Electronics

2009.06.15

Maker Faireにおける "エピファニー"

Text by kanai

毎年、ボクはMaker Faireで、1つか、それ以上の “エピファニー” を得る。それは、Maker Faireで起きている歓喜溢れる驚異的な物事に圧倒され、強烈な感動を受ける “瞬間” だ。どれほどスゴイことがそこで起きているのかを、そして自分がその一員であることの幸せを、思い知らせてくれる。今年のエピファニーは、比較的小さく微妙なものだったが、それでもみんなに教えずにはいられない。
瞬間 #1:日曜日、ロボティクスのパネルを終えたボクは、やっとのことでMichael Brownに会うことができた。彼は、上のビデオのLEDの光が雨のように降るBluerainインスタレーションの作者だ。彼は高齢の紳士と話をしていた(80代だと自分で言っていたと記憶している)。彼は明らかに、Michaelが語っている技術について知識があるようだった。紳士は、おそらく5歳程度の少年を連れていた。「なにかご存じのようですね」とMichaelが尋ねると、彼はこう答えた。
「私はエンジニアだよ。ロボットを作っていたんだ」
Michaelは少年に目を向け、興奮した声で彼に言った。
「この人を知ってる?」
少年は(同じぐらい興奮して)こう答えた。
「ボクのおじいちゃんだよ!」
それにMichaelはこう返した。
「わお! こんなクールなおじいちゃんがいて、スゴイね!」
少年は満面の笑みを浮かべていた。フェアの会場で、このBluerainのようなスゴイものをたくさん見てきたことで、彼の中でも何かが目覚めたようだ。彼のおじいちゃんも、こうしたスゴイものに関わってきたに違いない。おじいちゃんの誇りに満ちあふれた表情に、ボクは胸が熱くなった。そしてボクは、Maker Faireを見に来てくれた老齢のエンジニアや、その世代のMakerたちのことを考えてみた。彼らはこの会場で、James Kip Finchが言うところの 「偉大なる歴史のMaker」 として、多くの尊敬と注目を集め、大きな喜びを得ることができただろうか。
瞬間 #2:ボクは男子トイレの中に座っていたら、やんちゃな小さな子供を連れた男性が入ってきた。トイレに入るなり、男性は「それに触るな! やめなさい。ドアを開けるんじゃない。下からのぞくな!」と叱り始めた。子供は竜巻のようにあたりを冒険して回る。やがて子供は、誰か他の人にこう話しかけた。
「ボクたちはMakerの家族なんだよ」
ラルフ・ウィガムそのものだ。ボクは吹き出さずにはいれらなかった。この子は大成する(たぶん、いろいろと火傷はするだろうがね)。
瞬間 #3: 最後は、ひとつの瞬間ではない。いくつもの瞬間だ。しかもフェアの外でのこと。Twitter上の出来事だ。フェアが近づくと、プロジェクトの準備をしている人々や、フェアの見学をすごく楽しみにしている人たちの “つぶやき” が増える。そして金曜日の夜、ベッドに入る前の期待と興奮の混じった “つぶやき” が交わされた。まるでクリスマス前夜のようだ。フービルの住民は、明日の朝に始まる魔法の準備を万端整えて、ベッドに潜り込む。みんなで本当に特別なお楽しみに向けて準備を重ねていくって、素晴らしいことだ。翌朝、期待していたとおり、誰かがこんな “つぶやき” を書いていた。「Maker Faireは新しいクリスマスだ」
今年のMaker Faireに参加したみなさん。みなさんのエピファニーは何だった? コメントに書いてね。
– Gareth Branwyn
訳者から:Make: Meeting Tokyo 03でボクが得たエピファニー(知的な驚きの瞬間)は、これだけ多くの、他分野にわたる、アーティスティックで最先端で独創的なMakerたちが一堂に会して楽しく賑やかにプロジェクトを披露し会っている会場を見渡したときだな。こりゃ、ものスゴイことだと感じた。日本のMakerのレベルの高さはもちろん、若い人たちが実に楽しげに最先端技術で遊んでいる様子は、やっぱりうれしい衝撃だよね。
原文