Electronics

2009.08.28

『Getting Started in Electronics』誕生物語

Text by kanai

今、私が執筆中のDIYムーブメントに関する本の取材でForrest Mimsにインタビューする機会に恵まれた。Forrestは著名なアマチュア科学者で、ホビー用のエレクトロニクス本を30冊以上書いている。MakeではCountry Scientistのコラムニストとしても知られている。彼の名著 『Getting Started in Electronics』の誕生秘話を聞いたときのインタビューの一部を紹介しよう。

この本は、『Engineer’s Notebooks』 という本から発展したものだ。RadioShackの担当編集者は、Dave Gunzel。その当時、私はすでにRadio Shack Booksから16~17冊の本を出していた。我々がRadio Shackで打ち合わせしていたとき、Daveは私の研究ノートに目をとめて、こう提案した。「おお! こういう本を出しましょうよ!」 私は、すべてにちょっとした図を付けてノートに記していたのだ。「次の本は、ぜひこれで行きましょう」と彼は言った。
『Engineer’s Notebook』は、こんな風に作られた。最初はタイプライターで文章を書いた。次に、タイプされた原稿に記号などを手描きで加えていった。やがて、ページが進み説明する電子回路が複雑になると、回路図も文章もすべて手書きになった。マイラーフィルムにインディアインクで書いていったのだ。しかし、ペンを握るときに手に力を入れるため、中指から出血して大変に苦労した。また、タイプの打ちすぎで深刻な腱鞘炎も患った。さらに、インディアインクは修正ができないため、ちょっとでも間違えると最初から描き直しとなった。
我々は、新しいパーツを加えた黄色い本『Engineer’s Notebook 2』を出した。この2冊は飛ぶように売れて、数百万部が刷られた。それを受けて、デジタルコンピューターの入門書も出そうということになったのだが、私はコンピューターの仕組みを知らなかったので、一から勉強することにした。最終的には、マイクロ命令の4ビット言語、つまり6マイクロ命令に相当するものを搭載したプロセッサーを自宅のキッチンテーブルの上で完成させるに至った。これには、やはり自作の小さなカードリーダーも付いていた。すべてが自家製で、ちゃんと動作した。これができてようやく、私は本を書けるようになったのだ。
それから 『Getting Started in Electronics』 の構想が浮かび、Dave Gunzelに会った。もちろん、この本も手書きだ。彼はクレヨンを使ってはどうかと提案してくれたが、私はこう反論した。「クレヨンでは本は作れない。ペンか鉛筆だ。だけど、もうインクはゴメンだ。辛すぎる」 私たちは5Hの鉛筆で描くことで合意した。いや、私は納得したわけではない。鉛筆で描くとどうなるか、彼に見せてやったのだが。そうして本の執筆が始まり、たしか54日間で書き上げたと思う。1日2ぺージのペースだ。『Getting Started in Electronics』は130万部以上を売り上げた。最初の10万部(定価$2.49)は瞬く間に売り切れてしまった。

(Mighty OhmのJeffがスキャンしたオリジナル本の画像はここで見られる)

– Mark Frauenfelder

原文