2009.08.27
Make: Projects – ガラス瓶を切ってみよう
ガラス瓶を切る方法はいろいろある。冷たい水に突っ込んだり、燃料を染みこませた糸を巻いて火をつけたり、細い電熱線を使ったり、あるいはこれらを組み合わせたり。私もこうした方法はすべて試してみたけど、かならずうまくいくというワケではない。そこで今回紹介するのは、もっとも成功率が高かった方法だ。他の方法も試してみたいという方を、止めはしない。何事も経験だ。ガラス瓶はどこでも手に入るし、失敗してもリサイクルできる。
どの方法を使うにせよ、ガラス瓶を「切る」という表現は正しくない。実際は「割れ」の制御だ(もっとも、タイルカッターなどの切断工具を使う場合は「切る」といって間違いないが)。
さて、ガラスは、分子レベルで言えばほとんどが二酸化ケイ素だ。しかし、分子が規則正しく並んでいないため、氷や食塩のような結晶性個体とは区別される。ガラスは無限に粘土の高い液体である。といった戯言を聞いたことがあると思う。古い教会のステンドガラスの下のほうが膨らんでいるのがその証拠だと。それはウソだ。ガラスが室温で流動することを証明する信頼すべき情報は、私の知る限りでは存在しない。どんなに長い時間待ったとしても、そんなことは起こらない。教会のステンドガラスは、ガラス職人がわざと下のほうを厚く作っているのだ。
しかし、ガラスの分子構造がランダムであることを示すたとえ話としてなら、ガラスが「無限に粘土の高い液体」という表現は使えるだろう。この異方性のために、ガラスは規則正しい割れ方をしない。ひびはランダムな予測できない方向に広がり、内部の圧力によって簡単に砕けてしまう。そのため、幸運が、ガラスの切断における大切な要素となるのだ。しかし、ちょっとした練習で腕を磨けば、ほぼ確実に切断ができるようになる。
道具
- ローラー式ガラスカッター
- 瓶切断用の治具
- 小型のブタントーチ
- 回転台
- 少なくとも20センチ角のガラス板
材料
- 切断したガラス瓶
- 400cシリコンカーバイドのサンドペーパー(非耐水/耐水)
- シリコンカーバイドの粉(80メッシュ以下)
- 水道水
- ガラスカッター用のオイル
訳者から:ガラス用の研磨剤は日本では手に入りにくいかもしれない。石を磨く趣味の人たちは、おもに耐水性サンドペーパーを使っているようだけど、研磨剤については、自分でいろいろ試しているって感じ。
Step 1:瓶を選ぶ
どんな瓶を選ぶかは、切断したものを何に使うかで決まってくる。コップを作りたいのか、花瓶にしたいのか、ランプシェードにしたいのか、などなど。ガラスの切断を行っている人の多くは、ユニークで美しいものや、特別な思い入れのあるものなどを好んで使っている。特殊な形状の酒瓶などは便利な容れ物になる。贈り物にもいい。しかし、特殊な形の瓶に挑戦する前に、失敗してもいい普通の瓶でスキルを高めよう。思い通りに切断できるようになるまで、何本もダメにするのが普通だ。
Step 2:切り込み線を入れる
瓶の周囲に、ハッキリと、同じ深さで、正確に傷を付ける。この傷を付けるための治具が安く市販されているが、金属製のしっかりしたものを買おう。そうでなければ自分で作る。誇大広告されているようなプラスティック製の安物は裂けるべきだ。
ガラス瓶切断治具は、まず横向きにきちんと設置して、備え付けのローラーカッターに専用オイルをたらす。そして瓶をセットして、しっかりとローラーを押さえ付けながら瓶を回転させる。均等な力で押さえ込むように注意しよう。切り込み傷が1周したら、すぐに止める。もう1周回してもっとしっかり傷を入れたくなるが、それをやるとたいていは失敗する。
Step 3:熱を加える
瓶を回転台の中央に立てる。台を回して、瓶が正確に中央に載っているかを確かめてから、トーチに点火する。瓶につけた線のちょっと上を狙って10センチほどの距離から炎を当てて、空いているほうの手で回転台を回す。速く回す必要はないが、同じ速度で回すこと。線の周囲を均等に熱することが肝心だ。熱の当て方に偏りがあれば、そこから無秩序な方向にひびが走ってしまう。
