Science

2013.03.29

11号の11個:アポロの月面ツール

Text by kanai

Levers of the Third Class

骨の棍棒と月面用鉱物ハンマー

1969年、人類は初めて月面に降り立った。ミッションはアポロ11。下に示したのはその11個のツールだ。スミソニアン航空宇宙博物館のアーカイブの協力をいただいた。ロケットでも宇宙船でもロボットでもない、純然たるツールだ。特殊なものだが、素朴な道具だ。人工衛星よりも骨の棍棒にずっと近い(『2001年宇宙の旅』ではメタファーとして使われた)。
しかし、それだけに印象的でもある。

今日、宇宙飛行士のハンドツールは驚くほど複雑で美しい。ニューヨークの写真家、Michael Soluriは美しい写真のコレクションを有しているが、2007年のスペースシャトル搭乗員がハッブルを修理するために使った工具は、それをよく物語っている。しかし、我々が初めて別の世界へ行ったときに持っていた道具は、もっとシンプルだった。モンキースパナ、ナイフ、それに、細かい計算の上に作られた宇宙時代の形をしたシンプルな棍棒などもある。

01_slide-rule-5-inch-pickett-n600-es1
1. 5インチ計算尺、Pickett N600-ES
「我々は計算尺を持って月に行った」 この言葉を聞いたことがあるだろうか? すべてのアポロ宇宙船にはデジタルコンピューターが備えられていたのだが、これがまさにシンプルな現実だ。我々は計算尺を持って月に行った。こんなやつだ。(リンク)

02_scissors-surgical2
2. 医療用ハサミ
アポロ11号には3人の乗組員がいた。ニール・アームストロング船長、着陸船パイロットのバズ・オルドリン、司令船パイロットのマイケル・コリンズだ。このハサミはコリンズの個人的な持ち物に入っていた。食事の袋を開くのに使われた。(リンク)

03_interval-timer-mechanical2
3. 機械式タイマー
このアルミ製タイマーは、キッチンタイマーとほとんど同じものだ。しっかりとしたフールプルーフのデザイン。60分のモードと、より細かい6分モードとに切り替えることができる。(リンク)

04_tool-set-command-module2
4. 司令船ツールセット
ドライバー、ラチエット、レンチ。郊外の家のガレージではとくに目立つものではない。ロールケースは耐火ベータクロスでできている。アポロ1号の悲劇のあと、宇宙プログラムのために特別にデザインされた。(リンク)

05_penlight-armstrong-apollo-113
5. アームストロングのペンライト
壊れないなら直すな。NASAはうまく機能するデザインを見つけると、それに執着した。1985年のスペースシャトルミッション、STS-51Dでも、ジェイク・グレン飛行士(上院議員)がこれとまったく同じペンライトを使っていた。(リンク)

06_combination-survival-light-337
6. コンビネーション・サバイバルライト
このユニットには、懐中電灯、ストロボ、信号用鏡、釣りキット、着火用具、笛、水の消毒用錠剤が入っている。2つの防水挿入部には電池が入っていて、もうひとつには補給品が入っている。(リンク)

07_survival-kit-rucksack-with-knife2
7. サバイバルキット・リュックサックとナイフ
中央にサバイバルライトがある。ナイフにも注目。17インチのマチェットだ。ポリプロピレンの柄とステンレスの刃でできている。刃には「W.R. CASE SONS CUTLERY CO. / BRADFORD PA. / USA」と刻まれている。(リンク)

08_lunar-hammer2
8. 月用ハンマー
月の鉱物ハンマーにはいくつかのデザインがあるが、これはそのひとつ。延長管を接続できるように、柄にソケットとボール式留め具がある。柄を延長すると、地表の溝の中をけずることができる。(リンク)

09_portable-radiation-survey-meter2
9. ポータブル放射線計測器
太陽フレアなどの放射線に関する非常事態に備えて、クルーはこのハンドヘルドの計測器を使ってキャビン内の安全な場所を探して待機することになっていた。4つのリニアレンジがあり、0-0.1、0-100ラド/時を計測できる。(リンク)

10_camera-television2
10. テレビカメラ
RCAポータブルテレビカメラだ。月面では使用されなかったが、宇宙船内部からのライブ映像を流した。1969年6月23日、地球に帰還する1日前のこの映像もそうだ。(リンク)

11_camera-data-acquitision-command-module5
11. 司令船データ収集用カメラ
クレーターだらけの地表が近づいてくる着陸の瞬間の映像は、みんな知っているだろう。それはこのカメラで撮影された。(リンク)
「ヒューストン、こちら静の基地。イーグルは着陸した」

更新:最後のMaurer 16mmデータ収集カメラ(DAC)は実際は司令船のDACでした。あの有名な映像を撮影した着陸船(LM)のDACは、これとよく似たモデルです。アポロ12号のLM DACの写真はこちら。アポロ11号のカメラの運命がこう説明されている。

その他のアポロミッションと違い、この着陸船用DACは、月面から離陸する際に故障したために地球に戻ってきた。大気圏突入を行う司令船の厳しい重量規制のため、通常は撮影済みフィルムのマガジンだけが持ち帰られることになっていたのだ。

Sheldon、間違いの指摘をありがとう。

– Sean Michael Ragan

原文