日本製記念碑的ポケット電卓「カシオミニ」/フランスLEXONの超先進的流線型シルバー電卓「ZERO25(LC25)」/なぜかソロバンと電卓が合体したシャープの「ソロカル」(電卓に不慣れだった人々は当時、付属ソロバンで再度検算していました)/なぜかボタンを押すためのペンが付属したビジコンのLE-120A(小型化に不慣れだった人々は当時、小さすぎてこれじゃ押せない、と不安でした)/星電器のペン型電卓「calcupen」/最初期の太陽電池式電卓たち/アルゼンチン、香港、旧ソビエトなどの海外電卓、などなど…
“電卓が世の中に出てきた当時は、「電卓」のイメージが確立されていなかったうえ、様々な技術的制約があったことから各メーカーで様々な取り組みが行われ、今では考えられないような独特なデザインの電卓も多数生まれた。中でも他の機能と電卓が合体した「複合電卓」は、限られたスペースに様々な機能を凝縮する必要があり、ボタンの配置や使い勝手に様々な工夫がなされた。こうした「すり合わせ」技術は当時の日本人が最も得意とした技術であり、結果として今の我々には思いつかないような様々な電卓が誕生した”
—-本文「複合電卓」の項より抜粋
著者・大崎さんはこうも記しています。「もし気に入った電卓が見つかれば、その前後から本書を読んでいただきたい。電卓のことがもっと好きになるはずだ」
機能面だけでいえばもうとっくに”絶滅”していてもおかしくないはずの「電卓」はしかし、今も現役で盛んに新製品が作られ、使われている、不思議なマシンです。その魅力・魔力の正体に少しでも迫れればと作った本書、Makerの皆さんにもぜひご一読いただけるとうれしいです。

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電卓のデザイン – 太田出版