Science

2007.04.17

再利用型カップ対使い捨てカップ

Text by kanai

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これは、再利用可能なカップと使い捨てカップとのライフサイクルエネルギーの量を分析したものです。ここには、カップを食洗機で洗ったデータは入っていません(私も食洗機は持ってますが、それでカップを洗ったことはありません)。そのデータを含めるべきかもしれませんが、食洗機の場合、洗剤の生産や輸送のコストなど別の要素が多く入り込み、複雑になりすぎるので除外したとのことです。
注目すべきは、陶器のカップは1,000回使用して発泡スチロール製カップと同じエネルギー効率になるという点。つまり、毎日使うとして、陶器のカップは約3年間使い続けないとエネルギー的に元がとれないということ。そんなに悪い数値じゃない。コーヒーカップに「エネルギーコストを回収するには私を3年以上使ってね」と書いておくといいかもしれない。そうすれば、コーヒーカップは家宝のように大切に扱われることだろう。エネルギー効率を高めるに、みんなカップをできるだけ長持ちさせるようになる。お洒落な緑色のカップの底に製造年月日が入っている、なんていうのもいいね。
ガチガチの環境保護運動家に教えてやろう。

古くから知られるこのライフサイクルエネルギーの研究は、ビクトリア大学の化学教授Martin B. Hockingによるもの。Hockingは再利用可能な3種類のカップ(陶器、ガラス、再利用可能なプラスティック)を、2種類の使い捨てカップ(紙、発泡スチロール)と比較した。
再利用可能なカップの製造に必要なエネルギーは、使い捨てカップの場合に比べてはるかに多い(上の図)。そのため、エネルギーの観点からは、再利用可能なカップが使い捨てカップよりも有利とするには、製造エネルギーコストの”元を取る”まで、繰り返し使う必要がある。10回使って割れてしまったとしたら、1回につき、製造エネルギーの10分の1の使用料を取られることになる。100回使って割れた場合は、使用料は1回につき製造エネルギーの100分の1だ。
しかし、再利用するためには、カップを洗わなければならない。そこでは、食洗機の効率、食洗機を動かすためのエネルギーシステムの効率から、1回あたりのエネルギー量を考慮しなければならない。

訳者から: けっこう衝撃的な内容だね。英語版のエントリではコメントも多く寄せられて、激論が交わされている。これはあくまで製造エネルギーだけを取り上げているので、使い捨てカップの廃棄コストや経済効率なんかは入ってない。そこで、みんなの意見が分かれてるわけ。それにしても、こうした問題に対するアメリカ人の関心の高さがわかるね。
Institute for Lifecycle Environmental Assessment: Saulに感謝します。- Link
[原文]