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2016.09.30

QFNパッケージをリフローオーブンを使わずにハンダ付け

Text by Takumi Funada

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今、arms22さんが進めているプロジェクトは、ESP8266(EPS-WROOM-02)とLiPo電池の充電コントローラを一体化した汎用WiFiマイコンボードの製作。一見、手ハンダ(ここでは普通のハンダゴテと糸ハンダだけでするハンダ付けのこと)で作るのは大変そうなこの基板と部品を分けてもらい、筆者も作ってみたので、そのレポートです。

arms22E2

このボードの特徴はテキサス・インスツルメンツのLiPo充電コントローラIC “BQ24070“を搭載して、安全、簡単、高効率にLiPo電池を扱えるようにしたところ。USB電源で充電でき、電池の制御をほとんど意識せずにESP8266を使うことができます。この手の新しいコントローラを使うと、コンパクトに高機能な電子回路を実現できていいのですが、電子工作的に問題なのは実装の難しさですよね。リフロー環境を持っていれば大丈夫です。でも、手ハンダでの実装は躊躇します。サイズは3.5×4.5mm(VQFN)、チップ底面に放熱のための金属板(サーマルパッド)があって、たぶん手ハンダはまったく想定されていないパッケージ。

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この問題に対してarms22さんは、基板に大きめの穴を開け、裏面からサーマルパッドにハンダが届くようにして解決しました。作業手順は次のとおり。

1.フラックスをフットプリント全体に塗布します。
2.基板表のサーマルランド(基板側のパターン)にはんだを薄く塗り広げます。
3.再度フラックスを塗布します。
4.向きを間違えないようにICを載せます。位置決めはそこそこでOK。
5.基板の裏側から大スルーホールを通してサーマルランドを20〜30秒加熱します。
6.はんだの表面張力でICが自動的に最適な位置に移動します。
7.ICが最適な位置に来たらコテを離します。

まずこれを読んだ筆者は「なんとなく分かるけど、大丈夫かな……」という印象を持ったのですが、arms22さんのブログをよく見れば大丈夫。動画があるんです。

QFNパッケージをリフローオーブンを使わず簡単にはんだづけする方法

普通のハンダゴテでリフロー的な処理をする感じですね。筆者は半信半疑で見たとおりにやってみました。ちゃんと出来たみたいです。うまくいったかどうかがわかりにくい感じはあるものの、チップの位置は自然に決まるはずなので、そうなっていればOKということでしょう。広い面を十分に熱する必要があるため、フラットなコテ先を使ったほうがいいと思います。

サーマルパッドが済んだら、あとは上面から普通のフラットパッケージ(0.5mmピッチ20ピン)に対するハンダ付け。普通と言いつつ、この密度だと普段なら身構える作業ですが、すでに前段でかなり緊張したので、やさしく感じました。こちらも動画が用意されていて安心です。

LiPoコントローラ以外にもチップ部品がたくさんあって、だいぶしごかれましたけど、良い練習になりました。できたボードは一発で動作。設計の確かさとドキュメントの丁寧さが実感できました。完成した基板は、IMUと組み合わせて自転車に載せてみようかな。

なんでも作っちゃう、かも。— Wifi温度湿度計の製作