2012.04.06
助け合うMaker
少し前、Adam EllsworthとBryan Duxburyの楽しい Cube Lampの記事を掲載した。そこでは、Makerスペースで起業家とMakerが出会ってビジネスを立ち上げるまでの話が詳しく紹介された。
私はサンフランシスコのTechShopを利用しているので(数カ月前から作業場の入口にCube Lampが吊り下げられている)、Adamとも知り合いで、彼のプロジェクトのことも知っていた。それが、GizmodoやG4と並んで、このMakerでも大きく紹介してもらえたことを、とてもうれしく思っている。またこうした報道が、彼らの生まれたばかりのビジネスに与える効果を見つめることができたのも面白かった。この3週間で、おもにメディアで騒がれたこともあり、300個もの注文が入ったのだ。
「効果を見つめる」とは文字通りの意味だ。TechShopの作業場から集まってきた人たちが、レーザーカット、シルクスクリーン、CNC加工、パッケージングを手伝いつつ、Adamのチームとなって次第に作業場のほぼ全体に広がっていく様子をこの目で見てきたのだ。もともと、いきなりの大量注文による緊急増産という特別な状況でなくても、TechShopのコミュニティは、それ以前からAdamの成功を支えていた。本当に多くの利用者たちが、生産のさまざまな段階で少しずつ関わっていたのだ。Adamによれば、この数週間、150~180時間の作業に、TechShopのメンバーとスタッフが9人も強力してくれたという。かく言う私も、シルクスクリーンを30分ほどお手伝いしました!
「このコミュニティがなければ絶対に無理でした」とAdamは語る。「たった3週間で300個の注文を受けて、発送までの時間的余裕は2週間。あり得ないよ」
もちろん、これは珍しいことではない。産業界では、一時的に需要が高まるときには臨時に人を雇うのが普通だ。しかし、ここでの出来事にはMakerならではのひねりがある。
「みんなが、なんでもできる技術を持っている。シルクスクリーンやエレクトロニクスやレーザーカットなんかね。TechShopで集まった人たちだから、特別なんだよ」とAdam。「みんながすべてを知っているというわけではなく、新しい技術を進んで学びたがっている人たちだということさ。みんなが互いに教え合ってるんだ」
Makerのための実地トレーニングだ。
これはAdamにとって幸運な環境であるだけではない。Cube Lampの生産に加わったTechShopの他の利用者にも聞いてみた。Kickstarterで資金を得たボードゲーム、Lyssanの開発と製作を行っているSam Brownは、ボードをプリンタで出力している間は何もすることがなかった。そのときAdamの「求人広告」を見て、同時に、Cube Lamp作りが作業場を占領しつつあることにも気がついた。そして、彼もその楽しそうな仕事に加わることにした。結局、彼はAdamのために30時間も働いた。
「他の起業家たちといっしょに働くのは楽しいよ。エレクトロニクスとボードゲームという、まったくの畑違いであってもね。彼の仕事を見ていると、学ぶべきことが多いんだ」とサム。「私の場合も、製品を発送してお客さんに喜んでもらうためには、同じ問題を抱えることになる。こういうことは、どんなビジネスにもあるよ」
Alex GlowaskiはTechShopに来始めてからまだ1週間も経っていない。Alexは無職だが、それを気にしている様子はない。彼女は、もっと手を使う仕事がしたいという理由でTechShopの会員になった。そしてすぐにCube Lampに出会った。もちろん自分のプロジェクトも持っている。ひとつは、完成したばかりのウェアラブル乗車カードだ。今は、次のプロジェクトとなるウェアラブルのホログラムの実験を準備している。その間、彼女はCube Lampの手伝いを楽しんでいるのだ。すでに25時間働いている。
「ここでは、多くの人がKickstarterで何かをやってる」とAlexは教えてくれた。彼女の言うとおりだ。私が知っているTechShopの会員たちの多くが、Kickstarterを利用しようと考えているか、キャンペーン中であるか、すでに資金を得ている。Cube Lampはクラウドファンドを選ばなかったが、突然の大量注文とそれに続く重労働という流れは、Kickstarterプロジェクトと同じだ。
Adamとその仲間たちと午後を過ごして、私はあることに気がついた。TechShopの会員になることは、新しい入門レベルの仕事を得ることでもあるということだ。
関連:
シャキーン! テレビゲームの郷愁漂うライト(日本語)
David LangのZero to Makerコラム(英語)
– David Lang
[原文]