Fabrication

2010.09.17

市販の3DプリンターはいつかMakerbotより安く販売されるかも。そうなったらどうする?

Text by kanai

makerbot_up.jpg
MakerBot CupCakeは素晴らしい機械だ。このオープンソース3Dプリンターの750ドルという価格は、市販されている製品よりもずっと安い。しかも、熱狂的なユーザーグループがあり、バグやトラブルに遭遇しても助けてくれる。たしかに、Dimension uPrintもよくできた製品で、プリントも早いが、2万ドルでは素人の手には届かない。そこへUP! PP3DPのニュースが飛び込んできた。価格はたったの1500ドルで、品質も、まだ脅威とは言えないまでもMakerbotと大差ない。だが、3Dプリンターが一般化してインクジェットプリンターなみの価格(99ドルとか)になったら、Makerbotはどうするんだろう。電子製品というものは、ブルックリンの工房よりも蛸部屋みたいなところで作らせたほうが効率的で低コストにできるものだ。いずれは、市販の3DプリンターがMakerBotよりも安くなる。問題はそれからだ。
私が前に書いたUP! の記事に対して、MakerBotのユーザー、Dominic Murenが素晴らしいコメントを寄せてくれたので紹介しよう。

私は Makerbotの熱烈な支援者として(実を言うと私はあの頭蓋骨みたいな3Dプリンタの持ち主で、開発者のBreの友人でもある)、これと張り合うことはないと思っている。言うなればこれはハマ- H2だ。訳を説明しよう。
トラックの世界には2つの車種がある。ひとつは小さい商売に向いた一般向けの小型トラックFord F150(とこれに準ずるもの)だ。安くて、手入れも簡単で、どちらかと言えば地味な車だ。しかしよく故障するので、おもにユーザーが主体となったサービスネットワークがその面倒を見ている。修理方法を教えてくれる巨大なコミュニティーによるサポートがあるわけだ。
もうひとつは、とくに戦場などで、絶対に故障が許されない種類のトラックだ。それが高機動多用途装輪車両(ハンヴィー)だ。呆れるほど高性能で、時速130キロで走行でき、屋根には榴弾砲を固定できるようになっている。専門の整備士でなければメンテナンスができず、経費は青天井だ。
1990年の始めに、どこかのマーケティングの天才が、第三タイプのトラックもあるべきだと考えた。ハンヴィーの鬼のような性能を持ちながら、フォードのように一般市場にもアピールする車だ。それがハマ- H2だった。フォードに比べてスタイルは過激で、でかくて、ド派手で、ある面、超クールだ。ただし、荷物は積めないし、運転しづらいし、安全性も低い。故障しても自分では直せない。これは最悪だ。修理代は青天井とまではいかないが、その半分くらい。それでも目玉が飛び出す。
なかでも最悪なのが、ある部分でほんのちょっと優れているかもしれないトラックのために2倍の代金を払わなければならないという点だ(文字通り、みんなはプリンターでそれをしている)。
そこで、プリンターに関する私の助言。トラックと同じように、ハンヴィーを買える(プリンターで言えばStratasysを買ったり、ハイエンドプリンターを使うShapewaysなどのサービスを使える)経済力があるなら、そうするに越したことはない。性能はずっと高いし、榴弾砲的オプションもクールだ(Stratasysの場合は加熱した苛性ソーダで溶ける素材に対応できるオプションがある!!!)。
反対に、お金がないか、安くプリンターを手に入れたいという人は、コミュニティに支援された製品のほうがいい。私は、ミルやらレーザーカッターやら、普通のインクジェットプリンターやら、気難しいCNCマシンを長年使ってきたが、MakerBotのユーザーグループのような、つねに親切で、前向きで、情熱的なサポートスタッフに出会ったことがない。さらに言うなら、私が買った製品のなかに、自らアップグレードを公表するものはひとつもなかった。UP! にはそうした部分が見られない。それは、開発業者が非オープンソースの血筋にこだわっているかだらろう。
早い話が、オープンハードウェアの最大の利点は値段の安さではなく、ソースを公開することでその周囲にコミュニティが作られるというところにあるのだ。そしてそのコミュニティは、開発業者の限られた人材では、死ぬほど難しくてコストがかかるために困難な、設計の弾力性や柔軟性や価値の向上を手助けしてくれる。
私は、MakerBot とそのギザギザのプリントにこだわり続けるつもりだ。:)

さてみんなはどう思う? 市販の製品がMakerBotより安くなると思う? そうしたら、どうなるんだろう。3Dプリンターの第二の革命が起こるのだろうか。『Little Brother』や『Makers』みたいに、99ドルになったプリンターを自由に改造して使うようになるのだろうか。そのとき、ハッカーやナードに支えられてきたオープンソースのコミュニティはどうなるんだろう。コメント待ってます。
訳者から:さすがにこの記事(英語版)には多くのコメントが寄せられた。市販の3Dプリンターが安くなるころにはMakerBotはさらに先に進んでいるよ、という意見が目立った。Joelはこう言っている。「本当の起業家は競争なんかしない。発明するんだ」とね。いいこと言うじゃないの。
– John Baichtal
原文