チリチリという音が続き、やがてポンとひびが入る。これが線上を伝搬していくのがわかるはずだ。この割れ目が一周するまで、均等に熱しながら台を回転させる。割れ目が一周したら、炎を遠ざけて、瓶の首を持ち上げてみる。完全に割れ目が入っていれば、そのまま瓶の上部が離れて持ち上がる。根気よくやることだ。決して力を入れてはいけない。
Step 4:縁を研磨する
ここまでうまくいったら、比較的滑らかな瓶の断面ができたはすだ。傷を付けるときの出発点あたりに、小さなギザギザができているかも。これは当然の結果だ。この程度のものは簡単に研磨できる。しかし、1ミリ以上の凹凸がある場合は、ちょっと厄介だ。頑張れば研磨できないこともないが、かなり疲れる。こんなときは新しい瓶でやり直したほうが早い。
研磨はガラス板の上で行う。窓ガラスや鏡の破片を使うことが多い。私の場合は壊れたスキャナーのガラスを使った。ガラス板の上に研磨剤をひとつまみ置き、霧吹きで湿らせる。ここに瓶の切り口を軽く押し当てて、8の字を描きながら研磨していく。このときの音は、かなり脳天に響く。ガラスを擦る音が苦手な人は耳栓をしよう。とは言え、体が変になるほど大きな音ではない。
必要に応じて研磨材や水を加えながら、切り口が完全に滑らかになるまで研磨を続ける。本当に滑らかになったかどうかは、濡れているとよくわからない。研磨中は指で触って確かめるしかない。よさそうなら、ペーパータオルなどで切り口を拭き、乾燥させてからよく見てみる。このとき、完全に滑らかになったか、まだ研磨すべき箇所があるかがわかる。艶のある部分が残っていたら、まだ研磨が足りない。
Step 5:角を取る
切り口を滑らかに平らにすると、瓶の側面との間に鋭いエッジができることになる。とくに、これをコップに使いたいときは、サンドペーパーを使って鋭いエッジを丸くしてやる必要がある。角が取れたかどうか、いちばん確実に確認する方法は触ってみることだ。指で触りながら、縁の内側と外側のエッジの角を取ろう。
注意と提案
どうやら、回転台の使用が成功の決め手になるようだ。手で瓶を回転させながら熱するやり方では、まず成功しなかった。回転台を使えば、かなり高い確率できれいに割ることができる。私が使用した回転台は、台所で使用する回転式スパイスラックの台座だ。
切り口をもっときれいに仕上げたいときは、研磨剤を次第に細かくしていくといい。石の研磨キットに入っている研磨剤がちょうどいい。当然のことながら、荒い研磨剤から細かい研磨剤へ段階的に交換していく。このとき、台になるガラス板は、研磨剤の種類の数だけ用意しておくといい。仕上げ用の細かい研磨剤に荒い研磨剤が少しでも混じっていたら、仕上げが台無しになる。
どんな瓶を使うかによっても、成功の確率は変わってくる。一般的に、直線的な円筒形の瓶がもっともやりやすく、丸くなっていたり、斜めになっている瓶は難しい。最初は真っ直ぐな瓶で経験を積むといいだろう。瓶には、模様付きのものがよくある。私はこれを「便利な模様」と呼んでいる。瓶のまわりに付けられた凹凸模様だ。これが便利な理由は2つある。1) 模様の部分を利用して切断すると、仕上がりの見栄えがいい。2) 環状に窪みなどがあれば、治具がなくても正確に傷を付けることができる。
ラベルのスタイルも重要だ。私は、コロナビールのように瓶に直接印刷されているラベルが好きだ。使っても洗っても落ちることがないから、何の瓶を切ったものかが、いつまでもよくわかる。ラベルは完全に剥がしてしまってもいい。しかし、紙のラベルほど剥がしにくいものはない。私はベンチグラインダーのワイヤーブラシを使う。それでも糊がどうしても取れないときがある。そんなときはシール剥離剤やライターオイルを使って剥がす。
瓶にエッチングをしたいときは、ラベルをマスキングに利用できる。ラベルにエッチングしたい模様の切り込みを入れて、エッチングしたい部分を剥がして、エッチング用クリームを塗る。裏が全面糊のプラスティックのラベルだときれいにいく。紙のラベルだと、エッチングクリームが染み込んでしまうので、輪郭がぼやけてしまうことがある。エッチングができたら、ラベルを剥がす。
– Sean Michael Ragan
[原文]