2012.03.30
Etsy本社潜入レポート
ブルックリンにあるEtsy本社に入ると、そこが手作り作品を販売するウェブサイトであることが、ロケット科学者でなくてもすぐにわかる。受付係が荒削りの細長い手製デスクで出迎える。彼の背後には木の枝で作ったランプスタンドがあり、壁紙はブリキを貼り付けたようなデザインだ。蛍光灯や非常口のサインがぶら下がる4メートル近い天井を見上げると、空調ダクトに金と白の「毛糸爆弾」が。これは毛糸爆弾の母であるテキサス州オースティンのMagda Sayegによるもの。彼女の落書き的編み物作品を集めたKnitta Pleaseでは、さまざまな毛糸爆弾作品が見られる。
「ここを訪れたすべての人に、Etsyに来たんだと思いっきり実感してもらいたいのです。ここにあるすべてがサイトから来たもの、つまり手作りです」と、Etsyの広報担当者、Adam Brownが説明してくれた。彼の任務はこの言葉で達成された。
地方新聞社の編集部ほどもある作業場に向かう途中に、ここが普通の会社のオフィスではないことを示すものがあった。屋内用自転車ラックだ。1月の終わりにここを訪れたとき、ラックに置かれていたのは10台ほどだったが、ラックは外まではみ出していた。自転車の背後の白い壁には、Etsyの5周年記念パーティーの際に描かれた黒い線画で埋められていた。Etsyでは、利用者から、買った物でいちばん気に入っているものは何かをTwitterで募集したところ、一番はメイソンジャーの針山、地下鉄のトークンを使ったカフスボタン、Emotion Mittens(表情のある手袋)だった。
優れた木工製品に目が利く人のように、私は大きな部屋に入るなり、そこに置かれていた手作りのテーブルが目に入った。全体に天然の木目が活かされた作りだが、縁はオレンジに紫のストライプや、青い波模様が描かれている。そこから手が出ていて、漫画の吹き出しに「Help」と書かれている。この手は、激務に追われたEtsy社員のものではないかと推測した。いくつかの机は脚を伸ばし高くして、立ったまま仕事ができるようになっていた。これらの机は、ブルックリンの家具職人、Craig MontoroとBryan Mesenbourgの作品だ。彼らはParts and Labor Workshop という工房を開いている。立ったまま仕事できる机の改造は、事務管理部のReade Bryanによるもの。従業員から不満が出れば、すぐに座って使う机に戻せるようになっている(なかなかクールだが、Instructables.comのサンフランシスコオフィスにあるスタンドデスクには負ける。あっちではデスクの前にルームランナーが置いてあるのだ)。
作業場の机の中には、箪笥だったと思われるものを使った小さな棚がしつらえてある。また、別の机には、別の廃物を利用した棚があり、カラフルに着色されている。Etsyのコミュニティ部長、Vanessa Bertozziも、そんな机を使っていた。BertozziはEtsyで作品を販売する人たちに、ビジネスを展開できるよう教育や指導をするチームの責任者だ。彼女はEtsy社員の中で、『ホールアースカタログ』を知っている20~30人のなかのひとり。ホールアースカタログは、インターネット前のGoogleとも称される本で、彼女は手作りの机の中に、今でも1冊、Etsyやインターネットのルーツを語るものとして大切に保管している。
私は、いくつかの会議室の壁に掛けれているタペストリーの作者は誰かとAdam Brownに聞いたところ、彼が答えるには、それはタペストリーではなく絵だというのだ。2010年、ブルックリンを中心に活動する画家で、Etsyのビデオポッドキャストにも何度も登場しているMaya Hayukが描いたものだ。私の妻、Pamelaも画家だが、壁の絵の周囲に影が描かれていて、タペストリーが壁に掛けられているように見せているのだと教えてくれた。
Etsyで販売されている作品の多くは、大変に楽しいものだが、Etsy本社もその精神を反映している。会議室には番号ではなく、ミュージシャンと食べ物の名前を掛け合わせた名前が付けられている。ピヨークやオレオ・スピードワゴンやソイ・ディビジョンといった具合だ。ラウンジは「ウータン・クラム」と名付けられ、Etsyのビデオプロデューサー、Eric Beugが、同僚や友人たちと一緒に描いた大きな壁画がある。洞窟のようなメインの作業場は非常にやかましいので(従業員の多くはヘッドホンをしてる)、個人的な電話を掛けるための小さな部屋もある。そこも、昔風のラジオとアールデコ調のテレビ画面があったり、実物より大きい鳩時計の縫いぐるみと機械式タイプライターが置かれていたりする。
「ペイントバイナンバー」の塗り絵で作られた壁画(木漏れ日の鹿)
Etsyの従業員は、オフィスに自転車を持ち込めるだけでなく、犬も連れて来ることができる。多いときで15頭もの犬が来ることがあるという。
「犬が好きでも飼えないボクのような人間にはうれしいことです」と彼は話していた。「好きなだけ犬と遊べて、しかし糞の始末も、獣医代の支払いもしなくて済むんですから」
レンガの壁からタコの足が突き出ているオブジェは、コネチカット州レディングの彫刻家で画家のDavid Cramer の作品。彼のEtsyショップ、ArtAkimbo shopには、タコの足や眼鏡掛けなど、楽しくて実用的なアート作品が売られている。なかには、鼻と髭のある眼鏡掛けもある。角に毛糸爆弾を施されたトナカイの首は、シカゴのLana “Plushinator” Crooksの作品。彼女は、「縫い物業界で世界一働く女性」とも呼ばれている。彼女のショップはこちら plushinator.etsy.com。
– Jon Kalish
[原文]